これまでメディア・アートのおすすめ動画をお伝えしてきた本シリーズ。ついに最終回となる今回は、メディア・アート好きにはたまらない、ハイクオリティな作品をご紹介したいと思います。(これまでの動画まとめ 第1回・第2回はこちらから)
絵画の謎解きに迫る作品や、様々なデータが次から次へと流れていく映像を目にすれば、そこに隠された秘密を解き明かしたくなること間違いなし。これから紹介するのは、そんなミステリアスな雰囲気に加え、誰しもつい心を奪われてしまう洗練された美しさを兼ねそえた作品です。
教会絵画に隠された真実に迫るスペクタクル作品
フランスのリール市立美術館からの委託で製作されたマルチチャンネルのビデオ・インスタレーションで、ルーベンスとヴァン・ダイクの教会絵画が主題となっています。壮大に繰り広げられるアニメーションは鳥肌ものです。
Strata #4 – Excerpt 1 from Quayola on Vimeo.
絵画の研究を目的として作られたもので、作品自体がその探求の成果そのものとなっています。
どこからともなくCGアニメーションが現れ、まるで生きているかのように波打ち始める姿が美しいですね。絵画の色彩や構図といった表面的な部分を掘り下げていくことで、新たな美の表現方法を生み出そうと試みています。こうした試み自体をアートとして取り上げてしまう発想も、注目したいポイントです。
この作品はロンドンを拠点とするメディア・アーティストQuayolaによって製作されたもので、第16回文化庁メディア芸術祭のアート部門で新人賞を受賞しています。
触って操る!ファイアーウォール
スクリーン一面にゆらゆらと光っているメタリックな炎に、触れて操ることができる体験型アート作品です。
Firewall from Aaron Sherwood on Vimeo.
スクリーンは柔らかい布状のもので、スパンデックスと呼ばれる伸縮性に優れた素材を使用しています。ジェスチャーや音声を認識するセンサーとして知られるKinect(キネクト)を使い、動きをコントロールしているので、押したり撫でたりすることで映像や音楽が豊かに変化していきます。
滑らかにたゆたっていたり、花火のように弾ける映像がなんとも美しいですね!この作品はニューヨークで活躍中の2人のメディア・アーティスト、Aaron SherwoodとMike Allisonがコラボレーションして作成されました。
謎のデータとノイズが飛び交うサイバー空間!?
あらゆるデータを視覚化した、音と光のビジュアル・アートです!めまぐるしく左右に行き交う数字や記号、ノイズや超音波に圧倒されます。
池田亮司/Ryoji Ikeda datamatics [ver.2.0] PR Movie from shibuyaWWW on Youtube.
まず、突然鳴り響く聞きなれないノイズ音にびっくりされた方も多いのではないでしょうか。これは電子音楽の作曲家/アーティストとして世界中から注目されている池田亮司さんによって製作されたアートプロジェクトです。
無限に続くようなデータの嵐とノイズによって、まるで自分がコンピュータの中に入り込んでしまったかのような錯覚さえ覚える映像です。この中のデータにはどのような規則があるのでしょう。あなたにはその謎が解けましたか?
池田さんの新作を見られる個展が、ギャラリー小柳で開催(11/1〜12/21)。この機会に足を運んでみては。
――3回にわたってご紹介したメディア・アート動画まとめも今回で最終回。お気に入りの作品や作家は見つかりましたか?知っていた作品も、初めて出会った作品も、動画を通して改めてメディア・アートの面白さを発見いただけたら嬉しいです。
進化し続けるメディア・アート、今後はどんな作品が生まれるのでしょうか。
もしもお気に入りのメディア・アート動画を見つけたら、あなたもアートの謎解きに挑戦してみてください!
[TABインターン]
北堀あすみ:理工学部の大学生。ジェネラティブアートの予測できない美しさに心打たれ、アートと科学技術の融合に興味を持つ。美術館巡りやファッション、クリエイティブなことが好き。大学では生体情報をビジュアル化してコミュニケーションを取る方法を研究中。オーケストラでファゴットを吹いていることも。