公開日:2011年11月26日

三上晴子『欲望のコード』

割引アプリ「ミューぽん」にて掲載中!<br /> 昨年、YCAMで好評を博した展覧会が、更なる進化を遂げICCに登場!

うごめく壁面
うごめく壁面

 

暗闇のホールに足を一歩踏み入れると、まるで非現実的な異空間に入り込んだような感覚になりました。カメラレンズを観客に向けながら歪に動き回るロボットアーム。観客の動きに合わせてざわざわとうごめき、まるで昆虫の触毛を思わせるような壁面。そして奥にはハニカム状のモニターを複数収めた巨大な円形スクリーンが、会場内の観客やどこか見たこともない場所などを、様々な色彩を伴い目まぐるしく映し出しています。それは異様であると同時に、どこか畏敬の念すら抱かされてしまう圧巻の光景でした。

 

エントランスにて
エントランスにて
データベース・プログラムモニター
データベース・プログラムモニター

本展は、2010年に山口情報芸術センター [YCAM] にて公開された大規模なインタラクティブ・インスタレーション《欲望のコード》の新バージョンとして、本年10月22日よりNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]にて開催されています。本作品群は「現在の情報化された環境と知覚に生きるわたしたちの新たな欲望とはなにか」を問題意識として、映像、音響、データなど、さまざまなネットワーク環境からの情報を、自律的なシステムを持つコードによって再構成することで制作されています。それぞれのカメラの映像データは、世界各地の公共空間にある監視カメラの映像とともに独自のデータベースを構築し、過去と現在や会場と世界各地の映像が、複雑に交錯しながらスクリーンに投影されているそうです。

 

ロボットアーム

円形スクリーン
円形スクリーン

円形スクリーンには様々な映像が止めどなく映し出されている
円形スクリーンには様々な映像が止めどなく映し出されている


インターネットショッピングや施設利用のためのオンライン会員登録など、私たちは日々の生活の中でさまざまな情報を仮想空間へ提供しています。そしてそれらの情報は、私たちの気づかないところでコード変換を経てデータベースに蓄積され、新たなる情報の体系を作り出します。もしも突然、そのような事態とインタラクティブに対峙することになれば、自分という枠組みを超えた「何か」を感じてしまうのは私だけではないでしょう。目まぐるしい消費活動を繰り返す情報化社会の現代だからこそ、このような表現が必要とされているのかもしれません。

 

[執筆]
鈴木孝史:東京都出身。大学卒業後、システムエンジニアとして働いていた時にアートと出会い、現在は展覧会のキュレーションに関わるなど幅広く勉強中。また自身も写真作家として活動している。http://www.takashi-suzuki.com

(編集:坂井)

TABインターン

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学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。