[画像: グエン・チン・ティ 《47日間、音のない》 2024年 3チャンネル・ビデオ、白黒とカラー、サウンド、ミラー 30分]

「MAMコレクション018: グエン・チン・ティ」

森美術館
9月1日終了

アーティスト

グエン・チン・ティ
グエン・チン・ティは1973年、ベトナム、ハノイ生まれの映画監督、映像アーティストで、現在も同地を拠点に国際的に活躍しています。多様な活動を通して、ときに隠蔽され、奪われ、誤読されてきた歴史を明らかにしつつ、人々の記憶の役割を掘り下げることで、ベトナム社会におけるアーティストの役割を問い続けています。

2021年、ハン・ネフケンス財団、M+、シンガポール美術館と森美術館の共同で「ムービング・イメージ・コミッション」が創設され、最初のアーティストとしてグエン・チンティが選ばれました。グエンは新作《47日間、音のない》(2024年)で、小説家アーシュラ・ル・グィンの『世界の合い言葉は森』や『幻影の都市』などいくつかのSF小説を参照しながら、人間と人間以外、イメージと音の関係を物語るフィクションを紡ぎました。作品制作の過程でアメリカ映画やベトナム映画に使われた木々や植物、空などの背景やコオロギ、鳥、水の滴る微かな音などを丹念に切り取り、同時に地域の先住民族などの楽器が奏でる音のなかから自然界の音に似たものを抽出。それらを新作インスタレーションにおける映像やサウンドトラックで前景化しました。彼女はさらにベトナム中央高原で死者を祀る儀式に人々が集まるなか、ジェイライ村の村民たちが人間の眼を持たない男について語る映像も撮影し、作品に編み込んでいます。

複数のスクリーンとサウンドが同期する映像インスタレーションをグエンは「拡張されたシネマ(expanded cinema)」と呼び、スクリーンの映像、ストーリーテリングと鑑賞者という従来の映画体験に新たな挑戦を試みています。特定のストーリーが無く、映画の背景だった自然界の風景や生き物から発せられる音がインスタレーションのなかで融合し、鑑賞者はあたかも深い森のなかを歩いているような美しい空間を体験します。そこでは植民地化の歴史、気候危機、動植物の命への意識、アニミズムと近代宗教などに関わる複数のストーリーが併走しています。

タイトルの《47日間、音のない》は、フランスの作家で映画監督のクリス・マルケルの代表作「サン・ソレイユ」を意識させる一方で、実際にはハリウッド映画「地獄の黙示録」が撮影されたフィリピンの河川から中央ベトナムの河川へ徒歩で移動した場合にかかる時間を示しています。多くのベトナム映画が風景の類似したフィリピンで撮影されていることもあり、コロナ禍中にインターネットで調べたその時間は国境を越えられない時期の非現実的な距離感と親近感の双方を想像させるものでもあるでしょう。

※《47日間、音のない》はハン・ネフケンス財団、森美術館、M+(香港)、シンガポール美術館による共同コミッション作品です。

スケジュール

開催中

2024年4月24日(水)〜2024年9月1日(日)あと121日

開館情報

時間
10:0022:00
火曜日は17:00まで
4月30日、8月13日は22:00まで
入場料[平日] 一般 2000円、大学生・高校生 1400円、65歳以上 1700円、中学生以下 無料
[土曜日・日曜日・休日] 一般 2200円、大学生・高校生 1500円、65歳以上 1900円、中学生以下 無料
※オンラインサイトよりご購入の場合は料金が異なります
展覧会URLhttps://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/mamcollection018/index.html
会場森美術館
https://www.mori.art.museum/
住所東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー 53F
アクセス東京メトロ日比谷線六本木駅1C出口より徒歩3分(コンコースにて直結)、都営大江戸線六本木駅3番出口より徒歩6分、JR渋谷駅より都営バス「六本木ヒルズ」下車すぐ
電話番号050-5541-8600 (ハローダイヤル)
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