「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展

21世紀のデザインが向かう先とは? 

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「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展

六本木、乃木坂エリアにある
21_21 DESIGN SIGHTにて
このイベントは終了しました。 - (2010-04-24 - 2010-06-27)

In Main Article 3 レビュー by Miki Takagi 2010-05-17

トレンド予測の第一人者、リー・エデルコートがディレクターを務める「ポスト・フォッシル:未来のデザイン発掘」展が、六本木・東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTにて開催中です。出展数は約190点。エデルコートが「ポスト・フォッシル(すなわち化石燃料時代の次へと向かう)時代のクリエイター」と呼ぶ10カ国71組の新世代のデザイナーやアーティストが参加しています。

エデルコートは幅広い分野において、トレンド分析やコンサルティングを行う専門家です。アートやデザイン、消費者文化などの関係性を研究する一方、私たちがいま置かれている社会的・経済的状況を独自の鋭い視点で観察し、分析しながら、彼女はトレンドを予測していきます。

世の中に出始めた漠然とした傾向や未来のデザインを目に見えるトレンドとして形にしていく作業は、考古学の発掘作業に似ているとエデルコートは言います。展覧会タイトルにもある『未来のデザイン発掘』はそういった彼女の分析スタイルからつけられたものでもあります。


それでは、出展作品を見ていきましょう。

ハンマーで叩いて形をつくりだす”breaking in”という行為が、過去と決別し、ポスト・フォッシル時代へと突き進むという意味につながるメタファーになっている。展覧会を象徴する作品。
撮影:吉村昌也

アトリエ・ファンリースハウトによる身体の形状をした彫刻。エデルコートによると”家族”が21世紀は重要なキーワードになってくるとのこと。映画『ロッキー』にちなんで名づけられた革製のサンドバッグ。吊るされた牛の姿を表現した彫刻的な作品である。
撮影:吉村昌也

アニミズムへの関心の高まりから、自然との関係は深まり、私たち人間と動植物との関係はより密なものになるだろう、とエデルコートは言います。ゲオルグ・パンテル《ロッキー》、ジュリア・ローマン《ベリンダ、シッガ、エルス》の二作品は「動物の再生」をテーマに物語性をはらんだ作品です。いずれも、私たちが口にしている肉がどこから来るのか、ということに注意を喚起した作品でもあります。

牛の姿をした革製のベンチ。素材の陰にある、生き物の存在を忘れないようにと私たちへ喚起している。

トーテムポールのような、不思議なキャラクターのような2体は、特大サイズのスピーカー。発砲スチロールを素材にしているので、余計な雑音が発泡スチロールに吸収され、聴こえてくるドラムの音色は高品質。ぜひご視聴を。

無機質なサイドテーブルも脚先を鳥の足のような形態にデザインするだけで、まるで生きもののような愛らしいテーブルに。オッペンハイムへのオマージュ作品でもある。

次世代のデザイナーたちは、生物の成長過程に倣った骨格構造に着目し、フォルムに生命感を与えようとします。また、古来から伝わる先史時代的な手法を捉え直し、新たなデザインへとつなげています。素材には土や石、火などがよく用いられています。

ガラス素材のピースを組み合わせたタニヤ・セーテルの作品。グラフィティやカリグラフィの間に位置するような作品は、微生物の進化からインスピレーションを受けたという。展示会場にあわせ、その組み合わせは変化する。アイスランドの噴火の影響で来日が遅れてしまったが、おかげでオープン前日に貴重な制作現場を目撃することができた。どんな作品に仕上がったかは、会場でご確認を。

特大サイズの愛らしいウサギは、子供用のベッドやイスなど木製家具をリサイクルして組み立てられた作品。
スプリット・ボックスは、丸太をランダムに4分割し、各々を内角として、箱が形づくられ配置されていく。各ボックスの形にかかわらず、内角の総和は常に360°である。「木が語りかけるような作品」とエデルコートは言う。

粘土・砂・牛糞の混合物はかつて住居を建てるために使われていた。自然硬化する性質をもつ原始的な建築素材を用いた作品。「私が座ってもつぶれないわよ!」

スロー・ホワイト・コレクションは、枝のもつ自然な形状を生かした家庭用の木製家具コレクション。

まず、森に落ちている枝を採取し、匂いを嗅ぎ、観察しながら構造を調べる。そして、1年かけて乾燥させて各々の家具に最適な枝を選び、組立てる。スロー・ホワイト・コレクションはタイトル通り、制作に非常に時間がかかる作品だ。ランプシェイドはデンプンなどの自然素材を配合した混合物。塗料も全て天然素材。素材の実験を行い、それらの隠された特質を追及して素材の自然美を引き出すことを目指している、とレードレルは言う。

身体から流れ落ちる体液のように、走り書きされた即興の文字。同じくガラス素材で文字をイメージさせるタニヤ・セーテルの作品とは全く性質が異なる作品。

自然からフォルムを成長させることをデザイナーが志す、来るべき「バイオ・ロジカル(生体論理)」時代を垣間見せる作品、と解説には記されている。

デザイナーたちは家具自体をつくり出すのではなく、さらにリラックスできる空間を自然の中に求め、インテリアのなかに風景をつくり出そうと試みます。エデルコートは、インテリアデザイナーでさえ、抽象的なデザインを好む傾向にあると分析します。

以上、オーガニックな素材を用い、古代の手法を捉え直して新たなデザインを創造した作品を中心に紹介しました。他にも本展では、樹木や骨格の成長プロセスに基づき開発したコンピュータ・プログラムを利用するなど、科学とデザインを組み合わせた作品も多数展示されています。今後は異分野をまたぐデザインが増えていくようになるのかもしれません。

私たちを取り巻く状況に目を向けてみましょう。長引く金融危機の影響などで世界経済だけでなくあらゆる基本構造の大変換が起こると言われ、転換期を迎える現在。私たちの価値観も変わりつつあります。物質主義から脱却すべき時代を生きる私たちにとって、豊かさの本質とは何か? 意味のある消費とは何か? 充実したライフスタイルとは何か? 次世代のデザイナーたちの作品を見ていくことで、それらの問いを考えるヒントになるような展示でした。

Miki Takagi

Miki Takagi. 横浜生まれの横浜育ち。アートとは無縁の人生を送ってきたが、とある企業のイベントPRに携わった際、現代美術と運命的な出会いを果たす。すぐれた作品に出会うとき、眠っていた感覚や忘れていた感覚が呼び起こされる、あるいは今までに経験したことのない感覚に襲われ全身の毛孔が開くような、あの感じが好き。趣味は路地裏さんぽ。 ≫ 他の記事

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