日常からオールナイトのアートTRIPへ出港

六本木アートナイトの今年のテーマは「TRIP→今日が明日になるのを目撃せよ。」
フネをモチーフにした作品が街中に出現。

poster for Roppongi Art Night 2013

「六本木アートナイト2013」

六本木、乃木坂エリアにある
六本木ヒルズアリーナにて
このイベントは終了しました。 - (2013-03-23 - 2013-03-24)

In 特集記事 by 東京文化発信プロジェクト 2013-03-30

毛利庭園の池に2基の浮き灯台が出現した。桜も見頃を迎えた週末。
六本木アートナイトが、3月23日から24日にかけて六本木ヒルズや東京ミッドタウンをはじめ、六本木各所で開催されました。今年は、街中でのオフサイト企画も。

「時間の経過は、朝日がのぼり、日が沈むの繰り返しで、進めたり早めたりできないもの。
でも絵の前に立つと、いろんなところにいける、タイムトリップできる。
どうしようもできない時間の蓄積を目撃していこう」

本イベントのアーティスティックディレクターであり、今回のメインモニュメントを手がけた日比野克彦さんは語りました。

毎年、日の入りから日の出までをコアタイムと呼んで、日が暮れたあとからオールナイトで盛り上がるのが「アートナイト」。コアタイムを中心に、一夜限りのアート一色の夜を振り返ります。

(文・写真: 加賀美令、清水覚子、田原新司郎、吉岡理恵)


■《船頭丸》の出港を宣言し、六本木アートナイトが開幕!

六本木ヒルズアリーナで、開催中ずっと灯がともされた灯台のモニュメント。日比野克彦が「出港!」と宣言し、開幕。日比野氏は、岩手県陸前高田の街の塩害杉の話を、今回「アートブネ」に参加している「みんなの家」プロジェクトを主導し、建築家の伊東豊雄さんから聞き、これを用いて炭をつくった。人々の道しるべとなるモニュメントとしての灯台だ。(写真右)

17:55。日の入りを迎えると70年代の録音機オープンリールを使った楽器演奏で幕を開けた。off-Nibrollは叫びながらの群舞を披露。動物の映像が投影された白い船《船頭丸》は、日比野克彦の船頭丸。オープンリールのテープを引きちぎって夜の帳が下りた六本木の街へと「出港」。

出港と同時に、日の出時刻の5:39まで自転車を漕ぎ続け自家発電をすると宣言をした山川冬樹。二台用意された一台に、来場者も飛び入りでこの発電機付き自転車を漕ぐことができた。たくさんの人が入れ替わり立ち替わり、この発電マラソンを応援していた。深夜0:30、自分で発電した電気を使ってテクノロジーアートのクリエイティブ集団 Rhizomatiks とコラボレーションし、アートブネとのパフォーマンスを披露。


■ 巨大なフネを土台に10組のアーティストが「アートブネ」を制作

オープニングセレモニー会場の六本木ヒルズアリーナを「出港」した《船頭丸》は、夜の六本木の街中を回遊。街中には、巨大な「アートブネ」が各所に展示された。

マスキングテープを使って植物や動物を描いた作品などを展開する淺井裕介の《混生系譜丸》。国立新美術館エントランス前に設置された作品に、日没とともに黄色いあたたかい光が燈された。

中古家電製品を組み合わせたサウンドスカルプチャーで知られる宇治野宗輝。六本木アートナイトでは、たくさんの家庭用照明装置をアートブネにインストール。お馴染み「The Rotators」のパフォーマンスと渋さ知らズオーケストラとノリノリの饗宴で大盛り上がりとなった。


■ 街を回遊する私たちもまたフネのよう「アートポート六本木」

街中には私たちが寄港する「アートポート」が。ロアビルや六本木交差点といった街の代名詞ともいえる場所をはじめ、下町の面影が残る街角を舞台に、若手アーティストがパフォーマンス、映像、立体作品などを展開した。


芋洗い坂にある新聞社「水産経済新聞社」。 鷺山啓輔は、漁業、食、海洋資源、震災復興など新聞で発信される情報をソースに東北の海に向かうロードムービーを制作し映像インスタレーションとして展示。
会期中は、日比野が監修を務める明後日新聞社がこちらの新聞社の協力を受けて「芋洗い坂新聞」を発行、道行く人に配布。

アマンドがある六本木交差点角のビルの一室に、ホテルのショールームがオープン。室内の中央で優しい明るさを放つのは「手づくり太陽」と話す北澤潤。この部屋で使われている家電製品は、昼間、六本木界隈をソーラーワゴンを引いて徘徊し、蓄電した電気で動いている。
彼は、取手アートプロジェクト(茨城)で、地元の方々と一緒に団地の空き部屋をホテルの客室として利用するというプロジェクトに取り組んできた。4月13日にオープンするホテルのモデルルームを一夜限りで公開。

東京ミッドタウン西交差点、以前あった「メルセデス・ベンツ コネクション」が壊され、現在は工事現場となった空き地では、岩井優による映像作品を展示。

昨年、岩井優はカンボジアの首都、プノンペンに滞在。これまでも「清掃」をテーマに取り組んでいる彼は、スラム街の一角にあった「ホワイトビル」と呼ばれる建物を現地の住民と清掃。その記録映像を、ビルのような形をしたベニヤ板に投影した。滞在中に感じたプノンペンの街やそこに暮らす人々のエネルギーのダイナミズムの在り様を、六本木という街と人に重ねあわせていると話していた。

ロアビルのエントランスに出現した大きな「虫歯」は竹川宣彰による作品。根治するまで我々に痛みを与え続ける虫歯をモチーフに、日本が抱える原発問題を身近なイメージで表現した。



■ 夜の公園でダンスパフォーマンス「公園で公演」

「公園で公演」は夜中の静まり返った三河台公園を舞台に、神村恵カンパニー、鈴木ユキオ、ボクデスの3組によるダンス・パフォーマンス。ボクデスは寿司職人に扮し、寿司を滑り台から降ろすコミカルな演目で、観客の吹き出すような笑いを誘った。
観客は鑑賞中の携帯電話の通話はもちろん、近隣の住民に配慮して拍手も笑いも自粛しなければならず、公園には奇妙な緊張感が漂った。


■ 複数の「白雪姫」が街を徘徊。想像力がかきたてられる非日常の光景

夜19:00。ミッドタウンアトリウムに晩餐の準備が整い白雪姫が1人、また1人…と現れた。その人数は全部で10人以上。機関銃を持っていたり、机に登ってみたり…時折「カンパーイ!」と叫んだり、「ハッ!」と空手の型を繰り返したり、深々とお辞儀を繰り返したり、様子が全くおかしい。
《ブランシュ・ネージュ》は、映像、ダンス、パフォーマンス、芸術の異分野にまたがり活動するフランスのカトリーヌ・バイによるパフォーマンス作品。その国の文化や習慣を取り込み、環境や演じる人によって内容は毎回違う。世俗的な白雪姫というイメージアイコンと各国の習慣や動作を掛け合わせ異様な世界観を作り出し、私たちの固定観念を揺さぶる。 1時間ほどの晩餐を終えた白雪姫たちは、コアタイムが終わる5:00の日の出まで東京ミッドタウン内に突如現れては行進したり、寝そべってみたりとパフォーマンスを続けた。機関銃を脇に携えて行進する白雪姫軍団は、強烈なイメージで、ついつい写真を撮った人も多いだろう。

東京ミッドタウンでは同じくフランス発のパフォーマンス《スーフルール-ささやきの詩想レジスタンス》が登場。黒い傘をさした黒ずくめの男女が、長い筒を持って練り歩いた。

ふと立ち止まり、目があった人に傘を渡し、受け取ったら長い筒を通して、詩をささやく。優雅で儀式化された一連の動きに従って、やさしい声で耳に詩をささやかれると、なんだかこそばゆく照れくさく、つい笑顔になってしまう。


六本木アートナイトに併せて、展覧会に関連したプログラムも開催された。
国立新美術館では、「アーティスト・ファイル2013」と連動して、利部志穂と川西隆史によるライブ・パフォーマンス《フレルヒカリ》が行われた。美術館入り口の木々には、國安孝昌の作品が設置された。

ステージに無造作に並べられた棒や電線を持ち上げたり、引いたりして、その金属音が館内全体に響いた。一体どのように音が出ているのか見ているだけでは、全く想像できないところがおもしろい。

桜と國安孝昌による作品。

24日18:00。また日の入りの時間が訪れ、灯台に最後の炭がくべられ六本木アートナイトは今年も閉幕しました。


TABlogライター:
加賀美 令
 1975年生まれ、東京都在住。大学卒業後、働きながら2005年武蔵野美術大学通信教育課程にて学芸員資格取得。いくつかの展覧会のキュレーションに関わったり展覧会ガイドなどを経験した後、2005年夏よりフルタイムでアートの仕事に従事。他の記事>>

清水覚子  「三度の飯と現代美術」な大学院生。Tokyo Art Map のインターンを経て、webギャラリー ffllaatt.com の展覧会企画スタッフ、NPO法人アートル・アクションスタッフ、カルチャーイベントの Webデザイン・広報請負をしている。

田原新司郎  Tokyo Art Beat・ソーシャルメディア、セールスマネージャー。都内を中心に自転車でアートスペース巡りしつつ、写真を撮ったり、たまに翻訳したりしている他の記事>>

吉岡理恵 フリーライター。アートプロデューサーのアシスタントを経て、フリーランスで展覧会企画、Tokyo Art Beat 他でエディター、ライターとして活動。他の記事 »

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