滑川由夏 「A Place of Innocence」

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滑川由夏は素朴ながら表情のある人物表現で知られている。ボリューム感のあるどこかユーモラスな人物像で、ひとりで座っていたり、壁にくっついていたり、全員で正座をしていたり、どこか現代の都市生活者(もちろん作品を見る観客もそこに含まれるわけであるが)、そうした人々の日常の動作の面白さがうまく表現された作品群であった。その作風は90年代から10年ほど続いていたが、それは若い作家生活の歳月を考えると長い期間といえるであろう。2007-08年頃からその作風が変化を示すようになる。人物が磨りガラスに閉じ込められたり、立体というよりは平面に近い透過性のある樹脂を使った作品も登場する。一度変わり始めると変化は速い。決定的な変化は2008年にロンドンへ渡り、翌年も文化庁新進芸術家海外派遣で同地に滞在した頃に訪れる。磨りガラスの中に閉じ込められてぼやける事はあったにせよ、それまでの作品には人が必ず表現されていたのに対し、人が不在の作品が作られ始めたのである。
人の代わりに現れたのは樹脂のキューブで建物を思わせるような作品であった。例えば2010年に作られた「I had my whole life ahead of me」。半透明なキューブが積み上げられ、中央に空洞が残る。地震を体験した今の私たちがこの作品に対峙する場合、特殊な読み方が可能になってゆくのだが、これは地震前に制作されている。私たちの目の前に提示された作品は光を透かし、人物不在の空間で、それはユーモアとか私達の感情をもって同一視しながら相対する対象ではなく、ポジティブにもネガティブとも捉えられない「もの」である。しかしそのタイトルが暗示するように、それでもどこかに人の気配を感じないだろうか。それまでこの作家によって描かれていた人物達がいつの間にか私たちの側に立ち、積み上げられた空洞を見ているのではないかとも思える。今回の展覧会のタイトルの「innocence」には無実、無邪気、無害などの意味がある。積み上げられたポリエチレンのキューブの形状や空間から私たちは好き勝手に様々なことを連想するであろう。まさにそれがアートの醍醐味ではないだろうか。今回の展覧会では滑川の人物作品像から半透明の樹脂作品、そして最近のキューブ状の立体作品まで、作家が日本に帰国してからまとまった形で展示される最初の展覧会となる。作家の思索の変遷や、作品と見る者の関係性の変化など、さまざまなことが今回の展覧会から見えてくることになるだろう。

*12月20日(火)~25日(日)の6日間のみ、大型インスタレーションの展示を行います

[画像: 滑川由夏 「I had my whole life ahead of me」(2010) ポリエチレン 170 × 250 × 450 mm ]

メディア

スケジュール

2011年12月06日 ~ 2011年12月25日

アーティストレセプション 2011年12月20日18:30 から 20:00 まで

アーティスト

滑川由夏

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