終了した展覧会・イベントです

ダンカン・マウントフォード + 地場賢太郎 「土星の環」

アート・ラボ・トーキョー/アサクサ
終了しました

アーティスト

ダンカン・マウントフォード、地場賢太郎
17世紀の科学革命は文字通り我々の世界観を変えてしまった。望遠鏡、顕微鏡の幕開けと共に我々の目は新たに大宇宙と、小宇宙に向かって開かれ、我々の世界それ自体と,宇宙での位置関係を観測する時代へと突入することになった。一方、この時代で醸造された明晰な客観的意識は我々を取り巻く現象から我々を引き離し、我々の立ち位置を宇宙の辺境にある孤島へと追い遣ることになった。そしてこの時代は様々な分野の専門的な知識を持ち、多くの分野で業績を残した著作家でもあり、医学者でもあるトーマス・ブラウンの生まれた時代でもある。彼の科学的な推論と神秘的な思索を組み合わせは創造への新しい視野を提供するレンズを据えてくれた。彼のもたらした極めてラジカルな新しい世界観はあらゆる場所と、あらゆる時間が一つの視点で共存している「永遠の現在」によって検証することが出来る。そしてこのビジョンはW.G. ゼーバルドが「土星の環」において言及していることであり、彼はブラウンの神のごとき目に賛辞を捧げたのである。ゼーバルド自身の独創的な著作自体も時間、地理、出来事、そして記憶の一種の万華鏡であるが、読み進めるにつれ、我々の立ち位置はぐらぐらと揺れてくる。一見ゆったりとしたイギリス西部地方の田園地帯での散策は清の西太后、第二次世界大戦、レンブラントの絵画「テュルプ博士の解剖学講義」、インドネシアの植民地砂糖貿易と奴隷制、にコンラッドの小説「闇の奥」やさらに繭の飼育にまつわる話も加わり予想出来ない展開へと導いていく。個人的、歴史的、様々な事象が新たに紡ぎ出す輝くような物語の織物,それは新たな様相を呈して行くのだが、物語の内部の反射と屈折を経ると我々読者は様々な大陸、何世紀という時間の縦糸の中を、間断なく左右に振られる横糸のシャトルになるのだ。さらにこの著作は我々の視覚は明るさに依存している筈であるが、我々を闇の中へと引き連れて行くのである。まさに土星の環そのものの様に我々の心を周回する氷の破片をたぐり寄せる霞がかった記憶の深みへ踏み込んで行くのである。そしてこれこそが今回の地場賢太郎とダンカン・マウントフォードによる二人展の展望の視座であろう。彼等は共に記憶の断片が浮揚する領域で新しい重力場を形成しているのだ。地場は生涯をかけた「ライフスクロール」で知られているが、この作品は日々加算されていく細部への執着とイマジネーションによる幻想に満ちた終わることのない巻物である。画面には彼の過去、現在そして未だ書かれていない未来が出逢うのである。地場のこの方向性は一見異なる最近作のアニメーションにも引き継がれている。この作品では宇宙の中で、時間や空間を異にする隔絶した世界が天体望遠鏡を通した一つの視点から統合されるのである。彼の「永遠の現在」の具現化の試みでは世界の全ての局面が同時に存在し、光学機器を通した神の透視法採用することで権力と命令、フーコ的な視点と、 メランコリックな神性の寂しき孤立について物語っているのだ。そして今回同時に展示されるブラックキャンバスではアニメーションのように宇宙を遥か行くことはないが、方向を逆転させ我々の内なる世界へと視線を向ける。眼球に入ってくる光の刺激は網膜と心に刻み込まれ残像となって、明確な形はやがて失われるが、その持続は過去の一時的なものではあるが、身体的つまり物理的な継続である。
キュレーター:太田エマ

スケジュール

2014年9月1日(月)〜2014年9月13日(土)

開館情報

時間
15:0020:00
休館日
月曜日、火曜日
※展覧会によって変動しますので、HPをご確認ください。
備考
開館時間: 14:00~20:00

オープニングパーティー 2014年9月1日(月) 18:00 から 20:00 まで

入場料無料
展覧会URLhttp://art-lab.jp/alab_076.htm
会場アート・ラボ・トーキョー/アサクサ
https://artlab-tokyo.com
住所〒111-0042 東京都台東区寿4-7-12
アクセス東京メトロ銀座線田原町駅2番出口より徒歩5分、都営浅草線浅草駅A1出口より徒歩7分
電話番号03-5389-2985
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