「アートを支援する企業こそが生き残る」アルカンターラCEOインタビュー

高級ファブリック企業がアーティストとのコラボレーションをする理由とは

In Main Article 3 インタビュー by Xin Tahara 2018-07-12

アルカンターラ、というと一般には馴染みは薄いが、フェラーリなど高級車に使われる合成皮革素材として聞いたことのある人も多いかもしれない。イタリアに本拠を持つアルカンターラ社が近年CSRの一環で、アートとのコラボレーションに力を入れだしている。上海のK11、イタリア国立21世紀美術館(MAXXI)での展示や、今年の4月にもミラノ王宮で塩田千春をふくめたグループ展を開催した。単なる企業とアートのコラボレーションとしては珍しくないが、頻度も多く、国際色も溢れている。ヴェネチアでの最新の展覧会を機に、CEOであるアンドレア・ボラーニョに日本から唯一のインタビューを試みた。

瀟洒なヴェネチアの洋館に、表面がエナメル質の布で覆われた建造物。ブラックライトに輝き、有機的な曲線を描く模型、そして抱きまくらのような立体と映像が並ぶという違和感ある光景。アルカンターラ社がこの初夏にヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展にあわせて開催した展示「Alcantara | Multiforme, declinazioni tra spazio e tempo」展の様子だ。

Nanda Vigo、Krijn de Koning、そしてZeitguised。それぞれキャリアのあるアーティストたちが、アルカンターラのファブリックをアートピースに用いたコミッションワークをしたものと見て取れる。特にZeitguisedの立体作品はファブリックとそうでないところ質感の差が出て、どんな物体なのか掴みづらくなる感覚に陥る。

なぜ高級ファブリックの企業がアートを支援するのか

こうしたアートを支援するきっかけについて、ルーチョ・フォンタナやピエロ・マンゾーニなどイタリアの20世紀のアートへの愛を語るボラーニョCEOはこう続ける。

「私たちはわりとアグレッシブなやり方でアートの世界に入ってきたと言えるかもしれない。アルカンターラ社の製品それ自体が、デザインを突き詰めるものになっている。デザインと言っても多岐にわたったもので、インテリアとしてのデザイン、ファッションとしてのデザインや、さらにはマイクロソフトのSurfaceにアルカンターラの布地が使われたコラボレーションはインダストリアルデザインの範疇に入ると言えるだろう。そうしたクリエイティビティを追求するというビジネスの中で、必然的にアーティストたちと知り合うことができたんだ」

2011年にMAXXIで展示、2012年にミラノの王宮でも展示を開催、ほかにも上海など着実に開催の幅を広げている。一方で、他の企業がCSRとして支援するアートとの差異についてもきっぱりと言い放つ。

「他のメーカーでは例えば歴史ある作品を修復するためにお金を出すところがあるが、そういったことには全く興味はない。アーティストと一緒に新しい作品を作り出すことにこそ関心がある。製品をプレゼンテーションするのではなく、製品を使ったアートを提案してもらうわけです。ここイタリア、ヴェネチアでもラグジュアリーブランドが財団としてコレクションを開陳しているが、私からするとそれは”投資”をしているに過ぎない」

アルカンターラ社とのコラボレーションに招かれるアーティストは、最低2日間は実際にイタリア、ネラ・モントロにあるR&D(研究部門)に滞在し、その後何が制作できるかを検討する。「作品に製品を使ってもらう」、なんとそれだけが条件という自由さだ。研究部門もアーティストのクリエイティビティを全力で支え、必要なことをすべてするという。

アートを支援する企業こそが生き残る

アルカンターラ社のCSRとしては、当然のごとくアート以外に環境にも力を入れていて、過去に東京で日本経済新聞社と共催でサステナビリティについてのシンポジウムも行っている。

「製造時に排出される二酸化炭素を差し引きゼロにすることもしている。二酸化炭素を出さないこともミッションだし、それをやることで必ず何かが戻ってくると考えている。卸業者や部品メーカー、輸送業者もふくめての、すべてカーボンニュートラル(排出/吸収する二酸化炭素量を相殺してゼロにすること)になっている。テーマに基づいた仕事、その取組を対外的に透明にし、オープンにすることも肝要だ」

贖罪のような社会貢献活動というよりも、実にポジティブなCSRとしての取り組みに思え、そう尋ねるとボラーニョCEOは突如「ビジネスマン」としての顔になった。
「例えば環境問題に取り組む会社、そうでない会社があったとして、将来的に見て必ず前者が生き残る。まずコストの観点を超えるべきだと思う。ほとんどの会社はコストから考えてしまっているが、長期的な見通しがある会社と理解されることにこそ、株主には重きを置くんだ。アートについてもまったく同じことが言える」

アンドレア・ボラーニョ会長兼CEO

実はアルカンターラ社は東レと三井物産が株主になっていて、日本にも縁が深い。塩田千春以外にも以前ミラノ・サローネでコラボレーションした日本人がいると言う。「nendoの佐藤オオキとも彼がまだ今ほど有名になる前に仕事をしているんだよ」とボラーニョCEOは語るが、「イタリア人デザイナーに紹介されたので、私が見出したわけではないけれどね」と誇張はしない。
アルカンターラは自動車などグローバライズされたマーケットにいるので、日本でも中国でも知名度があることがネットワークの広がりになる。主要な市場でもある日本で、アートとのコラボレーションを観る機会を期待する声をかけてみた。
「もちろん近々日本での取り組みも考えているが……まだそれをお知らせするのは早いかもしれない」とうまくはぐらかされたが、ラブコールに応えてくれる日はそう遠くはないだろう。

■開催概要
「Alcantara | Multiforme, declinazioni tra spazio e tempo」展
会場:Palazzo Rocca Contarini Corfu(イタリア、ヴェネチア)
会期:2018年5月24日〜2018年6月24日
ウェブサイト: https://www.alcantara.com/ja/index.do

Text/Photo: Xin Tahara

Xin Tahara

Xin Tahara. 北海道函館市生まれ。Tokyo Art Beat PR・セールス、ソーシャルメディア、ニュースの編集も。都内を中心に自転車でアートスペース巡りが日課。料理と植物も。 ≫ 他の記事

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