六本木アートナイト2010

夜の街・六本木でくり広げられた一夜限りのアートフェスティバル

poster for

「六本木アートナイト 2010」

六本木、乃木坂エリアにある
六本木ヒルズアリーナにて
このイベントは終了しました。 - (2010-03-27 - 2010-03-28)

In 特集記事 by 東京文化発信プロジェクト 2010-05-06

東京文化発信プロジェクトがTABとタイアップしてお届けするシリーズ記事第1弾。
2009年に引き続き開催され70万人(※)を集めた「六本木アートナイト2010」をレポートします! [加賀美 令]
※2日間の全プログラムの延べ観賞者数

椿 昇《ビフォア・フラワー》
六本木の街を舞台にした一夜限りのアートフェスティバル「六本木アートナイト2010」(以降:アートナイト)が、3月27日(土)10時から28日(日)18時にかけて開催された。

主催は、東京都、東京文化発信プロジェクト室、六本木アートナイト実行委員会(国立新美術館、サントリー美術館、東京ミッドタウン、21_21 DESIGN SIGHT、森美術館、森ビル、六本木商店街振興組合)。実行委員長は森美術館の館長、南條史生氏で特別顧問は安藤忠雄氏と森佳子氏だ。


チェ・ジョンファ《ロータス》(毛利庭園)今年で2回目となるアートナイトのテーマは「街の見る夢」。六本木はもともと夜の活気がある街だが、森美術館、サントリー美術館、国立新美術館、21_21 DESIGN SIGHTと美術館だけでも4つ、他にもギャラリーが複数と、美術関連施設も多く存在している。普段は夜間開館しないこれらの施設や飲食店の多くがアートナイトの晩は特別営業を行い、さらに活気ある一夜となった。

27日の日没(17:58)から28日の日の出(5:32)の時間帯は“コアタイム”とされ、各所でさまざまなプログラムが開催された。多い時には約50ものイベントが同時進行するという賑やかさ。「あれも見たいけれど、これも見たい。全部見たいけれど身体は一つ。」という歯がゆいわくわく感を喚起させられるプログラム構成となっていた。その中からいくつか紹介しておこうと思う。

まず目玉イベントの一つとして、日が暮れ始める夕刻、六本木ヒルズアリーナではアーティストの椿昇による新作インスタレーション「ビフォア・フラワー」がお目見えした。椿は、国際展「横浜トリエンナーレ2001」(2001)で話題を呼んだ全長50mのバッタ(※)など、視覚的にインパクトが強い作品で社会にメッセージを発信してきた。「ビフォア・フラワー」とは地球生物の始祖とされる裸子植物を意味する。メイン作品の「マザーナイト」は、その裸子植物をイメージして制作された作品で、爪の先についているセンサーが、空気中の二酸化炭素を感知して球体中央の画面が変化するという仕組みだ。原始植物をテーマにしながらもどこか近未来的な風貌で体長13mの巨大な姿が立ち上がると、なんだなんだという人だかりでアリーナはいっぱい。お祭り気分に一気に火がついた。さらに、六本木の各所では、裸子植物の「アルゴス」と「ウルモス」から放出された胞子をイメージしたピンクの胞子ボールが計1万5千個配られた。日が沈み暗くなると、ちかちかと点灯する胞子ボールを手にした人たちで溢れかえり、お祭り気分を盛り上げていた。※室井 尚とのコラボレーションにより展開されたプロジェクト「The Insect World」のひとつ

康本雅子×オオルタイチ「☆我苦我苦悶々☆」その頃、国立新美術館では、ダンサーであり振付家である康本雅子とミュージシャンのオオルタイチのパフオーマンスが開演。人気パフォーマーの舞台だけに、準備された観客席はこのイベントに的を絞って集まった気合いの入った鑑賞者で埋め尽くされ、さらにその周りにも人々が群がり、すでにパフォーマーの姿は見えない。2階と3階の吹き抜けからもエレベーターの上からもたくさんの観客が、明るい音と元気いっぱいのパフォーマンスを食い入るように見つめている。

カンパニー・デ・キダム《ハーバートの夢》 夜のとばりもすっかり落ちた頃登場したのが、フランスからやってきたカンパニー・デ・キダムによるもう一つの目玉プログラム「ハーバートの夢」。白く光を放つふわふわした巨人たちが幻想的なパフォーマンスを繰り広げた。彼らが現れるとされた東京ミッドタウンの芝生広場には、登場予定時刻の前から人々が群がりはじめ、期待は最高潮に。白い巨人たちが現れるとたくさんの人が後に続き、夜空に映える神秘的なパフォーマンスに引き込まれた。大人にとってはロマンチックな体験だが、小さな子供の中には「怖い」と泣き出す子もいた。それだけ非現実的な、まさに夢の世界が現世に舞い降りてきたような空間が繰り広げられた。

この日だけは森美術館と21_21 DESIGN SIGHTが一晩中開いているというのもアートナイトの大きな魅力の一つだ。その上、国立新美術館では「アーティスト・ファイル2010−現代の作家たち」展が観覧無料(27日のみ)、森美術館では27日24時から翌朝6時までの入館料が500円となるなど嬉しいサービスもあり、普段美術館に足を運ばない人も足を踏み入れるきっかけとなったに違いない。森美術館では、ピーク時で入場までに30分も待つほどの行列ができた。現代アート系の展覧会でこれほどまでの人が押し寄せるというのは、珍しいと言っていいことだ。

森美術館で行われた鈴木ヒラク氏とShing02によるパフォーマンス森美術館では、開催中の展覧会「六本木クロッシング2010展:芸術は可能か?」に関連した夜中の特別イベントが2つ開催された。一つは出展中のアーティスト、鈴木ヒラク氏によるライブペインティング。アメリカを拠点に活動するShing02のMCに合わせ、用意された大きな紙に力強く生み出されるペインティングを、取り囲んだ観客が息をのんで見守る。もう一つは、同じく出展アーティストの宇治野宗輝氏とcontact Gonzoによるパフォーマンスのコラボレーション。どちらも観覧のための行列ができ、開始時間直前に来た人の中には見られない人もいるくらいの盛況ぶりだった。

一方、街中では「六本木あちこちプロジェクト」と題し、3人のアーティストによる作品がお店のショーウィンドウやエントランス、木陰などに展示された。オリエンテーリングのようにマップ上の目印をたどって作品を見つけた人々が作品前に集まり、わいわいと記念撮影などする姿が見られた。
毛利庭園では、池に浮かんだチェ・ジョンファによる巨大な睡蓮がぱっくりと開いたりしぼんだりする「ロータス」の横で、デンマークのインテリアブランドBoConceptが作成した長いソファに人々が腰掛け、ライトアップされた五分咲きの桜と森タワーを鑑賞するという図。なんと非日常的、まさにアートナイトな光景だ。

藤 浩志 《おもちゃのストリート・ガーデニング》BoConceptのソファに腰掛けてゆったりと夜桜鑑賞




椿 昇《Moon Walker》さて、夜も本番の2時になると、アリーナの「マザーナイト」の横で椿が何やら始めるらしい、というので人が集まりだした。日本では初公開となる作品「Moon Walker」がお目見えするというのだ。この作品は、月と同じ重力で遊泳できるモビルスーツで、以前イギリスで絶賛を浴びたという伝説の作品とされていた。しかし、開始予定時刻を20分も過ぎてもなかなか始まらないため、期待でいっぱいになった観客が手拍子を始める。どうやらその夜は風が強すぎたようだ。モビルスーツとつないだ気球が大きくあおられてしまう。しばらく風の収まるのを待ってみたものの、安全への配慮から浮遊してのムーンウォークは残念ながら断念。いつかリベンジを期待したい。

アリーナの後方ではYotta Grooveによる派手なデコレーション・カーが横付けされ、焼芋を販売。カリカリに冷えきった空気の中、ちょうどお腹の空く時間帯でもあり、飛ぶように売れていた。また、協賛企業によるドリンクが楽しめる、紫の霧に包まれたラウンジも常に大盛況で、大人の夜の演出に大きく貢献していた。無料シャトルバスの運行や地下鉄の時間延長、駐車場の無料サービスなども行われ、深夜の交通アクセスを助けていた。

こうしてアートな夜は更けていったわけだが、明け方までどの場所も人で溢れ、常にどこかで何かが起こっているという、まさに眠らない/眠れない一夜であった。誌面と身体一つでは足りないためすべてを紹介することができないのが残念なくらいだ。

最低気温が5℃前後という寒さにも関わらず70万人とされる人出は、日本人のアートへの関心の高さと、お祭り好き精神を証明している(六本木という土地柄もあり、もちろん外国人も多く訪れていたが)。そして何よりも、アートをきっかけに夜遊びに集まった人々の熱気に揉まれながら、不況という世相感などどこ吹く風という勢いを感じられた一夜だった。願わくばこれが一夜限りの夢ではなく、不況から脱しつつある東京のエネルギーであると信じたい。いや、そう信じられる何かが確かにあり、白み始めた夜明けに身体の疲れとは裏腹に元気を貰った夜だった。

TABlogライター:加賀美 令 1975年生まれ、東京都在住。大学卒業後、働きながら2005年武蔵野美術大学通信教育課程にて学芸員資格取得。いくつかの展覧会のキュレーションに関わったり展覧会ガイドなどを経験した後、2005年夏よりフルタイムでアートの仕事に従事。他の記事>>

東京文化発信プロジェクト

東京文化発信プロジェクト. 東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施しているプロジェクトです。都内各地での文化創造拠点の形成や子供・青少年への創造体験の機会の提供により、多くの人々が新たな文化の創造に主体的に関わる環境を整えるとともに、国際フェスティバルの開催等を通じて、新たな東京文化を創造し、世界に向けて発信していきます。 ≫ 他の記事

コメント

Instagram

人気記事

TABlogのそれぞれの記事は著者個人の文責によるものであり、その雇用主、Tokyo Art Beat、NPO法人GADAGOの見解、意向を示すものではありません。

All content on this site is © their respective owner(s).
Tokyo Art Beat (2004 - 2017) - About - Contact - Privacy - Terms of Use