エプサイトギャラリー(epSITE)写真を目指すにはさまざまなきっかけがあります。表現への探求、人物像への憧憬、美しさの渇望、記憶の定着、写真を撮るという狩猟的な行為の魅力......そして、それらが、何かを写真という自己の感性が形成するフレームにこめて発現し残していきたいという欲望へと、導かれていくのです。
松本紀生氏の場合は、アラスカという壮大な自然が横たわる風土に惹かれ、土地に暮らす人間たちのおおらかさに惹かれて、写真家としてのキャリアをスタートさせています。若いやわらかな心に深い印象を残した星野道夫氏の作品との出会いも後押しして、アラスカの奥深い自然から描きだされる情景や生き物たちの像を胸に、アラスカ大学に学び、その後、1年の半分は、アラスカ原野でのキャンプ生活をベースに、写真を撮りつづけるようになりました。
夏には無人島にテントを張り、単身ボートで海に出てイルカやクジラやアシカたちが奔放に泳ぐ姿をまのあたりにし、冬には高峰マッキンリーを見渡す雪の大地に何十冊もの本と膨大な食料を積みこんで、ひたすら好天を待ち続けます。広大な風景のなかにたったひとり、しかし、本人にとってはこれ以上ないという至福の生活がそこでは営まれていくのです。日本に帰れば故郷である愛媛県・松山を拠点に工事現場で働き資金を稼ぎ、翌年またアラスカへと旅立っていく......そのような生活が続けられ、すでに10回以上の季節が巡りました。
本展では、定点での撮影を年ごとに繰り返される松本氏と自然との究極の対峙のなかで、記録されてきた写真を、厳選された約50点のインクジェットプリントによりご紹介いたします。また、小型ビデオカメラで撮影され、人間に興味を示す動物たちと氏との交流や自然の壮絶な実態が写しとめられた、美しい映像を会場にて上映いたします。自然界の多種多様な色と形を再現するインクジェットプリントの静止画と、写真家の心の動きを如実に現す動画との組み合わせが、原石のような素朴な欲望を抱え撮影活動を続ける松本氏の人間像を立体的に浮き彫りにしていきます。
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