公開日:2008年11月27日

TWS青山:OPEN HOUSE 2008-05

都市の真ん中で制作&生活する、クリエーター・イン・レジデンス

宮永愛子 ≪HAPTIC-触覚≫参加

エリカ・ヴェルズッティ ≪HAPTIC-触覚≫参加

トーキョーワンダーサイト青山が主催する「クリエーター・イン・レジデンス」のオープンハウスは今回で5回目です。青山ブックセンターの手前にある国連大学の裏手の4階が住居、3階がスタジオという都市のど真ん中に立地するめずらしいレジデンスです。まずは、11月22日からトーキョーワンダーサイト本郷で開催する「HAPTIC-触覚」に出品予定の作家さんのスタジオから周りました!会場でも同じスペースを共有する作家同士が同じスタジオで制作しているそうです。

ナフタリンの繊細な作品が有名な宮永愛子は、制作に取り掛かるまでの構想する時間が長く、エリカ・ヴェルズッティはまず形や色などを手で確かめながらどんどん制作を進めるという対極したスタイル。どんな風にあのナフタリンの作品ができるのかとても不思議なので、きっと企業秘密なんだろうと思っていましたが、「写真にとってもいいですよ。秘密にしていることはないですよ。ここが作品の表面の後ろ側で…」と、にこやかに対応していただきました。

東京都現代美術館「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」にも現在出品し、来年1月からはミサコ&ローゼンでの個展も決まっているエリカ・ヴェルズッティは、柄の湾曲した刷毛や、毛足が短く揃っている筆を日本で初めてみたそうで、いろんなモノの形がブラジルとは違うと言っていました。日々わきあがる自分の物語たちを作品にしているそうです。

窪田美樹 ≪HAPTIC-触覚≫参加

家具の凹凸をパテ埋めして「かげとり」作品を制作する窪田美樹は今回は1人のスタジオ。パテが織り成す色が絵画のようにも見えますが、特に色に対してのこだわりはなく、制作しながら決めていくとのこと。作品を触らせていただきましたが、見た目よりもつるっとした肌触りは、3種類のやすりを使って出しているそうです。

レダ・カトゥンダ ≪HAPTIC-触覚≫参加

長井朋子 ≪HAPTIC-触覚≫参加

エフライン・アルメイダ ≪HAPTIC-触覚≫参加

私は喋る機会がありませんでしたが、布やコラージュを使った「柔らかさの詩学」をテーマに制作しているレダ・カトゥンダは、笑顔で丁寧にスタジオ訪問に来た人々に作品説明をしてくれていました。

1982年生まれと今回のスタジオの中で最年少の長井朋子は、オープンスタジオ中は他のスタジオを周ったりと色んな場所にいました。本人も作品も淡さが漂う雰囲気があります。今回のレジデンスはみんなが積極的に話しかけたり、個別のキッチンがあるにも関わらず共有スペースで食事をしたりと、とても仲良しだそうです。

エフライン・アルメイダは日本の刺青に興味があり、刺青で描かれる「蛾」を今回のモチーフに選んだようです。木彫の作家なので、木彫に変化した和風の蛾は、羽の模様が木目になっていて繊細だけれど可愛らしかったです。

パトリック・ソダースタム

スウェーデンの作家、パトリック・ソダースタムはオシャレでした。アーティストというよりファッションデザイナーの雰囲気があり、スタジオでも洋服のパターンを制作していました。資料をみると、肩書きにグラフィックデザイナー・コスチュームデザイナー・写真家と書いてありました。納得。現在はファッション界は離れているそうですが、白いカラーコンタクトレンズを付けて壁の隅に立つパフォーマンスを行うために、白い服を制作していました。

トミスラヴ・ブンタック

トミスラヴ・ブンタックのスタジオは暗く、誰もいない部屋にビデオだけが流れていました。ビデオは作品のようです。なぜビデオだけなのかの注釈はどこにもなく、スタッフにも聞きそびれてしまったので不明でした。

マルクス・アムバッハ ≪アートの課題 What game shall we play today?≫参加

サラ・ドラタバディ ≪アートの課題 What game shall we play today?≫参加

11月16日までトーキョーワンダーサイト渋谷で開催されていた「アートの課題 What game shall we play today?」のスタジオには、マルクス・アムバッハとサラ・ドラタバディが居ました。マルクス・アムバッハは話込んでいたので、お話できませんでした。残念。サラはイランの作家で、日本の代々木公園でみたブルーシートに住むホームレスが印象的だったので、作品のモチーフにしたそうです。イランでは個人のホームレスは少なく、家族や友人などの集団で安い地域の部屋を借りるのが一般的だそうです。

オープンスタジオは作家と直接お話ができるし、作品の制作過程も見られる良い機会です。蛍光灯や天井の低さ、壁の質感などがオフィスを改造した名残をとどめているのも面白かったです。また窓から見える隣のオフィスの光景も(熱心に働く画一的なスーツを着た人々は日本の普通の光景ですが、アート関係者や外国人には)めずらしく、都心にあるレジデンスだと再認識させられました。

yumisong

ふにゃこふにゃお。現代芸術家、ディレクター、ライター。 自分が育った地域へ影響を返すパフォーマンス《うまれっぱなし!》から活動を開始し、2004年頃からは表現形式をインスタレーションへと変えていく。 インスタレーションとしては、誰にでもどこにでも起こる抽象的な物語として父と自身の記憶を交差させたインスタレーション《It Can’t Happen Here》(2013,ユミソン展,中京大学アートギャラリーC・スクエア,愛知県)や、人々の記憶のズレを追った街中を使ったバスツアー《哲学者の部屋》(2011,中之条ビエンナーレ,群馬県)、思い出をきっかけに物質から立ち現れる「存在」を扱ったお茶会《かみさまをつくる》(2012,信楽アクト,滋賀県)などがある。 企画としては、英国領北アイルランドにて《When The Wind Blows 風が吹くとき》展の共同キュレータ、福島県福島市にて《土湯アラフドアートアニュアル2013》《アラフドアートアニュアル2014》の総合ディレクタ、東海道の宿場町を中心とした《富士の山ビエンナーレ2014》キュレータ、宮城県栗駒市に位置する《風の沢ミュージアム》のディレクタ等を務める。 → <a href="http://yumisong.net">http://yumisong.net</a>