東京国立近代美術館工芸館大正から昭和初期にかけて、工芸の源流を求め、あるいは、工芸の新たなる可能性を求め、工芸家は国境を越えて大陸へと旅立っていきました。朝鮮や中国などにおける日本人工芸家の活動を「日本近代工芸史」の一部分として捉え、その実態と背景について探り、彼らの作品に示された大陸の面影を通じて、日本人工芸家にとってのアジアについて考えてみたいと思います。
日本人工芸家が大陸へと渡っていったのは、言うまでもなく、当時の日本の国策を背景とするものでした。いち早く近代化を成し遂げ、「東洋の盟主」を自負していた日本にとって、西欧列強に支配される近隣アジア諸国を解放することが大きな使命として捉えられていましたが、これに対して、工芸家にとってのアジア進出とは、むしろ憬れの源流、よりどころとすべき規範を求めての旅でした。
東洋人として、東洋の工芸文化を正当に評価するとともに、アジアにおける生活文化の共通言語として工芸を守り伝えること、その正統な後継者という意識がその根底にありました。かつて工芸家の心の内にはアジアへの憧れがあったのであり、「アジアはひとつ」という岡倉天心の言葉は、まさしく、工芸家にとっての命題でもあったに違いありません。
本展では、大正から昭和戦前期に制作されたアジア主義的な傾向を示す工芸作品を通じて、工芸家にとってのアジアについて、また、日本人とアジアとの関係を探り、可能性としてあり得たかもしれないもうひとつの近代について考えます。
[画像: 富本憲吉「染付陶板 京城東大門満月」(1934)]
[関連イベント]
◯シンポジウム「オリエンタル・モダニティ: 東アジアのデザイン史 1920-1990」
樋田豊郎(秋田公立美術工芸短期大学)、菊池裕子(ロンドン芸術大学)、リー・ユナ(ブライトン大学)、リン・ウェッシー(ロンドン芸術大学)、菅靖子(津田塾大学)、木田拓也(当館主任研究員)
コーディネーター: 井口壽乃(埼玉大学)
日程: 2012年7月14日(土)
時間: 14:00-17:00
場所: 東京国立近代美術館(本館)地下1階講堂
主催: 東京国立近代美術館、埼玉大学、デザイン史学研究会
※申込み不要、参加無料(先着150名)13:30開場
◯連続講座(全7回)
場所: 工芸館会場
※申込み不要、参加無料(要観覧券)
■木田拓也(当館主任研究員)
「工芸家の中国朝鮮旅行」
日程:2012年5月13日(日)
時間:14:00‐15:00
■横溝廣子(東京芸術大学大学美術館准教授)
「楽浪漆器と小場恒吉」
日程:2012年5月20日(日)
時間:14:00‐15:00
■川島公之(繭山龍泉堂)
「中国に渡った古美術商-山中定之助と繭山松太郎」
日程:2012年5月27日(日)
時間:14:00‐15:00
■木谷清人(鳥取民芸美術館常務理事)
「吉田璋也の民藝運動-鳥取~北京~鳥取」
日程:2012年6月3日(日)
時間:14:00‐15:00
■鄭銀珍(大阪市立東洋陶磁美術館学芸員)
「朝鮮に魅せられた兄弟―浅川伯教と巧」
日程:2012年6月10日(日)
時間:14:00‐15:00
■服部文孝(瀬戸市美術館館長)
「小森忍の中国陶磁研究―満洲を中心にして」
日程:2012年6月17日(日)
時間:14:00‐15:00
■内藤裕子(当館客員研究員)
「幻の満洲国宮殿―澤部清五郎の装飾図案」
日程:2012年6月24日(日)
時間:14:00‐15:00
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