幻想の物語から出現するフィギュアたち、日本初個展開催coarseインタビュー

現代社会を深く見通し、人間の感情を揺さぶる唯一無二のアートワーク

poster for Coarse “Voyages”

coarse 「Voyages – 旅路 - 」

渋谷エリアにある
DIESEL ART GALLERYにて
このイベントは終了しました。 - (2014-11-21 - 2015-02-13)

In Main Article 3 インタビュー by Arina Tsukada 2014-12-05

現在、2人組のドイツ人アーティストcoarseの展覧会がDIESEL ART GALLERYで開催中だ。彼らは複雑で深淵なストーリーから独特の造形を施したフィギュア作品を生み出し、世界各国で大きな支持を集めている。どこかもの悲しい顔をしたキャラクターたちから、ビニル製フィギュアとオリジナル・アートの関係まで、彼らが現代に訴えかけるメッセージとは?

coarse(マーク・ラントヴェーア、スヴェン・ワシュク)

今回、日本初の個展とのことですが、展覧会におけるコンセプトはありますか。

coarse: 僕たちが活動を初めてから10年。今回はcoarseがどんなアーティストなのかをまず知ってもらう機会でもあるから、これまでの作品のショウケースが中心になりました。いわば、10年の間に築いてきた歴史を垣間見る展覧会といえるでしょう。

展示されたフィギュアには、それぞれ深いストーリーがあるとのことですね。

coarse: そのとおり。シンプルなものから長編のものまで、ストーリーは作品の核となるコンセプトであり、またフィギュアのキャラクターやシーンに反映されています。制作段階からストーリーとフィギュアは複雑に交錯し合っていて、まずカタチのないアイデアが頭に浮かんだとき、フィギュアのイメージを作っていくうちに自然とストーリーが深まっていくこともあるし、またその逆もあります。来年にはこれらをまとめたアートブックが発売される予定ですが、そこではより深いストーリーを知ることができるでしょう。

Ⓒcoarse

《Noop World》 毎年春に生まれ、木々の上で育つ過空の動物Noop(ノープ)を描いた作品。Noopは自身の存在意義にとまどいながらも、周りの動物たちと親しくなり、ときには恋に落ちるが、他種の動物たちからは拒否されてしまう。また第三種の動物 Nism(ニズム)たちはNoopに懐くが、Noop自身は関心がない。こうした不運な三角関係が心の痛みを生み出し、ついにNoopたちは惑星から永遠に絶滅してしまう。

とても複雑なストーリーが展開されていますが、作品のインスピレーションとなるものはありますか。

coarse: 難しい質問ですね。ある個人的な感情がベースになることもあるし、現代へのメッセージや感情が題材になることもあります。特定の何かがインスピレーション源になるということはありませんが、作品は僕たち自身でもあるし、また人間同士の関係性を提示するものでもあるのです。ただ、そのときの僕たちや社会のムードといったものが水面下に潜んでいる気はします。また、最初のアイデアから様々なプロセスを辿るうちに、新たな道を発見することもありますね。

どこかダークでもの悲しい作品が多いように感じますが。

coarse: すべてがそうだと言えるかもしれません。僕らの作品を見てかわいいと言ってくれる人も多いし、僕らも実際そう思っているけれど、作品には恐れや不安といった感情が含まれています。人生には楽しく美しい部分もあれば、そうではない部分もある。
僕たちが生み出す作品は、常に感情の奥深いレベルに訴えかけるものを目指しています。そこで作品と見る人の間に深い関係が生まれ、見る人自身の気持ちや状況と呼応することができると思っています。

Ⓒcoarse

《Souls Gone Mad》 用心深いフクロウ、うつむいて意気消沈した女の子、そして凶暴なモンスターが同じボートに乗っている。パジャマ姿の男の子は、好奇心おう盛な3匹のフクロウに取り囲まれながら毅然と立っているが、この子の肌からは骨格がむき出しになっていることがわかる。こうした悪夢のようなシーンは、若さを脱ぎ捨て、純潔さを失うメタファーとして描かれている。

2人で作品を制作されていますが、どういったコラボレーションを行っているのでしょう。

coarse: とても複雑で、一概には言えません。キャラクターやシーンのイメージを互いに作りながら進めることもあるし、どちらかがアイデアを思いついたときは、どちらかがビジュライズすることもある。そこには、お互いがビジョンを明確に共有できるまでの長いプロセスが存在します。どちらかが賛成しない場合は、互いに理解し合えるまで何度も話し合いますね。これは音楽の共同制作にも似ているかもしれません。いつも、2人でジャムセッションを行っているようなものですね。

展示風景

巧みな技術から生まれたハンドメイドの作品がある一方で、ビニル製フィギュアのシリーズが同時に並んでいるのが印象的です。

corase: いずれもオリジナルの作品がはじめにあり、それらはデザインのアイデアから3Dのモデリング、彫刻、ペインティングまで全て僕らの手で行っています。一方、ときに200〜300個のリミテッドエディションで生産されるフィギュアは、オリジナル作品を元に香港のプロダクションに制作を依頼しています。より多くの人にとって身近なものであって欲しいので、生産数を限定してビニル製フィギュアも手がけています。ハンドメイドのオリジナル作品は非常に複雑で、再現することはできません。

オリジナル作品における強度はどこにあるのでしょうか。

coarse: これは僕らなりに導き出した、現代の彫刻に対するひとつの答えなんです。僕らの作品は一見するとオモチャのひとつに見えるでしょうが、オリジナル作品によく近付いて見てみれば、複雑な技術で作られたものだとわかるはずです。こうしたアプローチそのものが僕たちの現代へのメッセージでもあります。また作品の特徴のひとつとして、よりはっきりと影が生まれるように造形しています。展示する際もストロボの照明には注意を払いますね。

ドイツ・ハンブルクと香港を拠点に活動されているとのことですが、アジアや日本のカルチャーに興味はありますか。

coarse: 以前はプロダクションのある香港を拠点にしていたけれど、今はLAで暮らしています。アジアからはたくさんのアイデアをもらうこともあるし、また僕たちのコレクターの多くもアジア人です。特に日本はトラディショナルからコンテンポラリーなものまで、ユニークな文化が複雑に絡み合っていますね。その多様性が面白いと思っています。それは今まで展開してきた欧州以外の国々、香港やタイ、そしてアメリカとも全く異なるシーンです。今回は日本初の個展ですが、10年間の僕たちの活動を見せられる大きなチャンスですし、この展覧会が多くのひとに見てもらえることを祈っています。

ありがとうございました。

DIESEL ART GALLERY

Text by Arina Tsukada

Arina Tsukada

Arina Tsukada. フリーランス。編集・企画、ライター、司会、キュレーションなどを基軸に、領域横断型のプロジェクトに幅広く携わる。2010年、サイエンスと異分野をつなぐプロジェクト「SYNAPSE」を若手研究者と共に始動。2012年から、東京エレクトロン「solaé art gallery project」のアートキュレーターを務める。ASIAN CREATIVE NETWORK(ACN)メンバー。 共著に『メディア芸術アーカイブス』など、他執筆歴多数。 ≫ 他の記事

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