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山根英房 展

巷房 (2)
終了しました

アーティスト

山根英房
山根英房(やまね・よしふさ)の作品"36.2144688_139.728478"は、ミニマルでグラフィカルな平面作品を中心としたインスタレーションです。不規則な亀裂のようにも見えるその模様は、作家自身の行動範囲の中から無作為に選ばれた街区の地図から作成されたものです。謎めいたタイトルは、その経度と緯度を示しています。ミニマルな模様に還元された生活圏。それは、わたしたちが知り尽くしていると思い込んでいる周囲の最低限の構図さえ、実はまったく理解していないということを静かに突きつけてきます。わたしたちは、きわめて謎めいた構図の上に、何の疑いもなく生活しているのです。その、グロテスクさ。山根が突きつけるのは、わたしたち自身のグロテスクさでもあるのかもしれません。建築の教育を受けた山根にとって、こうした地図上の構図がモチーフになることは不自然なことではありません。おそらくそのときの彼にとって、地図は建造物の位置を指定するための必要不可欠な座標軸であったはずです。そして、地図によって指定された地点に、精密に設計された建造物が建てられることもあたりまえのことだったはずです。
けれども、ひとたびそれがどれだけその土地そのものについて語ることができるのか、かすかな疑問を抱くやいない、おそらくそれまで依拠するに足る、あるいは依拠すべきものであると思われていた平面図は、頼りないグラフィカルな模様と化してしまったはずです。そのような覚醒した視線にとって、地図はだらしなく身勝手な模様をはびこらせるだけものにしか見えなかったはずです。簡略化された地図とペアで展示される数字は、山根がのぞき見た深淵を端的に物語っています。地球上の位置を精密に示すはずの数字も、ひとたびその意味に疑念を抱いてしまえば、無意味な数字の羅列に過ぎなくなります。精緻に分析し、世界を解明してきたと思われてきた近代的な知性。実はそれは、無用のものばかりを積み上げてきたことになりはしないのか。山根が抱いた疑念。単なるグラフィカルな模様に過ぎない地図や、無意味な数列と化した経緯。おそらくそれは、近代が自分自身に対して抱いた疑念にも似ているはずです。

スケジュール

2006年1月30日(月)〜2006年2月4日(土)

開館情報

時間
12:0019:00
休館日
日曜日
入場料無料
会場巷房 (2)
http://gallerykobo.web.fc2.com/index.html
住所〒104-0061 東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル B1F
アクセスJR有楽町駅より徒歩5分、東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅より徒歩2分、東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅より徒歩5分
電話番号03-3567-8727