PGI坂田栄一郎氏は、週刊誌の表紙を飾るポートレートの作品をはじめ、エディトリアルの分野で活躍する写真家です。氏が大学を卒業して間もない若かりし頃、1960年代半ばの日本では、アメリカから新しい写真の流れが次々と伝わり、人々はアメリカの写真に強い関心を持ち、また少なからずその影響を受けていました。
1965年にVogue紙の撮影のため来日した写真家リチャード・アヴェドンの助手をすることになった坂田は、一ヶ月間の撮影について回るという貴重な経験をしました。その時アヴェドンから見せてもらった写真集「Nothing Personal」は坂田に衝撃を与えました。ニューヨークのアヴェドンのスタジオで働きたいという気持ちを強く持つようになった坂田は、翌66年の初夏、アヴェドンの承諾を得るとニューヨークに渡りました。最初の一年はアヴェドンが何十年間にもわたり撮影してきた写真のコンタクトを作る仕事を黙々とこなす毎日でしたが、やがて念願が叶い、スタジオに出入りすることができるようになり、カラーやモノクロの現像、そしてラフプリントも任されるようになったといいます。アヴェドンのスタジオで坂田が出会った人々の中に、写真家ダイアン・アーバスがいます。
ニューヨークでは、スタジオが完全にオフとなる土日祭日に坂田はカメラを持ってマンハッタン中を歩き回りました。何もかもが坂田の眼に珍しく映る人種のるつぼの中で、タイムズスクエアーを行き交う人々の写真を撮りたいと思うようになり、撮影を始めたのは1966年の秋のことでした。68年から69年にかけての一年間は、ほとんど毎日のようにタイムズスクエアーを行き交う人々を眺め、「Just Wait」と声をかけて撮らせてもらったといいます。そこには、東洋から来たある一人の若者のこの一言を受けて、写真を撮る事を許した人々との一瞬の出会いがあり、未来に向かって無鉄砲であっても突き進んで行こうとする若き日の氏の姿がありました。「人々を撮影する」ということにおいて、この時期がまさに原点となり、現在と一つの糸でしっかりと結ばれていると言えるでしょう。
本展ではタイムズスクエアーで撮影した写真を新たにプリントしたモノクローム作品40点を展示いたします。
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