スーメイ・ツエ 「Moony Tunes」

アートフロントギャラリー

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スーメイ・ツェは円熟期を迎えたルクセンブルグ出身のアーティストです。彼女は日常の中から個人的な記憶を抜き出し、シンボルやメタファーを使って誰もが経験し得る普遍的な体験へと変えてみせます。その表現形式は多様で、立体作品からビデオ、写真、インスタレーションまで与えられた場の状況にあわせて空間をつくっていきます。

他のアーティストとの決定的な違いがあるとすれば、ツェが音楽的な要素をボキャブラリーとして作品をつくっていることでしょう。ツェの名前を国際的にとどろかせた2003年のヴェニス・ビエンナーレの金獅子賞受賞作品は、山々に向ってアーティスト自身がチェロを演奏し、それにこだまして山が発する音がチェロの音色に重なりあうものでした。雄大な風景とちっぽけな人間が対話する姿は、中国の山水画を現代に見立てたユニークな表現といえます。ヴァイオリニストの父とピアニストの母のもと、常に音楽のある生活環境で育ったツェは、パリで美術を学ぶ傍ら、高等音楽院にて室内楽を中心として音楽の研鑽も積み、次第に音楽の実践を作品に取り入れ、楽譜や音符、演奏そのものを作品化するようになりました。例えば林立するヤドリギに丸い音符が明滅するビデオ作品や、レコード盤上に惑星のように配置された塵のノイズを通して曲の始まる前の一瞬の静寂を表現した作品などです。

今回日本で発表される新作Moony Tunesは、月の詩情や地球に与えるインパクトを表現した作品です。まず瀬戸内国際芸術祭では、瀬戸内海の本島(ほんじま)の旧家に直径2メートルを超える大理石と赤い糸で吊られた火山岩を設置します。緊張感につつまれた空間は、月と潮の干満を映し出し、海と広大な宇宙の関係性を考えさせるでしょう。ツェは初めて本島の家を訪れたときにその家の禁欲的で毅然とした空気に深く共感し、孤独と内省を感じたといいます。彼女の作品を訪れた人は、空間全体を包み込むサウンドインスタレーションを通じて作家の思いを共有することでしょう。

約1週間後に東京のアートフロントギャラリーでオープンする個展では、同じく自然石を使って瀬戸内の作品に呼応する作品を展示します。こちらは深い色合いの大理石を使って「三次元的絵画」の連作に挑みます。月の満ち欠けを楽譜にみたて、リズミカルな円、光や色彩によって満たされた空間で、遠い海からの波の音を演出してみせます。
ギャラリーではさらに、Chinese Scholar Stones にヒントを得た「巣ごもり」が展示される予定です。古来中国で自然の造り出した奇形として愛でられたこれらの奇石は、室内に置かれた自然として特に宋時代以降文人らの文学や絵画の発想の源となってきました。ツェはカラフルな球体を自然石の中に埋め込みますが、その様態は洋の東西を問わず世界中で親しまれている、ビー玉を使ったこどものゲームを思い起こさせます。

生まれながらにして複数の文化の根っこを持ち、美術と音楽の境界を行き来しながら五感と感情を表出してきたスーメイ・ツェ。2006年の妻有滞在中には陶でジャガイモをつくり、ジャガイモにだって個性はある、と主張しました。個性と同時に自然や宇宙に関係性を求めるツェが、遥かな、しかし近しい国日本でどのような展開を見せるかご高覧ください。
(本展覧会の作品はジャン=ルー・マジェラスの協力を得て制作しました。)

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スケジュール

2016年10月14日 ~ 2016年11月20日

アーティスト

スーメイ・ツェ

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