poster for project N24 小林 浩

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小林が現在のような作品を発表しはじめたのは2004年のことでした。それ以前、2000年頃には、モザイク状の画面がデジタル処理を即座に連想させる、カラフルな花の絵を描いていました。やがて、仔ブタやキューピー人形のイメージが画面に登場し、2002年、03年には、明るいピンクやパステル調のポップな色彩が大きな特徴となっていきました。部分的に厚く塗られた、磁器を思わせるようなアクリル絵具のマティエールもこの頃からで、写真ではよくわからないかも知れませんが、間近に作品をみたときにはもっとも印象に残るものです。2003年の作品では屋外や室内などの具体的な空間設定が作品の魅力のひとつでしたが、翌2004年に白い抽象的な背景のなかを、淡いブルーのみで描かれたテディベア、サル、アヒル、ブタなどのぬいぐるみの動物たちが跳躍、浮遊する、現在の作風へと一気に移行しました。
いまや小林が描き出す世界の住人として、すっかり定着した感がある生き物のぬいぐるみたち。彼らが繰り広げる不思議なイメージの世界は、2つの相反する感覚へとみる者を誘います。セピアブルーに似た色彩の効果は、少年期の孤独感や喪失感、あるいは永遠に失われた時間への感傷を醸し出しますが、その一方で、背景の白に溶け込むような、浮遊するイメージの曖昧な輪郭は、悠久の時間の流れ、至福の幼年期、果てしない夢や希望などを想起させます。無垢なるものがもつ二律背反。重なり合い、絡まり合うぬいぐるみたちは、争っているかのようでもあり、また、無邪気に戯れ合っているかのようでもあります。大きく広がる余白の白が、彼らの無垢性を一層強調しています。
小林の絵画の特徴は、こうした内容のほかに、明確な形式をもって描かれていることです。それは、デジタル映像時代における絵画のひとつのありようを示すものといえるかも知れません。作家は、自ら撮った写真をコンピュータに取り込み、グラフィック処理をほどこして出来上がったイメージを、アクリル絵具によってキャンバスに移し変えていきます。ポラロイド写真のようなボケた、モザイク処理された花のイメージの旧作とは違い、新作ではオリジナルの写真の存在は想像することが難しくなっています。小林の絵画は一瞬の静止した時間を捉えたものですが、そこには必ず次の動作、展開が凝縮されています。小林の近作では、絵画と写真ではなく、絵画と映像の関係が探求されているといえるでしょう。
project N 24 何を、どのように描くか ─ いうまでもなく、これは絵画にとっての伝統的な命題だったはずです。小林浩はこれに真正面から取り組んでいる画家といえるでしょう。今回発表された新作では、虚空の背景から一変し、画面に室内を思わせる一定の空間が設定されているのがわかります。住人であるぬいぐるみたちはこの空間のなかで、宙を跳び、舞うことをやめ、しっかりと両足をつけてどこかに向かって歩み出そうとしているようです。ここに広がるのは、少年にとって冒険すべき未知の世界であると同時に、画家にとって絵画というものが秘める無限の可能性を意味するのかも知れません。たとえ、その足元に底知れぬ奈落が隠されているにしても、あるいはその先は現代絵画の袋小路だとしても、どこかに必ず「青い鳥」がいることを信じて、彼らは歩みつづけるに違いありません。

メディア

スケジュール

2006年01月14日 ~ 2006年03月26日

アーティスト

小林 浩

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