USUGROWインタビュー DIESEL ART GALLERY「オーガニック・コントラスト – 薄黒の仕事展」

日本では10年ぶりの個展 「文字やドクロに裏切られたい人は集まれ!」

poster for Usugrow “Organic Contrast— Artworks of Usugrow”

USUGROW 「オーガニック・コントラスト - 薄黒の仕事展 -」

渋谷エリアにある
DIESEL ART GALLERYにて
このイベントは終了しました。 - (2015-08-21 - 2015-11-13)

In Main Article 1 インタビュー by yumisong 2015-09-14

渋谷のDIESEL ART GALLERYでは2015年8月21日から11月13日まで、USUGROWの10年ぶりの個展を開催中だ。

USUGROWは、90年代初頭からアンダーグラウンド・ミュージックシーンに携わりながら絵描きとしての活動を開始。音楽やスケートボードカルチャー、アパレルデザインなどにまつわるアートを通じて国境を超えた活動を着実に広げていった作家だ。

Photo: Miki Matsushima

まずは、ご自身の活動について教えてください
そうですね、普通に絵を描いてます。出発点はライブハウスです。当時はハードコアパンク、スラッシュメタルと呼ばれるバンドのライヴに入り浸ってて、類は友を呼ぶので、当時周りにいたのはアンダーグラウンド志向の人が多かったですね。ハードコアがバックグラウンドになっていると言っても、僕自身は怖い人じゃないんですが。絵を描き始めたのはライブハウスだったり、CDやレコードのジャケット、スケートボードのグラフィックを見て、その影響から始めましたね。

USUGROW

音楽が出発点なんですね
音楽だけじゃなくて、音楽のカルチャーです。初期衝動はDIY(Do It Yourself)。DIYというのはなんでも自分でやってみるってこと。例えば自分で演奏したり、ステージを作り上げていくこともDIY精神。それは物を作るってことだけじゃない。物だけじゃなくて、お金を作っていくことも含まれますね。お金も含めて、自分の生活を作っていくこと。制作をしているけどアートの世界でやっていくってことには興味がなくて、自分のやりたいことを世間さまと折り合いをつけながらやっていく。

アートの世界に興味がないというのはどういうことでしょう?
絵で食べていくためにはこうしないといけないって、よく言われるじゃないですか。こういう人たち(コレクターやギャラリストなど)と一緒にやっていかなくちゃいけないとか、学校に行かないといけないとか。美術の歴史に名前を残したり、といったことには興味がないですね。

自分の評価のされ方に興味がないのでしょうか?
後世に残る仕事って、自分が決めるわけじゃない。周りが決めることなので。僕はお客さんに嘘をつかないってことだけ決めてやっています。というのは、つまらない物を「良い物」として売らない。自分が信じているものを出す。自分が良いと思ったものだけを出していく。皆が、これは良いものだ、と思えば残すだろうし、必要ないと思えば忘れるでしょう。

全部自分で作っていく「DIY」が中心になった理由は
子どもの時は誰でも、自分で決めたこと以外はやりたくないってあるじゃないですか。わがままだし。それが矯正されずに育っていくと、そのまま生活していかなくちゃいけないので、だから余計にこうなんだろうな。ある人は社会に出て、仕事を始めて、そういうわがままだけじゃ生活できないって思って、折り合いをつけていくじゃないですか? 僕はそういう機会がなく、選択しなかったので、自分でやっていくしかない、仕事も自分でつくる。そういうことですね。

今回の展覧会の構成についてお聞きしてもいいですか
展示の構成は特に考えずにやっていますね。自分が今までやってきた絵のスタイルとかいくつかあるんですが、ショー自体にコンセプトはなくて、仕事でやってきた絵も一つの作品ではあるので、それをまとめて見てもらいたいなと。仕事を(展覧会用の絵画ではなく)「商用原画」として別けるのではなくて、全て僕がつくったものとして見てくれれば。

Photo: Miki Matsushima

タイトルはご自身で考えたのですか
日本での個展が10年ぶりだったので、タイトルは一番最初に日本で個展をやったときにつけたタイトルにしようと決めました。今まで外国での展示が多かったので、最初に日本でやったときの緊張感をちょっとだけ思い出そうと。最初の個展のタイトルは自分でつけましたが、もうなんでつけたか覚えてない(笑)。個人的に名前はこだわってなくて。
最初の個展は仙台でやりました。やってみたいなと思って。内容は今と変わらず、今まで描いた絵とか並べてやりました。出身は福島なんですが、福島は小さくても創造的なことをやってる人たちが多い。「これで食べていきたい」というより、街で集まってささやかな展示をしたりとか。 素朴ですごくいいやり方だと思います。

Photo: Miki Matsushima

制作はどのようにされているのですか
あんまり言うとしらけるのですが、普段みんなが使わない食べ合わせみたいなものを試したりしていますね。これとこれが意外と合うんだとか、やっぱりみんなやらないだけあるなとか。だけどちょっと正直、最近そういうのも無くなってきて、新しいことを探そうかなと。

展示されている自画像は、悟りの境地に至ってるような絵ですね
いや、まだまだです。まだ小学生レベルですよ。だからあんまり後光も光ってなくて。もうちょっとカーっといきたいなと。自分の自画像シリーズを描いてて、展示してあるのは、そのうちのひとつです。自画像の他には、「黒点さま」っていうのがあって、あのカラスのイメージです。カラスは黒点のシンボルなので、太陽からのメッセージを伝える黒点さまです。(よく見ると羽を描いている箇所の紙が毛羽立っているのは)紙を毛羽立たせて、ファーにしたかった。

点描が細かいですよね。エアブラシなど時間を短縮できる技術を使わない理由をお聞きしてもいいですか
エアブラシは15、6歳の時に使ってたんですが、なんだろうな、飽きちゃったんですよ。洗ったりとか、マスキングするのか、そういうの。めんどうなことしたくないんですよ。描きたい時にすぐ描きたい。エアブラシは使うのは一瞬だけど、一瞬じゃないですよ。インクをセットして、マスキングして、終わったら洗ってとか。そういう根気がちょっと無いんで。すぐ描けるペンがいい。

Photo: Miki Matsushima
点描をする長い制作時間で、筆洗いは終わるのではありませんか
今気がつきました、点描の方が時間かかりますね。でも準備がいるじゃないですか。絵の具を出したりとか、調色したりとか。すぐに描きたいんですよ。やりたかったらすぐに始めて、止めたかったらすぐに終わらせたい。ただ、色は好きです。青とか。自分の絵には使いませんが、使えたらいいなとも思っています。白黒しか使わないとか自分で制限をつけてるわけじゃないんで、これから使うかもしれないです。やりたくなったらしれーっとやってるかもしれないです。

今回はアトリエも再現されたそうですが
実際はもっとひどいですよ、もう少し手を入れたいですね。でも作品だけじゃなくて、これがどうやって作られているのかを見て欲しくて。こういう作業を経て作品ができていくってのを知ってほしい。いろいろやりたかったけど、今までできなかった。外国で展示をすると、予算も時間もないし物もたくさん持って行けないし。今回こういう場所をいただいて、いろんな人が来るところなので、やってみようと。こういうことは東京でしかできないですし。お客さんとのひとつのコミュニケーションみたいな感じですね。

アトリエの他にも壁に即興的にかかれた文字もありますね
ざっくり言うと、飾ってあるのはお洋服を着ていて人前に出る格好で、こっち(制作過程)は全裸みたいな。壁に直接描かれている文字の方は、ちょっとラフですよね。普段見せないこともせっかくだからちょっとだけ見て欲しいって感じかな。壁の文字はアルファベットです。もちろん読めるように文章になっています。自分が思っていることとか、ちょっと人に耳打ちしたいこととか。内容は自分の中のメッセージとは違うのですが、一言言いたいことですね。自分のいつも考えていることが作品に繋がっているように、この文章と生活は繋がってます。僕が神経質なものとラフなもの、どっちも描くように。

壁一面なので、一言にしては長いですね
一言じゃない(笑)。いつも書くことは決まってるんですよ。もしかしたら、人に言いたいけど読めないみたいなのがおもしろいかもしれないですね。この展示のどこかに、日本語でも書いてあります。

展示作品は、手の込んだものと手数が少ないものが二極化していますね
点描は根気も要るし時間がかかるし、たぶん肌に合ってない。その反動でこういう手数の少ないものをやっているって感じですかね。

肌に合ってるから点描が続いてるのでは
いや、気になるからやっちゃうんですよ。根気の要る方もその場のノリも、どっちも必要だとは思ってますけど。両方をやりながら、バランスの取れる方でそのうちにひとつになっていくかもしれないんですけれども。本当は真ん中になるのが、バランスが取れてていいんじゃないかな。それができないから困ってるというか。折り合いをつけようとしたり。バランスが取れる人間になればひとつになるかもしれないです。今はどっちかに偏ってしまう。あっち行ったり。こっち行ったり。

Photo: Miki Matsushima

ライブペインティングもされていますが、それについて教えてください
ライブペインティングは作品としては考えてないですね。ライブパフォーマンスと一緒で、その時しか見れないじゃないですか。この展覧会に貼ってあるのは何か描いてあるように見えてますけど、これ以外は全部真っ黒になっていたりするんです。ペインティングが終わった時に全部真っ黒に塗り潰しちゃったりするんですよ。意図的にだんだん黒く塗り潰すーーその時しか見れないものとして。あとでもう一回見に来ようとする人もいるから、二度と見せないよと。

お客さんとの関係や考え方について教えていただけますか
僕は常に誰かと話すっていう社交的な方ではないので、ステージと客席はしっかりと分けられている方がいいと考えているタイプですね。ただし、然るべきところではちゃんと責任をもって話をしないといけない。

ライブペインティングでコミュニケーションをとるような?
そんな回りくどいことはしないですよ、普通に一緒に飲みますよ。夜のクラブでライブペインティングをやることが多いですが、その時しか出来ないことをやる感じです。

ライブペインティング終了後のものは作品ではないから人の手に渡りたくないですか
ライブ終わったら、あんまり作品として考えてないというか。売る売らないの判断は人それぞれだけど、買うって人がいたらいくらでも売りますよ。本気なら。

普段、ご自分の制作の他にフリーペーパーの制作やキュレーションもされていますね
基本的にフリーペーパーとか作ることって、周りの友達でおもしろいことをしていたら、誰かに見せたいとか紹介してあげたいってことですね。キュレーションは、自分に無いものを見ていきたいので、自分と同じようなDIYをしている作家だけを選ぶわけではないです。表現方法や取り組み方が自分とは違うもの、そうはいっても自分と似通ってくるかもしれないけど。キュレーションと自分の制作とは、ぜんぜんバランスがとれないです。極端なのでどっちかが始まったら、そればっかりになるという……よくないっすよ。自分で選んでやってるんですけど、やってしまうんですよ。なぜか!自分の時間を持ちつつキュレーションとかできたら一番よいですが。付き合ってしくしかないです、自分の性格と。

今回の展示は半澤順子さんがキュレーターとして入ってらっしゃいますが、USUGROWさん自身のキュレーターとしての目線は入りましたか
今回の展示は意識的に自分のキュレーション目線は入らないようにしています。むしろ入らないようにがんばりました。僕はフライヤーとかグラフィックデザインとかも自分でやるので、気になってしまうんですよ、どうしても。今回は気にしないように。人に全部委ねるってことをがんばりました。

自分のやり方と違うグラフィックが出てきたりした時はどのようにするのですか
それは、なるべく人とちゃんとやりとりできるように一晩寝て考えるんですよ。するとこれはこれでいいものじゃないかと思えるんです。

最後にTABの読者にひとことお願いします
制作風景も観られるので、よかったら見に来てください。文字やドクロが好きな人はぜひ来てください。文字やドクロに裏切られたい人は集まれ!で、いいですかね。

おもしろいですね。「文字やドクロに裏切られたい人は集まれ!」って。副題に使わせていただきます。本日は長い時間ありがとうございました。

今回10年ぶりとなる国内個展は、作家のトレードマークとも言える点描によるイラストレーション、カリグラフィー作品、新しいスタイルとなる墨による作品など合わせて40点近い作品のほか、下絵、ラフスケッチの展示、作品制作の過程も垣間見ることができる大規模展となった。会期中は、展示作品のほか関連書籍、グッズが販売されている。

ダイナミックかつ繊細な点描と線で描かれるスカルや花のモチーフ、そして年月を重ねてスタイルを確立していった無国籍感溢れる独自の書体によるカリグラフィー。一般的にネガティブなイメージを持たれるスカルを別の視点で美しく描き、文字という誰もが日常的に接している素材に非日常感と高揚感を与えることで、この空間に足を踏み入れた人がそれぞれの新しい価値観、美しい違和感を見つけられるはずだ。

DIESEL ART GALLERY 「オーガニック・コントラスト ‒ 薄黒の仕事展」 薄黒 – USUGROW
http://www.diesel.co.jp/art/

9月19日(土)にトークショーを開催予定。詳細は、同ギャラリーのTwitter(https://twitter.com/dieselart)またはFacebook(https://www.facebook.com/dieselartgallery)をチェック。

yumisong

yumisong. ふにゃこふにゃお。現代芸術家、ディレクター、ライター。 自分が育った地域へ影響を返すパフォーマンス《うまれっぱなし!》から活動を開始し、2004年頃からは表現形式をインスタレーションへと変えていく。 インスタレーションとしては、誰にでもどこにでも起こる抽象的な物語として父と自身の記憶を交差させたインスタレーション《It Can’t Happen Here》(2013,ユミソン展,中京大学アートギャラリーC・スクエア,愛知県)や、人々の記憶のズレを追った街中を使ったバスツアー《哲学者の部屋》(2011,中之条ビエンナーレ,群馬県)、思い出をきっかけに物質から立ち現れる「存在」を扱ったお茶会《かみさまをつくる》(2012,信楽アクト,滋賀県)などがある。 企画としては、英国領北アイルランドにて《When The Wind Blows 風が吹くとき》展の共同キュレータ、福島県福島市にて《土湯アラフドアートアニュアル2013》《アラフドアートアニュアル2014》の総合ディレクタ、東海道の宿場町を中心とした《富士の山ビエンナーレ2014》キュレータ、宮城県栗駒市に位置する《風の沢ミュージアム》のディレクタ等を務める。 → http://yumisong.net ≫ 他の記事

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