ベイスギャラリー撮りためてきた写真や雑誌の切り抜きをもとに高橋の風景は描かれる。頼りなげな線と色彩、とりとめなく茫洋と描かれた風景は参考にした写真とかなり様相を異にする。しかし見ているうちその風景が元来持ち合わせる素姓のようなものが立ち現われてきて、むしろ写真の風景は仮のものではなかったかと思うようになる。ゆるい線が実は時間をかけ、修正を繰り返し何度も推敲を重ねた上に描かれたものと知ると、対象がどこであれ実はもともと高橋の内に潜む風景だったと気がつかされる。
それは大仰でなく、奇矯でもない、いわば普通の風景で、彼の言い方を借りるなら毎日食するご飯のような味わい、それもかなり出来のいいご飯のような風景といったらいいか。この世にそれほど大きな声で語られるべきものはなく、またあらゆる場所は人の存在に関わらず、寡黙にあり続けるだろう、描かれた風景の背後にはそんな彼の思いを窺うことが出来る。
長い歴史の中で絵画というカッコつきのものが身にまとってきた垢や虚偽を回避するには本来の風景が持つ確かな場所を見出しそこに線を引くことだ。私の存在に関わらず風景は静かにそこにあり続け、それを表現するために多くの時間を費やす。その結果描かれたものはそんな作家の意図さえ微塵も感じさせぬ静かで鷹揚なものとして私たちの前に展開される。その茫洋ぶりは風景の素姓を暴きそれに沿って描かれているからなのではないか。昨年ドイツでの個展を経てBASEGALLERYでは2度目の展覧会となる。どうかご高覧の上、ご喧伝賜りますようお願い申し上げます。
[画像:高橋信行「金沢旅行」2010 162 x 112 cm 油彩、キャンバス]
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