MA2 Gallery松原は「記憶」をテーマに映像とアンティークなどのオブジェを使った作品を制作しています。これまでも写真や自身の子供の頃の体に関わるモノを使った、個人に眠る記憶を想起させる作品を発表してきました。昨年からは、40年以上も大事にとっておいた手紙を捨ててゆく映像、子供の頃に母親と初めて海に行った時の波の感触と恐怖の体から生まれた映像など、思い出にまつわる物語りを孕んだ映像作品を、アンティークの箱や鏡などそれ自体も各々に記憶を持つ容れ物に納める作品の制作を始めました。
今回の個展では、ベトナムのメコンデルタで撮影された、5人の子供達が次々と泥の川を浮かびながら、ハーフミラーに加工されたドームガラスの中をまるで天国に上昇していくかのように静かに流れていく作品。コップから水が溢れていく作品等、歴史の記憶と個人の記憶の重なりをより強く意識し、普遍的な「記憶の共有」をテーマにした新作が展示されます。松原の特徴である、箱を覗きこんだり鏡に自身の姿と映像が重なるような、受け身だけではない作品の親密さは、我々の心の奥底に凍りついたように眠っている記憶を溶かしてゆきます。
展覧会タイトル「眠る水」はフランスの哲学者ガストン・バシュラールの書『水と夢 物質の想像力についての試論』の中に出てくる言葉から取られました。多くの歴史や人々の記憶と関係してきた水、そして水の変形ともいえる鏡。
松原は、記憶はまだ人類が微生物であった頃からDNAによって人から人へと受け継がれていて、自身の記憶を辿っていくと様々な人種や世代を超えた共通の記憶に辿り着くことができる、そして、人々はお互いの共通の記憶によって強く結びついているのであり、その記憶を共有する事によって、我々の間によこたわる境界を乗り越えることができるのではないかと考えています。
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