この度 MASAHIRO MAKI GALLERY では、ニューヨークのブルックリンを拠点に活動するアーティスト、アンソニー・マイラーの日本で初の個展「The Sun Sets On Us All」を開催いたします。マイラーの作品は、ミニマルで建築的なラインワークに粉末と液体顔料を組み合わせた独自の塗料を用い、鳥のように見える『目』を持つフォルムで静謐な造形美を表現しています。今回、本展のために同シリーズより制作された23点の新作を展示します。マイラーは 2008 年にニューヨーク市立大学シティカレッジにて MFA(美術学修士)を取得。キャリアをスタートさせた当初は、第二次世界大戦後のヨーロッパで興った前衛芸術運動 CoBrA に影響を受け、後に新表現主義に見られるような大胆なストロークで描く人物画などの作品を発表してきました。近年ではそれまでの作風からさらに大きな変化を見せ、象徴的な『目』で表されたモチーフを使って一つの主題に取り組み、粉末と液体の顔料を組み合わせた独自の顔料を用いてクリーンで思索的な作品を発表しています。作品は、あたかも鳥のように見える『目』が幻想的な背景に漂い、様々なバリエーションで創り出されることによってストーリー性を与えています。この正面を見据える『目』をもつフォルムについてマイラーは、「かならずしも鳥ではない。鳥を描きたい訳でもない。ただ古代から続く彼らの進化過程における造形美に魅了されてきた」と語り、結果として彼の行き着いた造形美がどこか『鳥のように見える』作品は静けさを漂わせ、観る者の心を内面から惹きつけます。また、クリアなラインワークに独自の顔料を使うことによって生み出される落ち着いた色彩は、作品の構成にニュアンスと深みを与えています。マイラーの創作へのアプローチは、鉛筆を使ってひたすらデッサンを描き続けたという幼少時代から、外界に溢れる情報や時々の流行の文化に惑わされることなく自分を信じ、内なる進化を遂げていったことのひとつの証だと捉えることが出来ます。そしてその姿勢は、現代の巨大なエゴや欲求を可視化していく喧噪をよそに内面的な探求を続け、複雑になり過ぎたこの世の中を振り切るように、謙虚さと簡素さに向かっていることが読み取れます。