瀬戸内国際芸術祭2010とその周辺

個性豊かな島々の魅力をアート作品とともに堪能

In 特集記事 by Makoto Hashimoto 2010-09-18

「海の日」である7月19日にオープニングを迎え、既に30万人以上が訪れているという「瀬戸内国際芸術祭」。7つの島々と高松港を主な舞台とする世界でも珍しい試みに注目が集まっています。

私はオープニングにかかる2日間と、9月頭に夏休みを活用して5日間を使い、その周辺で展開されているプロジェクトや観光も合わせて楽しんできました。穏やかで美しい海や島々の風景、その魅力をさらに引き出す作品の数々、合わせてめぐることのできる観光資源の豊かさなど、実に見どころが多く、夏休み気分を満喫しながらアートを楽しむには絶好の機会でした。

この9月3連休や、暑さがやわらぐ10月に入ってから訪れようとしている方も多いことでしょう。個人的なおすすめポイントやちょっとした鑑賞ノウハウ(?)を織り交ぜながらのレポートをお届けします!

【瀬戸内国際芸術祭2010】
[会期] 2010年7月19日(海の日)-10月31日
[会場] 高松港周辺,直島,豊島,女木島,男木島,大島,小豆島,犬島
[主催] 瀬戸内国際芸術祭実行委員会
[会長] 浜田恵造(香川県知事)
[総合プロデューサー] 福武總一郎(財団法人直島福武美術館財団理事長)
[総合ディレクター] 北川フラム(アートディレクター)
[URL] http://setouchi-artfest.jp/

●高松港周辺
開会式は高松港にて。讃岐国分寺太鼓保存会による太鼓演奏や漁協の協力による漁船の一斉出航、大量のシャボン玉を空に放つ大巻氏のパフォーマンスにより幕を開けました。
港の管理事務所だった建物をミラーで覆い、周囲の風景と同化させることでその存在に切り込んだ作品。夜間は怪しく光るとか?

その他、高松市内各所では椿昇により多数の地元団体と協力して展開されている「高松うみあかりプロジェクト」の展示などを見ることが出来ます。
高松市美術館では、連携企画として青木陵子や石田尚志らが参加する「高松コンテンポラリーアート・アニュアルVol.01」が9/18~10/24の間、開催されますので合わせて訪れてみたいところです。

ちなみに私は、高松市美術館で森村泰昌展(7/17~9/5)、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で「SickeTel-キュピキュピと石橋義正-」展(7/18~11/3)、それからイサムノグチ庭園美術館(要事前葉書申込、火・木・土のみの定員ツアー式)へ合わせて足を運んできました。

●小豆島
小豆島は舞台となる島の中では最も面積が広く、その魅力を作品巡りと合わせて楽しむにはレンタカーをかりて1泊するのが得策。美しい棚田の風景を堪能できる肥土山・中山エリアでは、あぜ道や山道を歩くことになります。
「水と土の芸術祭」でも大きなバンブーハウスを制作し話題を集めた王氏の作品。気持ちのいい空間でシンポジウムなど多彩な催しが行われています。
江戸時代から島内の各集落において、五穀豊穣を願い上演が続けられている歌舞伎の舞台
土渕海峡エリアの浜辺にたたずむ作品。漁で使われる大きな網のように見えますが...。このような屋外にある作品は、時間外でも見れるかも(?)しれません。

●直島
続々と常設型のプロジェクトや美術館が増えている直島は、芸術祭以外の期間でも連休には混雑覚悟の人気スポット。混雑時に整理券が発行されている地中美術館や家プロジェクト「南寺」、早朝でも見ることの出来る屋外作品や開館時間の長いベネッセミュージアムの組み込み方と島内での移動手段がポイントになります。
外観も中身も遊び心に満ちた作品でありながら、実際にお湯を楽しむことが出来ます。すぐそばにある宮浦港の船の発着前後の時間帯が混雑するようです。オリジナルのお風呂セットも購入可。
芸術祭の開催に合わせて開館したばかりの美術館。徒歩圏にある地中美術館の入館待ちの時間を使って見る心づもりをしておくとよいと思います。
本村港の対岸にある島で漂流物を集め、大きな浮島を出現させています。オススメの鑑賞法は、家プロジェクト「護王神社」から本村港方面に峰を少し下ったところにある展望台から見下ろす方法。また本村港経由の高松〜豊島の航路が近くを通るほか、直島でレンタルバイクやクルージングサービスを提供しているT.V.C.SERVICEが見学ツアーを実施しています。T.V.C. SERVICE http://www.tvc-service.com/

2005年頃より「カフェまるや」など直島・本村エリアで独自に活動をはじめ、まちなかに常設作品も展開しているいしかわさんの作品は芸術祭の期間に増殖中。いしかわかずはる活動情報 http://www.geocities.jp/wee_alive/hidamari.html

島内では多くの方が町営バスとシャトルバスで移動されると思いますが、少し奮発してベネッセハウスに宿泊すると、宿泊者専用シャトルも利用することが出来て快適です。あるいは先のレンタルバイクを利用(直島は意外にアップダウンがあります)。

食事処は本村エリアが充実していますが、アートスポット同様に混雑しますし、普段の少ない人数のまま営業しているお店もあるので、時間には余裕を持っておいたほうがよいと思います。
[おすすめ食事処]
茶寮おおみやけ:文化庁の登録文化財となっている趣きある建物を改修。
カフェまるや:いしかわかずはるさんの展示が予定されています(10/1-10/31)。
ニューおりんぴあ:海鮮が楽しめる居酒屋です。定食もあり。
焼肉へんこつ苑:大人数でも大丈夫!大竹伸朗さんも通っていたお店。
・海の駅なおしま内「Cafe Ougiya」:スピードと安さ勝負ならこちらに即決です。

●豊島
緑豊かな豊島には多数の作品が集中。10月17日に開館予定の美術館ができてから訪れるのもおすすめです。会期中のみ運航する無料バスを使い、徒歩も交えながらの鑑賞が基本となるので十分に時間をとって(半日以上)楽しみたいところです。
元は公民館だった建物に手を加え、不要になった窓や扉を集めてインスタレーションを制作。
作品が集中する唐櫃岡エリアにある清水。青木野枝の作品とともに、その恵みも味わいたいところです。

食事もでき、無料休憩ゾーンもありくつろぐことのできる空間。混雑時は待ち時間を周辺の作品鑑賞にあてると時間が有効活用できます。

●女木島
女木島は「鬼の洞窟」とされている鬼ヶ島大洞窟エリアと港周辺の2カ所に作品が集まっています。洞窟へ向かうバスは船と接続していることが多いので、島についたらまずはそのまま洞窟へ向かうのが楽かもしれません。洞窟および作品と合わせて、瀬戸内海を360度見渡せる展望台は必見です!
「越後妻有アートトリエンナーレ2006」からはじまったプロジェクト。休校中の女木小学校を会場として、国内外のギャラリーがクオリティの高い展示をしています。洞窟から港へ戻ってくるバスで近くに途中下車することができます。
石川直樹による展示は、自分が旅をしてきた山々と島を対比したもの。教室に残っていた習字も展示に彩りを添えています。
バルーンオブジェを用いて、旧女木保育所を不思議な存在に変容させた遊び心のある作品。
女木島と合わせて訪れたい男木島には、残念ながらまだ足を運べていません…

●犬島
犬島の見どころは、なんといっても産業遺産である銅の精錬所を建築家とアーティストのコラボレーションにより再生した美術館。朽ちかけた建物に新たな生命が宿っています。
精錬所を舞台として2002年にも公演を行い話題を集めた維新派は新たな作品に取り組みました。丸太3,000本を持込み島の風景を借景に巨大な仮設劇場を出現させ、ダイナミックな地場を演出。

島の細い道を歩いて行くと突如として現れる現代建築。3人のコラボレーションによるダイナミックな作品が展示されています。
こちらは島の生活に根ざしながら独自に展開され、今年で第7回目を迎えたプロジェクト「犬島時間」の受付であり会場となった旧犬島郵便局舎。お客さんを迎え入れているのがディレクターの青地大輔さん(写真家/Blue Works)です。犬島時間 http://blue-works.jp/inujima/


7つの島のうち、実は犬島だけが岡山県です。高松側から島々にアクセスした方も、岡山県に抜けて大原美術館奈義町現代美術館といったアートスポットへ足を延ばしてみるのもいいかもしれません。

私は、アーティストの三宅航太郎、蛇谷りえさんらにより運営されている滞在型のアートスペース「kajico(かじこ)」へ足をのばし、ついでにトークイベントを開催してきました。イベントを企画(持込む)と、宿泊料が安くなるという不思議なシステムなのです。

島に根ざし長く続いている直島の活動と芸術祭の盛り上がりにより目が離せなくなってきた瀬戸内海界隈。今後どのように展開されて行くのか見守っていきたいと思います。

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[来場にあたって]
・これまでに類を見ない試みであるだけに、緊急情報や変更事項も多いようです。最新情報を公式ウェブサイトかがわ瀬戸内アートナビ、それぞれのTwitterアカウントなどでチェックしましょう。
・直島、犬島、豊島関係の一部高速旅客船への乗船のために、9/17より整理券が発行されているようです。早めの確保に務めましょう。(混雑時は立ち乗りも可能な「フェリー」の方が大人数対応をしています)
島々での7つの心得も必読です。

Makoto Hashimoto

Makoto Hashimoto. 1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業。 ギャラリー勤務を経て、2005年よりフリーのアートプロデューサーとして活動をはじめる。2009〜2012年、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)にて「東京アートポイント計画」の立ち上げを担当。都内のまちなかを舞台にした官民恊働型文化事業の推進や、アートプロジェクトの担い手育成に努める。 2012年より再びフリーのアートプロデューサーとして、様々なプロジェクトのプロデュースや企画制作、ツール(ウェブサイト、印刷物等)のディレクションを手がけている。「Tokyo Art Research Lab」事務局長/コーディネーター。 主な企画に都市との対話(BankART Studio NYK/2007)、The House「気配の部屋」(日本ホームズ住宅展示場/2008)、KOTOBUKIクリエイティブアクション(横浜・寿町エリア/2008~)など。 共著に「キュレーターになる!」(フィルムアート/2009)、「アートプラットフォーム」(美学出版/2010)、「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)など。 TABやポータルサイト 「REALTOKYO」「ARTiT」、雑誌「BT/美術手帖」「美術の窓」などでの執筆経験もあり。 展覧会のお知らせや業務依頼はhashimon0413[AT]gmail.comまでお気軽にどうぞ。 [ブログ] ≫ 他の記事

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