風能奈々 「触っても触っても遠い」

小山登美夫ギャラリー

poster for 風能奈々 「触っても触っても遠い」
[画像: 風能奈々 鍵 2019 acrylic on canvas 45.5 × 33.3cm ©Nana Funo photo by Taishi Nishi]

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この度小山登美夫ギャラリーでは、風能奈々展「触っても触っても遠い」を開催いたします。本展は、小山登美夫ギャラリーでの8度目の個展となり、新作ペインティングを発表いたします。風能奈々の作品は、風能が幼い頃から愛しむ想像や物語の世界と、高い密度の多様なマチエールが絡み合って、独特で重層的な世界観を生み出しています。鑑賞者は、画面に現れるまるで磁器や彫金を思わせるかのような光沢と、刺繍や織物のような繊細な筆致がアクリル絵具のみで生み出されていることに驚きを覚えるでしょう。風能は自身の表現において「地下」や「底」という言葉を用います。小さい時に家族と遊んだ思い出、読んだ物語、そして現在日常に起こる事柄やネガティブな感情も含めた内的世界を、限りない想像力で表現しています。制作初期の頃は自分自身の底の底にあるものを探求し、「ひとりの世界に閉じこもる」ための内向的な表現からスタートしました。「自分の中の地下に降りていって、何を描きたいか、何を見るのかという感覚が絵を描く時にある。どうしようもない孤独感がある人がいたら寄り添うような絵にしたい」(風能奈々インタビュー映像「地下の湿度と紙の手ざわり」、8/ TV、2014年)「筆先をじっと見つめているとその底に沈んでいくような感覚があって、ああここに川が流れて、ここには熊に食べられている少女が、ここは草原、ここは、ここは、という散文のような物語のようなものを追いかけているうちに気づくと細部が細部のまま作品全体に行きわたっていて、画面全体が埋め尽くされたとき作品は完成します。」(風能奈々「物語を紡ぎ出すドローイングの力」『美術の窓』、2014年8月号)そして、毎日3〜5時間欠かさずにノートに描いているというドローイングは、風能から溢れる描きたいという気持ちと描きたいモチーフを受け止める受け皿となり、作家自身「繰り返したくさん描いているうちにモチーフと親密になっていく」というように、タブローでの魅惑的な発展を暗示するエネルギーの役割も担っています。そのように無意識の感覚を緻密に大胆に描いた作品には、私的な体験や価値観が普遍的かつ新しい世界にまで昇華されているといえるでしょう。回の出展作について、風能は次のように語ります。「今回の作品はハンダゴテのような熱ペンで分厚く層状に塗った絵の具を溶かしながら引っ掻いていくことで描いています。絵を描く時(ほとんどの場合)1度では終わらず2度3度と塗りつぶされ上からまた新しい絵を描く方法でつくられます。もともとレイヤー構造やマチエールは絵を描くうえで重要視していたのですが、作者である私だけが直接的に物語に関われるところが気に入っています。見たことのない遠くの村と会ったことのない人たちを描きます。上から重ねて、古い歌の一部分と雨が降って喜んでのびるツルを描きます。」2016年に開催した前回の個展「線でつなぐ遊びと名前をつけること」では、「足し算」でなく「引き算」を意識され、ラフに刷毛で塗ったクリアジェッソの上に色を乗せたり、その後に布で拭き取ったり、「目が気持ちいい」と思ったところで止めてみるような不可抗力による表現を試みました。本出展作においては、モチーフが上塗りされて重ねられ、そこから絵の具の層を溶かしながら引っ掻くことで新たな描線を生み出すことに挑戦しています。一見、雅やかな画面には、実は隠され異なった層に属するもの同士が繊細に関係しあっているのです。また本展では「鍵」など、今までよりも抽象的な表現の作品もあります。「これは草原が(たぶん鍵のような作用によって)開かれていくシーンを描いたものです。世界が開かれていく時の絵です。風が吹いている草原でなにかに気づいて驚くようなシーンの絵です。」そこには現実的な時間や、空間を遥かに超えた、立体的な物語世界が描かれ、より観るものの想像力を掻き立てます。それはひとりの世界に閉じこもる内向的表現から、世界が開かれる描写に至った風能の作家としての心境の変化、そしてスタイルに縛られずに表現方法を追求するひたむきな姿勢が如実に現れていると言えるでしょう。誰しもが持っている意識下に沈んだ記憶を呼び起こすような、風能の新しい表現を堪能しにぜひお越しくださいませ。

メディア

スケジュール

2019年07月27日 ~ 2019年08月24日
8月11日から19日は夏期休館

オープニングパーティー 2019年07月27日18:00 から 20:00 まで

アーティスト

風能奈々

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