元木孝美 「日彫展」

トタンを素材にして、日用品など身の回りにある物をかたどった彫刻作品を制作する元木孝美。昨年12月24日まで阿佐ヶ谷のとたんギャラリーで開催されていた個展「日彫展」では、ギャラリースペースの入り口から中央部を突っ切り、窓の外のテラスを越えて庭の塀まで、シンプルな「家」の造形をした作品を一直線に並べたインスタレーションを発表した。

poster for Takami Motoki

元木孝美 「日彫展」

武蔵野、多摩エリアにある
とたんギャラリーにて
このイベントは終了しました。 - (2006-12-10 - 2006-12-24)

poster for Takeshi Abe

阿部岳史 「GHOSTS - 幽霊たち」

武蔵野、多摩エリアにある
とたんギャラリーにて
このイベントは終了しました。 - (2007-01-07 - 2007-01-21)

In レビュー by Makoto Hashimoto 2007-01-15

なぜ「家」なのか。これは会場であるとたんギャラリーがまた、「家」としても機能しているスペースだったからではないかと思う。とたんギャラリーは2007年中に再開発による取り壊しが決定している阿佐ヶ谷住宅25号棟4号室の1階部分、すなわち、住民である大川幸恵の住居スペースでもあるのだ。

阿佐ヶ谷住宅は1958年の竣工と同時に入居が始まった全戸数350世帯の分譲型集合住宅であり、団地は中層棟、テラハウスからなる。とたんギャラリーのある25棟を含め、テラハウスは建築家・前川國男による設計。近年ではほとんど見られなくなってしまった低層(2階建て)の建築は、屋根、バルコニー、テラス、庭、と戸建同様の機能をひと通り備えており、元木の制作した作品のように、どこか愛らしさも感じさせる外観である。

近年、特に都市部においては、同種の集合住宅は次々と姿を消し、宅地活用の極みである賃貸住宅化、マンション化が進んでいる。仮に戸建用の新興住宅地となったとしても、そこに建てられる多くの「家」は住宅メーカーによりパッケージ化されて売りに出されたものが多くを占め、どうしても没個性的な風景が出来上がってしまっているような気がする。

しかし、どんな建築に包まれていようが、ひとつひとつのユニットとしての「家」にはそれぞれ住人が住まい、そこには固有の時間があるはずだ。それを見えなくしてしまっているものは何なのだろうか。

 阿佐ヶ谷住宅が集合住宅にして「家」としての個性を放っているように感じられるのは、効率的に各棟、各号室が区切られつつも、それぞれの住民やその住民が過ごす時間を垣間見ることのできるほどよい「隙」があるからではないだろうか。

同じ形状の骨格でありながら、サイズや手づくりのディティールがひとつひとつ異なる元木の「家」が間隔を空けて一直線に並び、塀の向こうにある住宅地へと続いていく風景を前にして、私はそんなことを考えていた。

ところでとたんギャラリーは、住居の一部が使用されている点だけではなく、その運営方法もギャラリースペースとしては特徴的だ。ギャラリー終了までに実施される複数の展示全てが時間というレイヤーにおいて重なり合い、ひとつのインスタレーションとなるように捉えられているため、「TOTAN GALLERY PROJECT」として下記のようなルールが設定されている。

(1)原則、現状復帰は行わない。
(2)参加アーティストは、エキシビジョン終了後、1点以上作品を残す。
(3)次作家は前作家の作品をどのように扱ってもよい。
(4)ギャラリーの運営者であり取り壊しまで住み続ける住民の大川は、一切作品に手を入れることはできない。増殖していく作品たちとともに暮らす。

作家は前に展示を行った作家が残した作品やその痕跡を空間として受け入れ、時には利用して自らの展示を行うという枠組みにより、言わば住空間に作品が同居し、それと共に生活を行う住民・大川と同様の条件で発表を行っているのだ。

 元木の展示は4回目にあたるので、私が訪れた際には、これまでに展示を行った大滝由子(紙袋作家)、hana(写真家)、トラフ(建築家)の作品やその痕跡を各所に認めることができた。次の作家にどのような空間を残し、バトンタッチしたのか。既に終わった展示をそのような視点で読み解くのもなかなか楽しい。

今後も阿部岳史(1/7-1/21)、淺井裕介(2/3-2/18)、下平晃道(3/3-3/18)など毛色の異なる作家の展示が続くので、この「家」がどのような空間に変貌していくのか楽しみである。

紙袋作家・大滝由子作品のひとつは、窓のサッシの上に残されていた

Makoto Hashimoto

Makoto Hashimoto. 1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業。 ギャラリー勤務を経て、2005年よりフリーのアートプロデューサーとして活動をはじめる。2009〜2012年、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)にて「東京アートポイント計画」の立ち上げを担当。都内のまちなかを舞台にした官民恊働型文化事業の推進や、アートプロジェクトの担い手育成に努める。 2012年より再びフリーのアートプロデューサーとして、様々なプロジェクトのプロデュースや企画制作、ツール(ウェブサイト、印刷物等)のディレクションを手がけている。「Tokyo Art Research Lab」事務局長/コーディネーター。 主な企画に都市との対話(BankART Studio NYK/2007)、The House「気配の部屋」(日本ホームズ住宅展示場/2008)、KOTOBUKIクリエイティブアクション(横浜・寿町エリア/2008~)など。 共著に「キュレーターになる!」(フィルムアート/2009)、「アートプラットフォーム」(美学出版/2010)、「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)など。 TABやポータルサイト 「REALTOKYO」「ARTiT」、雑誌「BT/美術手帖」「美術の窓」などでの執筆経験もあり。 展覧会のお知らせや業務依頼はhashimon0413[AT]gmail.comまでお気軽にどうぞ。 [ブログ] ≫ 他の記事

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