ルーニィ 247 ファインアーツフォトグラムなど、カメラを用いない写真作品を数多く制作してきた作家さんですが、雪景色を撮影したネガを引き伸したイメージをご覧頂こうと思います。
2006年に、「流転」というシリーズを紹介致しました。この作品は、絨毯を掃除する粘着テープを使用後、その剥離紙に付着した埃や塵をそのまま引き伸ばし機にかけた、黒い画面に無数の塵が舞う、宇宙空間を思わせるイメージでした。今作は「流転」のトーンを反転させたような印象を持ちました。
よく見ると、そうではなく、雪の表面を撮影したネガから引き伸した写真でした。
雪の写真をプリントするのは難しい。まばゆいくらいの白い輝きを出そうとすると、質感のないただの白い紙になってしまうし、行き過ぎてしまうと、汚れたグレーになり、その繊細な表情を印画紙に定着する事が出来ない。しばらく見ていたら西村さんは、雪のトーンを出そうとしているのではなく、そこに落ちている小枝や、落ち葉のかけら、名前も分からない昆虫の羽のようなもの、種子の殻などを観察しているようにみえました。フォトグラムのシリーズでもそうですが、写真家本人はしばしば、1枚のプリントの中にあるトーンを気にされています。画像のあちこちに微妙な中間調のグレーを発見して、しばしそのトーンを眺めている、という感じです。まるで今回の作品の中に散らばる小枝達をひとつひとつ探し出すかのような眺め方です。今作における西村さんの関心は、雪の上にあるモノ達がつくる細かな陰影を見ているのかもしれません。思わず手で触りたくなる滑らかで複雑な模様を描く彼の代表作「泡」のフォトグラムを見るのと同じ感情が湧き出てきました。
撮影ネガの引き伸ばしですが、そこは西村陽一郎さんのやることです。ちょっとひと手間加えています。そこがまた面白い味わいのあるイメージになっているように思います。
しばらく、1点制作の作品が続いていましたが、久しぶりに複数のエディションが用意出来る作品を展示致しますので、どなたにもお求めやすい作品を紹介出来ると思います。
もうすぐ立冬です。ひとあし早く、この冬のコレクションに西村陽一郎さんの新作をぜひ加えてみてはいかがでしょうか。
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