「アート・バーゼル香港」ディレクターのマグナス・レンフリューへのインタビュー

アジアのアートマーケットの第一線を担うフェアが今年も開催

In Main Article 2 インタビュー by Xin Tahara 2014-05-14

毎年春に開催されるアートフェア東京などで、日本でも親しみ深い「アートフェア」。
世界におけるアートフェアは、ただ作品を眺める「見本市」というだけではなく、世界中から集結した現代美術のギャラリーのブースに、コレクターや観客が至近距離で作品の魅力に触れ、交渉が行われる場でもある。

2012年にガゴシアン・ギャラリーが香港に支店をオープンした際にこけら落としとなった、アンドレアス・グルスキー展のオープニング。あまりの人で身動きがとれない。

オープニングにはアートコレクターのみならず、セレブリティやメディアが駆けつけ、華やかな夜を彩る。フェア開催地のギャラリーもそのタイミングで展覧会をぶつけてくる。例年ハリウッドスターの誰それが自家用ジェットで乗り付け、数億円で作品を購入したことが経済紙のニュースにもなる。日本国内にいるだけでは想像もつかないような規模のアートフェアが、関税がかからず、富裕層も多い香港やシンガポールなどのアジアの都市で隆盛している。

香港の中心部は開発の只中だ

香港では、5月15日からアート・バーゼル香港(Art Basel in Hong Kong)が開催される。先立って来日したディレクター、マグナス・レンフリューに日本のアートマーケットをどう思うか、これからのアジアのアートマーケットについて訊いた。

アート・バーゼル香港 ディレクター マグナス・レンフリュー

■アート・バーゼル香港は拡大しているわけではない?

ースイスのアート・バーゼルに買収され、2年目となりました。年々規模が大きくなっているように見受けられますね

そう思われているかもしれないけれど、参加しているギャラリーの数から言えば、実際のところ変わらない。むしろ減ったくらいです。でも出展しているギャラリーのクオリティについては、今年はさらに自信を持っていますよ。

2013年の会場の様子

ー日本のコンテンポラリーのギャラリーについて、どのような印象を持っていますか?

日本のギャラリーシーンは非常に力強いと思っています。日本には10年以上前から訪れていて、アジアの中でも文化的に洗練されているのを感じるんです。それは美術館の多い土壌にも表れているし、キュレトリアルや美術批評でもきちんとした評価によるフレームワークがある。今年は日本からは21軒も出展していて、その数にも強く反映されています。

ーなるほど、その一方で、アート・バーゼル(スイス)などではまだ日本のギャラリーによる出展数は限られていますね。

歴史的にヨーロッパやアメリカのギャラリーのプレゼンスが強いとはいえ、個人的にもこれからアジアのギャラリーが必ず強さを見せてくると思う。
バーゼルとアート・バーゼル・マイアミに限って言えば、およそ50%はその地域のギャラリーが出ている。逆に言えば残り半数は他の地域から出ているわけで、その数はこれから時間とともに変わっていくんじゃないかな。ギャラリーの選考委員会もアジア・太平洋地域に詳しくなって来ている。一夜にして劇的に変化するものじゃないけれど、段々とね。

会場となる香港コンベンションセンター

ー日本のマーケットについて

ギャラリーはまだ売上の多くを海外のコレクターに頼っている感は否めない。とは言え、30〜50代の世代の若いコレクターも日本国内で育ってきているようだね。海外への志向もあって、コンテンポラリーアートそのものが異質なものではなく、身近に置いておけるものとして捉えられる世代としてね。概してコレクションへの情熱というものは、世代から世代へ受け継がれていくので、伝統的なものをコレクションしていた世代から下がるにつれ、若い世代はより彼ら自身につながりがあり共鳴するものを選ぶから、そこにコンテンポラリーアートが登場するのも必然なんだよ。

ー東京でもここ2、3年でコレクターがギャラリースペースを設けて運営したり、企画展を開催することが増えてきました。

今回の来日では新しいスペースに行くことは出来なかったんだけど、昨年TOLOTに行くことができました。YUKA TSURUNOも入っているところだね。とても大きくて、オーナーの末松さんの個人コレクションも充実していたし、何よりあの妥協のない、どの直線も正確にひかれたような建込みやつくりには驚かされました。

東雲の倉庫街に位置するTOLOT

ー5年前の東京では想像できなかったスペースですね。

他のアジアでも同様の動きがあって、新しい公立美術館や倉庫を改装したコレクターのスペースが何箇所もいくつもの都市で建てられている。オーディエンス、マーケット、そしてインフラがとてもダイナミックに成長している時期だと思う。

■来年の会期が3月に変わるが……

ー次回は会期が3月になるとの発表でした

大半のギャラリーにとっては、6月のアート・バーゼルと会期が近くなってしまって作品の輸送も重なっているという障壁があったのと、なにより5月第2週に開催されているニューヨークのオークションウィークの影響もありました。たくさんの方に香港、NY、バーゼルと周遊できる年間予定にしたかったのです。

ー来年は同時期の開催となるアートフェア東京については?

それについては、競合なのでコメントは差し控えておくよ。

■今年はカールステン・ニコライとのスペシャルイベントも開催される

カールステン・ニコライのプログラムも楽しみですね、彼は日本ではアーティストとしてもミュージシャンとしても展覧会やイベントも多く人気ですよ

そうらしいね!私も参加者として楽しむけれど、ベルリンでカールステンに会った時にも日本が特に自身のキャリアにおいて重要なんだと言っていた。ワタリウム美術館で2002年に展示した時のことだそうだよ。こうしてたくさんのアーティストがキャリアの中でアジアの各国と結びつきを持っていたことを再確認できたし、そのつながりを広げていけたらいいなと思っています。

ーありがとうございました。

カールステン・ニコライがデザインした専用のiOS/Androidアプリを用いることで、香港の国際貿易センタービルの光と連動できる参加型のプロジェクト。

マグナス・レンフリュー(Magnus Renfrew): アート・バーゼル ディレクター・アジア

2012年6月にアート・バーゼルのディレクター・アジアに就任し、2013年、アート・バーゼル香港の第一回を指揮。
セント・アンドルーズ大学より優等成績で美術史の修士号を取得し、O.E. ソーンダース賞(美術史)を受賞。多数の展示会を監督し、コンテンポラリーアートについて多数の執筆物を発表。オークションハウス スペシャリストとして7年を過ごし、ロンドンのボナムスのコンテンポラリーアジアンアート部門の開発で中心的な役割を果たす。その後、上海のパールラム コントラスツギャラリーの展示主任を務め、2008年からはART HKをフェアディレクターとして主導。2013年12月、香港芸術発展局(ADC)委員に任命される。

今年のアート・バーゼル香港の模様は、追ってフォトレポートでお伝えします。

Xin Tahara

Xin Tahara. 北海道函館市生まれ。Tokyo Art Beat PR・セールス、ソーシャルメディア、ニュースの編集も。都内を中心に自転車でアートスペース巡りが日課。料理と植物も。 ≫ 他の記事

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