新たなシリーズであるSubtract(取り去る、差し引く)の作品では、絵の具を塗り重ねて描くのではなく、水々しく塗り描いた絵の具を、さらに取り除く方法で生まれる線や、カスレで「もろさ、はかなさ」そして「不完全さ」の表現を試みています。 『大きな船 / Big Ship』と題したタイトルは、訪れた祖母の死、そして日本を取り巻く緊迫した状況、グローバル化、さらには宇宙にまで発想を広げ、混沌とした現代を克服する船、という抽象的な直感から着想を得ています。Shipの古英語、”scip”(船)とは、もともとインドヨーロッパ語の、”skep”「切る、削る」がルーツであり、friendship、relationshipなどの接尾語の、”~ship”には、”skipan”「形を作る」がルーツとされています。「取り除いて形を作る」、小村の絵作りにも似た要素を垣間見ることができます。山水画をも彷彿とさせる小村の絵は、どこか記憶の片隅にある原風景を蘇らせるような気づきを与えてくれます。