中央線沿線エリアをつなぐアートプロジェクト「TERATOTERA」

チーフ・ディレクター小川希さんに聞く今後の展開

In 特集記事 by 東京文化発信プロジェクト 2010-06-08

東京文化発信プロジェクトがTABとタイアップしてお届けするシリーズ記事第2弾。高円寺と吉祥寺をつなぐ地域密着型アートプロジェクトを紹介します! [加賀美 令]

この春に始動したアートプロジェクト「TERATOTERA(テラトテラ)」。この名称には、JR中央線に位置する高円<寺>と吉祥<寺>という2つの地域を結ぶという意味と、さらにテラ=大地をつなぐという意味が込められている。

『中央線カルチャー』という言葉がある通り、沿線の各地には、どことなく昭和な懐かしい雰囲気と、サブカルチャーをはじめとする新しい文化が同居し、人を引きつけてやまない独特な魅力がある。

このエリアに点在するアートスポットをつなぎ、新たな形でその文化的な魅力を発信していこうというのがTERATOTERAの目指すところだ。

TERATOTERAが設立に向けて具体的に動き出したのは昨年の暮。今年に入って2月21日には『TERATOTERAはじまりの日』として、説明会を兼ねた懇親会が行われた。そして3月21日の夜に、吉祥寺高架下のCAFE ZENONで開催されたイベントが『TERATOTERAお披露目の日』だ。

夕方6時に会場がドアオープンすると、TERATOTERAチーフ・ディレクターの小川氏より「お披露目の挨拶」の後、箕島裕二(吉祥寺シアター支配人)、武川寛幸(吉祥寺バウスシアター)、山口昌彦(「散歩の達人」編集長)、ヨシムラヨシゾー(デザイナー、デビルロボッツ)、森司(東京アートポイント計画ディレクター)によりトークセッションが行われた。『街と○▲□と私』と題されたセッションで、TERATOTERAエリアにある文化拠点のキーパーソンを紹介すると共に、複数の立場からこのプロジェクトの可能性を探るのが狙いだ。

続いて、年代もののオープンリール式のテープレコーダーを用いたOpen Reel Ensemble(オープンリール・アンサンブル)のサウンド・パフォーマンスが始まった。4台並べられたテープレコーダーを楽器のように、またターンテーブルのように操作し、その場限りの臨場感ある音によるステージが繰り広げられた。

その後、『BEPPU PROJECT 2010 アート・ダンス・建築・まち』に参加中の遠藤一郎による応援を挟み、アーティストの淺井裕介、泉太郎、卯城竜太、美術批評家の粟田大介によるトークセッション、contact Gonzo(コンタクト・ゴンゾ)によるパフォーマンスと続く。

contact Gonzoは、『痛みの哲学、接触の技法』を標榜し、公園などのパブリックな場所で、一見喧嘩のようにも見える殴り合いやつかみ合いを即興的パフォーマンスとして披露しているユニット。CAFE ZENONの床を所狭しと動き回り、『接触』のたびに走る緊張感が会場内にも行き渡る。まだまだ天井上を中央線が走り続ける下、最後は23時からのthe teachers eri tomiokaのライブで締めくくられた。

一夜にして盛りだくさんのイベントの特徴は、どれもライブであり『その場限り』なものであったこと。つまり、同じパフォーマンスはその場でしか見られないという、1ドリンク付き1,000円の入場料にして、かなり贅沢なプログラムだった。また、あまり告知がなされていなかったにも関わらず300名近くもの人が集ったという事実は、豪華なメニュー内容に加えこの地域の人々の関心の高さとプロジェクトへの期待の大きさを反映しているといえるだろう。

そしてこれはまだTERATOTERAの活動のほんの始まりである。



今回の記事のために、TERATOTERAチーフ・ディレクターの小川希(おがわ・のぞむ)さんにお話を伺った。

小川さんは、武蔵野美術大学を卒業後、東大の修士課程に在籍中の2002年から年一回、『Ongoing』というユニークな公募展を2006年まで計5回にわたり企画・開催した後に、2008年吉祥寺にArt Center Ongoing(以下「Ongoing」) をオープンした。Ongoing は、1階がカフェ、2階が展示スペースになっていて、週末には多彩なゲストを招いてトークショーも行われている。建物の内装も小川さんの趣旨に協調したアーティストたちの手作業によって作られたという。

小川さん自身、今はOngoingの運営とTERATOTERAの事業で忙しくて創作の時間がないというが、「このスペース自体が自分の作品のようなものです」と言う。出入りする人々の交点として、常に変化を遂げる生きた空間といえるだろう。

公募展『Ongoing』時代から蓄積されてきた、約300名に上る稼働中のアーティストによる広範なネットワークを持つOngoingは、吉祥寺という街になじみつつ、アーティストをはじめアートに興味を持つ人々の交流拠点としての一つの成功例といえる。カフェにはアーティストが集い、作品の構想を練ったり、お客さんと話したり、美術に関心のある人が展示を観た後にアーティストの資料を見たりしながらゆっくりお茶やお酒を飲んだりしている。かつてのフランスにはサロンがあったように、東京には東京らしい文化の交差拠点(ハブ)があるとすれば、この場所こそまさに一つのロールモデルといえる。


TERATOTERAは、このOngoingをはじめとする中央線沿線の文化的な魅力を生かすべく、東京文化発信プロジェクトにおける「東京アートポイント計画*」の一環として展開されている。Ongoing が美術に特化した場所だとすれば、TERATOTERAは音楽や演劇からファッションなど広い意味での創造活動全般をカバーする活動となるのだろう。

*「東京文化発信プロジェクト」の一環として、平成21年度より展開している事業。東京の様々な人・まち・活動をアートで結ぶことで、東京の多様な魅力を地域・市民の参画により創造・発信することを目指している。

小川さんは「吉祥寺は人気のある街ですが、意外に街を特徴づけるようなギャラリーや美術館は少ないんです。TERATOTERAをきっかけに、このエリアが面白いイベントが起こっている地域としてチェックされるようになるといいと思います」と語る。

TERATOTERAは小川さんの他に、國時誠さん、長内綾子さんという2名のディレクター、コーディーネーターによって運営されている。それぞれが西荻窪、高円寺に拠点を置き、よりきめ細かにローカルなネットワーク強化と情報発信に努める。

今後の予定としては、地域マップの作成(10月頃を予定)、年度の締めくくりとして『TERATOTERA祭り』(来年2月末を予定)の他、『途中下車の旅』というプロジェクトが今年度中に7回計画されている。

第1回目は、6月6日に高円寺のギャラリー・ライブスペース「AMP cafe」にて開催。AMP cafeディレクターの大黒健嗣と展示アーティストの荻野竜一、そしてTERATOTERAの小川さん、長内さんらが参加し、ディスカッションが行われた。第2回目は、吉祥寺のバウスシアターを会場とし、同時期にバウスシアターで上映されている映画『しゃったぁず・4』と絡め、様々なゲストによるトークショーが企画されている(6月19日〜22日)。19日は『しゃったぁず・4』出演者たちによる舞台挨拶、20日はミュージシャン高田漣のトーク、21日はあがた森魚のトーク、22日には北川フラムと亜細亜大学准教授宇佐見義尚の対談と、アートファンならずとも興味をそそられる内容だ。

詳細は、随時下記ウェブサイト上で紹介されている。
http://teratotera.jp/2010/

中央線沿線の各街は、それぞれグルメも買い物も楽しい街だ。また、今や住みたい街ナンバーワンといわれる吉祥寺を筆頭に、どことなくヒッピーの香り漂う西荻窪、ラーメンとクラシック音楽にゆかりの深い荻窪、ジャズイベントが毎年恒例となった阿佐ヶ谷、ロッカーの街・高円寺と、文化的な土壌も十分ある地域だ。

TERATOTERAの始動をきっかけに、地元の人はもちろん、街に遊びに来る人がアートとも楽しむ場が増えれば、文化発信エリアとしての個性もより強まるだろう。


TABlogライター:加賀美 令 1975年生まれ、東京都在住。大学卒業後、働きながら2005年武蔵野美術大学通信教育課程にて学芸員資格取得。いくつかの展覧会のキュレーションに関わったり展覧会ガイドなどを経験した後、2005年夏よりフルタイムでアートの仕事に従事。他の記事>>

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