われらの時代

先日終了した「横浜トリエンナーレ2005」とは、全く正反対の企画展示である。美術館というきちんとした空間(←→ふ頭の倉庫)でという前提はもちろんあるが、地元の作家を中心としたセレクション(←→国際展)で、ほとんどが絵画・彫刻の枠を大きくは出ない小品・インスタレーションが中心。

poster for

『われらの時代』展

関東:その他エリアにある
水戸芸術館現代美術センターにて
このイベントは終了しました。 - (2005-12-17 - 2006-02-05)

In レビュー by Makoto Hashimoto 2005-12-25

作品ひとつひとつと丁寧に向き合って鑑賞していくという、本来スタンダードであるはずの展示形態に安心して身を委ねた。
ともすると市民展的な雰囲気に陥りそうなところではあるが、そこはシンプルな空間の中でも展示空間の切り分けや配置が絶妙であり、作品ひとつひとつがよく生かされていた。

『われらの時代』展

ポスターに作品が使われていた雨宮庸介は、展示室の順路折り返し位置で、しっかりと空間を使い切ったインスタレーションを展開。
天板がリング型に円環している長机とその上に乗ったいくつものリンゴ、椅子、大きな壷(のようなもの)、クマのぬいぐるみ、壁にかかった鏡。
リンゴとクマのぬいぐるみは彫刻らしく、通常あるべき形をとどめていない。溶けかけの飴細工のように、「だらっ」とした形状を保っている。
壁の鏡にはそれらの光景が映りこんでいるが、それは実は映像であり、いないはずの人物が現れて椅子に座ったりしているのを見つけてちょっとどきりとしたりする。虚構の中に虚構が移りこんでいるのだ。
普段我々が見ている世界を疑う視点を持つことの重要さ、はたまた豊かな想像力を持ってそれに対峙することの意義について考えさせられる。

もちろん、以上は私の勝手な解釈であり体験なのだが、このような展覧会では作品ひとつひとつの技術的「巧さ」や空間の説得力が、そういった観客個々の感動に大きく影響する。雨宮の作品に、それを強く感じた。
近年、作品のコンセプトやそれが持つ仕掛けばかりが重要視されているシーンも度々目にするので、この企画のストレートな「よさ」は意外に重要なのではないだろうか。

Makoto Hashimoto

Makoto Hashimoto. 1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業。 ギャラリー勤務を経て、2005年よりフリーのアートプロデューサーとして活動をはじめる。2009〜2012年、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)にて「東京アートポイント計画」の立ち上げを担当。都内のまちなかを舞台にした官民恊働型文化事業の推進や、アートプロジェクトの担い手育成に努める。 2012年より再びフリーのアートプロデューサーとして、様々なプロジェクトのプロデュースや企画制作、ツール(ウェブサイト、印刷物等)のディレクションを手がけている。「Tokyo Art Research Lab」事務局長/コーディネーター。 主な企画に都市との対話(BankART Studio NYK/2007)、The House「気配の部屋」(日本ホームズ住宅展示場/2008)、KOTOBUKIクリエイティブアクション(横浜・寿町エリア/2008~)など。 共著に「キュレーターになる!」(フィルムアート/2009)、「アートプラットフォーム」(美学出版/2010)、「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)など。 TABやポータルサイト 「REALTOKYO」「ARTiT」、雑誌「BT/美術手帖」「美術の窓」などでの執筆経験もあり。 展覧会のお知らせや業務依頼はhashimon0413[AT]gmail.comまでお気軽にどうぞ。 [ブログ] ≫ 他の記事

コメント

Instagram

人気記事

TABlogのそれぞれの記事は著者個人の文責によるものであり、その雇用主、Tokyo Art Beat、NPO法人GADAGOの見解、意向を示すものではありません。

All content on this site is © their respective owner(s).
Tokyo Art Beat (2004 - 2019) - About - Contact - Privacy - Terms of Use