高嶺格 「The SUPERCAPACITOR/スーパーキャパシタ」

スーパーキャパシタなぜ高い?

poster for Tadasu Takamine

高嶺格 「The SUPERCAPACITOR/スーパーキャパシタ」

東京:その他エリアにある
URANOにて
このイベントは終了しました。 - (2008-07-12 - 2008-09-20)

In Main Article 3 レビュー by yumisong 2008-08-13

オープニングビュー

キャパシタってなに!? しかも、スーパーまでついてる。てっきり高嶺格さんの造語だと思いきや、「スーパーキャパシタ」は大容量が特徴の「電気二重層コンデンサ」のNECの商標名。ちなみに松下電器は「ゴールドキャパシタ」、アメリカでは「ウルトラキャパシタ」、他に「電気化学キャパシタ」など、いろいろな名称があるようですが、大雑把にいうとバッテリーの代用品。(キャパシタとはコンデンサ(蓄電器)の英語圏での一般名称)

充放電にほとんど限りがないので、超!長寿命。身近な所で言えば、たとえば携帯電話の電池パックをスーパーキャパシタにすれば、充電してもすぐに電池がなくなってしまうなんて劣化がほとんど無くなるので、とっても便利だし、お得!…と、得意げにグーグルで拾った知識を披露するのは危ないのでここら辺にしておきますが、とにかくスーパーキャパシタは石油の枯渇しつつある現代にとって素敵な蓄電システムのようです。

そんな夢のような蓄電システムですが、(原料は活性炭なので)原価は安いはずなのに、なぜか販売価格が高いのです。そのために普及率は上がりません。「安価で無害で、長寿命。普及すれば世界は変わる。」しかし普及は価格によって阻止されている。それを高嶺格さんが「なぜ高い?」と、この展示で疑問をなげかけつつ、スーパーキャパシタをブランド化することによってその存在を私たちにアピールしています。

今回の展示で、高嶺格さんは「なぜ高いのか?」の答えや、答えに導くようなイメージを打ち出していません。ただ、「なぜ高い?」と疑問を投げかけているだけです。作品にはスポーツメーカーや自動車メーカーのロゴが光り輝いているので、「きっと、企業の利権が絡んでいるのね!」と思いきや、企業ロゴがタイプできるフリーフォントで「スーパーキャパシタ」とタイプすると、スズキやチャンピオンなどの企業ロゴが出てきたので使用しただけ、だそうです。

ナイキ、マクドナルド、コカコーラ、マイクロソフト…など企業イメージが現代美術で扱われる時は、消費社会へ対する批判や警告が多いので、まるで刷り込みのように、企業ロゴが扱われたら警告だと思え!と反応してしまうのを、からかわれたような気がしなくもないですが、作家いわく「意味はない」そうです。「原価は安いが、電極の加工に手間がかかって高価格」との情報もありますが、「なぜ高い?」の答えはそれなのか、当初の私の勘違い通り企業の利権が絡んでいるのか、複合的な違う理由なのかわかりませんし、高嶺格さんも答えを出すための展示をしていません。「なぜ高い?」という疑問を投げかける形でスーパーキャパシタという存在をアピールするだけです。

スーパーキャパシタをキャラクター化し、携帯待ちうけ、カーペット、Tシャツなどで日常消費したくなる作品たち、ペンタゴン型の取り外し可能なユニークピース、限定数のシルクスクリーンなどなど。スーパーキャパシタをブランド化することで、作品の所有欲、購買欲が喚起させられます。そんなショーウィンドウを見ているような気分にさせるインスタレーションは、スーパーキャパシタを「普及」させるために、作品も「普及」しやすい形をとっているのかもしれません。

私たちは食物と同じように、電力がなくては生きていけません。枯渇しつつある石油や、緑化を上回るCO2の排出に憂いつつも、消費しなければ生きていけません。自分では望んでいないのに、自分の手の届かないところで地球は動いているようにも感じます。本当はスーパーキャパシタのブランド化よりも、そんな現実を「仕方ない」とか「あいつらが悪い」と言う代わりに、「夕飯に並べる小さな野菜をプランターで作るように、少しでも手の届くところに電力を確保できたらいいな。」「これからは食物と同じように電力も個人が手入できるようになればいいな。」とつぶやきたいので展示をしているようにも見えました。

yumisong

yumisong. ふにゃこふにゃお。現代芸術家、ディレクター、ライター。 自分が育った地域へ影響を返すパフォーマンス《うまれっぱなし!》から活動を開始し、2004年頃からは表現形式をインスタレーションへと変えていく。 インスタレーションとしては、誰にでもどこにでも起こる抽象的な物語として父と自身の記憶を交差させたインスタレーション《It Can’t Happen Here》(2013,ユミソン展,中京大学アートギャラリーC・スクエア,愛知県)や、人々の記憶のズレを追った街中を使ったバスツアー《哲学者の部屋》(2011,中之条ビエンナーレ,群馬県)、思い出をきっかけに物質から立ち現れる「存在」を扱ったお茶会《かみさまをつくる》(2012,信楽アクト,滋賀県)などがある。 企画としては、英国領北アイルランドにて《When The Wind Blows 風が吹くとき》展の共同キュレータ、福島県福島市にて《土湯アラフドアートアニュアル2013》《アラフドアートアニュアル2014》の総合ディレクタ、東海道の宿場町を中心とした《富士の山ビエンナーレ2014》キュレータ、宮城県栗駒市に位置する《風の沢ミュージアム》のディレクタ等を務める。 → http://yumisong.net ≫ 他の記事

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