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[画像: 鈴木圭 《人魚姫も、その美しい姫君を見たいものと、一心に立って見ていました。 そして、なるほど、このような愛らしいかたは今までに見たことがないと、思わないわけにはいきませんでした。 (アンデルセン童話集1.大畑末吉約/岩波文庫) 》 oil, gofun on canvas 72.7×91cm 2024]

鈴木圭 「永遠の魂」

s+arts
終了しました

アーティスト

鈴木圭
女性の抑圧と解放を表現している鈴木圭は、展示毎に独自の物語を作り、その中で繰り広げられる場面を作品に描きます。油絵に胡粉を混ぜることにより、時(歴史)が刻まれた壁画のような描写が特徴的な鈴木の作品は、暦の設定から登場人物の性格や背景等、細かい部分にまでこだわりが散りばめられ、様々な角度から現代社会に対する問題提起を内包しています。

本展「永遠の魂」では、アンデルセン童話『人魚姫』より、永遠の魂の探求について取り上げながら、憧れるということについて考え制作しました。アンデルセンの人魚姫は、マイノリティである主人公が、迫害によって語る事が出来ない自身のアイデンティティを隠して人間界へ赴き、永遠の魂を探求する物語だと鈴木は読み解きます。

物語中で表される描写と、『人魚姫』が書かれた19世紀という時代を照らし合わせながら読み進めると、様々な社会背景が浮かんでくるようです。例えば、女性たちが賃金を得て働くことを許されず、婚姻の選択しかなかった時代に、男装や男性名で働く女性がいた事、更にManという単語には男性だけでなく人間という意味が含まれている点から、人魚姫が憧れる人間とは、当時の男性が出来て女性が出来なかったような、自由な言動が出来る人を指すのではないかとの指摘もあるようです。人間になる代わりに美しい声を取り上げられた人魚姫の受ける苦しみは、社会で一人の人間として認められたいと願う、当時の女性たちが感じる苦しさでもあったのかもしれません。(参考文献:著 脇 明子「少女たちの19世紀 人魚姫からアリスまで」)

人魚姫は、恋が叶わず、短剣で王子を殺せば人魚に戻れるのにも関わらず、泡になることを選び、その後に風の精霊となり永遠の魂を得るために徳を積む道を歩みます。助けた者を勘違いした王子や、自身の恋する相手と結婚した隣国のお姫様を恨んだりすることもなく、風の精霊となって生き続ける様は、現代における「自分自身の探究」にも繋がると鈴木は考えます。依然として社会がアイデンティティに疎い中、自己表現や自己愛を獲得するのは難しく、そのような中で自分を愛するにはどのようにするべきか?『人魚姫』は、自身の思い描いたようには認められず、なりたかった自分になることが困難であるという状況を知る事、それを踏まえて苦しさや怒りを受け入れ前進しているという点で、最近の鈴木の制作テーマに共感できると話します。

これを機に、歴史的社会背景と独自の視点を持って『人魚姫』を読み解き、現代社会との関わりを交えながら制作された鈴木圭の新作展を是非お楽しみください。

スケジュール

2024年4月12日(金)〜2024年4月27日(土)

開館情報

時間
12:0019:00
最終日は17:00まで
休館日
日曜日、月曜日、火曜日
入場料無料
会場s+arts
https://www.splusarts.com/
住所〒106-0032 東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル 3F
アクセス都営大江戸線六本木駅7番出口より徒歩3分、東京メトロ日比谷線六本木駅4a出口より徒歩5分、東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口より徒歩6分
電話番号03-3403-0103
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