アジアの可能性を探るアートフェア:ShContemporary 2007

ディレクターのロレンゾ・ルドフル氏 へのartfacts.netとtokyoartbeat.comによる合同インタビュー。

In Main Article 3 インタビュー by Aneta Glinkowska 2007-11-23

9月初旬に上海で行われた初の大掛かりな国際アートフェアーであるSh Contemporaryの会場で、ディレクターのロレンゾ・ルドフル氏 へベルリンを拠点とするアート情報サイトartfacts.netとtokyoartbeat.comで合同インタビューを行った。

あなたのサイトに掲載されたインタビューを読んできたのですが、その中で「これで、アジアにはもう世界一流のアートフェアが確立された。」とおっしゃっていました。つまり、ShContemporaryは大西洋地域においてアート・バーゼルやアート・マイアミと並ぶという事でしょうか?

私達は上海において、アート・バーゼルやアート・マイアミを再現したいのではありません。アジアに向けて、なにか新しい、特有のものをやりたいと考えています。ただ、アートフェアーとしての重要性、意味合いにおいてというのであれば、そのとおりです。言い方をかえるなら、それだけのものである自信があります。アジアのアートシーンの発展はめまぐるしいものがあります。中国やインドは氷山の一角にすぎません。しかし、世界規模のアートマーケット自身はアジアでどういうことが起こっているか把握しているわけではありませんし、アジアにそれだけの重要性、敬意を示していません。だから私がここで強調したいのは、この大陸で何が起きているのかを示すことができるプラットフォームが必要であるということなのです。世界へ向けてそれを示し、また、世界中からここにくれば、ここで何が起きているのか把握できるという環境です。そういったフェアーとしての重要性という観点からすると、アジアのアート・マイアミとも言えるかもしれません。でも、内容は絶対にマイアミやバーゼルの単なるコピーではありません。

ShContemporary 2007の会場のメインホール

先のインタビューで、このようなアートフェアーはスターの卵達に真っ先にアクセスすることができ、それが大きな利益につながる場であると仰っていました。オークションハウスがセカンダリーマーケットで果たしているように、国際的アートフェアは、プライマリーマーケットにおいてブースターの役割を担っているとお考えでしょうか?

お答えする前に、このインタビューにかなり準備して下さって光栄です。私に関する記事を全部読んでこられたようですね。仰るとおりだと思います。このようなアートフェアは、まず、プライマリーマーケットをサポートするべきです。それがひとつ。次に、特にアートフェアーがそこら中でどんどん開催されているような現状の中で、フェアーの中身を重視しなければいけません。それに加えて、どのアートフェア同じような物ばかりでしょう。どのアートフェアも同じギャラリー、同じアーティストを招待してます。今世界中で基準となるのは、何が売れるか、ということです。このような中で、今日どのアートフェアに行っても、本当に新しいものを見つける事は困難です。それでも、どのコレクターたちも発見したいのです。彼らは新しいものを見つけたいのです。ここで私たちが紹介するのは、この大陸の全ての創造力であり、まだ国際マーケットでは知られていないものばかりです。アジアの重要性が増している、またアジア自らが将来的にマーケットで鍵となろうとしている現状のおかげで、ここでは新しい作品、作家に出会える絶好のチャンスなのです。私たちはそれらのアーティストが国際マーケットに参入する手助けをしたいと考えています。

今、世界中の数多くのアートフェアが、ハイレベルの同じギャラリーを何度も招待することで、フェアーとしてトップレベルを狙っています。そして、ここではそれをさけたいとおっしゃりました。調べたところ、25%のギャラリーがバーゼルにも参加し、20%がARCOかFIACに出展しています。これについてはどうお考えですか?

2つ区別しなければいけないことがあります。まず第一に基本として、こういった新しいイベントをするなら、絶対に他のコピーをしない。どんなイベントでも成功したいのであれば、必ず特有の個性がなければいけません。質問にかえると、アジアの中で一番のアートを世界に見せたい一方、地元の観客に国際マーケットで何が起きているのかを示すために、厳選された、特別な作品を持ってくる事のできる海外のギャラリーを紹介したいのです。逆も同様です。海外ギャラリーを選ぶにあたっては、もちろん他のアートフェアーも参考にするわけです。どのギャラリーが一番いいか?どのトップギャラリーがどういう価値をこのフェアにもたらすのか?

ヒロミ ヨシイのブース

私達は、このアートフェアは中国で一番のイベントだとおもいますが、これは西洋の影響が強いからでしょうか?

そうとは思いません。幸いなことに、私たちにはたくさんの経験があります。私のパートナーたちもこの業界にかなり長くいますし、私も含め、アートフェアがどう運営されるべきか把握しています。しかし、大切なのことは、私たちにはビジョンがあるということです。世界中の多くのアートフェア運営者は、中国、海外に限らず、自ら発展しようとせず、トレンドに身を任せ、同じ事ばかり繰り返していると感じています。しかし、このフェアーが真に特別なのは、私たちには全く異なる目標、コンセプトがあるということです。まず、これまで行われたフェアーで、トレンドや売れ筋に左右されずに、アジア、それもアジア全体のアートシーンの全貌を提案できたものはありません。運営者として内容について、責任をもって行うのは、国際的にもまれなものだと思います。シンプルに「これとこれがいいから紹介したいんだ」ということなのです。メインホール、カフェ、ギャラリーを含め、会場の全てをキュレーションしました。

Best Artistsのブーズに置いてある奈良美智の作品

アジアのコレクターたちは、今、とても自信あるバイヤーで、彼らの好んだアーティストたちが世界的に頂点に至るまで買い進めているように見えます。この状況に至るということは、経済的な国家の成長を反映した、文化的な競争とも見えますか? 欧米に対し、文化的、美学的にも競争が始まったということでしょうか?

まず、自分達の国のアーティストが世界のマーケットのトップに上るまで買っているのは、アジアのコレクターだけではありません。これは全世界的な現象です。最終的には、“中国”のアーティストや、それを買う“中国”のコレクターたちについて話す必要がない状況になればと思っています。中国アートが同時に、アメリカ、ドイツ、スイス、、、のアートであると認知されるときが来ているのではないですか?今話していても、とても変な感じがしますが。ヨーロッパでは、ドイツのアート、スイスのアート、アメリカのアートという形では絶対に話しません。これがいいアート、だめなアートという風には話しますが。

つまり、関係ないと。どこのアートかは、重要ではないということですか。

そうです。もちろん誰しもに起源があります。でも最終的には同じ言語ですから。ですが、このインタビューの準備にあたって、どこかしらあなた自身が「国家的思考」を強要されているように見えました.15年前にはだれもがロシアアートばかりを語ってましたよね…

マーケットではトレンドをつくる。トレンドをつくる、そしてそれを売り出すには、美しいパッケージングを考えなければいけません。

ロシアアートがあったり、ライブチヒ・スクールとかがあったり。それでも10年後にほしいのは、いいアーティスト、個々のアーティストの名前です。

ARATANIURANO のブース

ロケーションも一流のアートフェアを行うにあたり重要ですよね。ロケーションと言っても、今回は地理的なことだけでなく、建築的要素も含めます。Friezeの幻想的なテントやFIACの壮大なグランド・パレスなど。バーゼル、バーゼル・マイアミも小さな街を大きな遊び場のようなものに転換することで成功しています。アジアのこの街、そしてこの特有の“スターリニスティック”な建築を選んだときにこういった要素にも注目していましたか?

最初に、アジアのどこでこのフェアを開催するかという問題がありました。中国がどこよりも超越して有望なマーケットであることから、中国で行うことはすぐに決まりました。そして上海にしたのは、この街がアートに注目しているということだけではなく、特別なライフスタイルを提供できる面で決まりました。今日重要なアートフェアでは、コレクターたちは展覧会だけでなく、総合的なパッケージを求めています。彼らは来るからには楽しみたいし、いろんな可能性を求めているから、中国では上海だけがそれを提供できると思います。それにこの街の開放的で友好的な面もとても魅力です。港街として中国の世界への玄関でもあります。そして、この建築を見たわけです。ここでしかできないことは明確でした。ここでなければならなかったのです。だれもがこの建物にはいると圧倒されます。それにコンテンポラリーアートと建築空間の雰囲気をマッチさせるということは大変興味深いですし。それらお互いを妨げずに、いい方向で強調しあうデザイン、レイアウトを考えるのは難しかったです。とてもよくできたと思います。あのパリのグランド・パレスについては…あの建築の美しさがコンテンポラリーアートフェアに向いてるかどうかとは思いますし、それにロンドンのマジカルテント?雨が頭に降ってこなければ、マジカルなんですがね。

ロケーションに加えて、その他の都市のメジャーなアートイベントのスケジュールも考慮しなければいけませんよね?イスタンブール・ビエナーレのプレビューが9月6日に開催されますし。ShContemporary開催にあたり、ビエナーレなどのスケジュールも考慮されているのでしょうか?

現在、マーケットにとって、多くの重要なアートイベントが行われていると思います。ビエナーレなどはもちろん重要なイベントです。しかし、全てのアートシーンを見なければいけません。上海ビエナーレもありますし、それはアジアを筆頭するイベントに成長しています。そして、もちろん、来年はフェアーと上海ビエナーレが同時に開催されます。この2つのイベントは連日して行われます。だからお互いに協力し、貢献しあうはずです。行けば両方見る事ができますし。はじめから、私たちには売り出すべきビジョン、美しいアイデアはあったのですが。今回実際にアートフェアーを開催するまでは、私たちにはイメージとして見せられるものがありませんでした、だから今回は多くのアート関係者が来たとは言えません。しかし、今は見せられるものがある、私たちのやった事を具体的に見せられるのです。フェアーとビエナーレのコンビネーションで来年は巨大なイベントになります。「マイアミみたいな」と言えるのではないでしょうか。

中国では文化を扱うということに敏感であった過去がありますが。当局とはどのような関係を築いていらっしゃいますか?文化的因習が破壊されるというような論争はありますか?

私たちがここにもってきたものが、全く違った世界からの全く異なったメンタリティーであることは明らかです。突然やってきて、「私達が最高なのだから、私たちが示す通りにやるべきだ」などということは勿論言えません。対話と、意見の交換が必要です。自身の海外からの意見を言う前にまず彼らの観点を尊重しなければいけません。お互いをどう扱うのかが重要なのです。時には、簡単に達成できるはずのことが、余計な時間と労力をとることもありましたが、最終的には、他の場所同様に、お互い解決点を見出すことができました。当局との関係についても同じです。今は、彼らもこうやってアートフェアーを実際に目にしています。新しい事が問題を引き起こすのではないかと不安を覚える必要もなく、自信をもつことができていると思います。もちろんこういった状況では必要なことですが、常に対話をもつようにし、それらのどの対話についてもフェアーに平和的に解決していくことができました。

ミズマアートギャラリーのブース

ここにいるtokyoartbeat.comの藤高が、参加している日本のギャラリーに、購買層について聞いた所によると、中国本土のコレクター達からのコンタクトがそれほど無かったということです。中国のコレクターたちはやはり中国のギャラリーから買いたいと考えているのでしょうか?

同じような悩みを中国のギャラリーから聞きます。彼らはそれと同様なことを欧米のギャラリーについて感じているようです。どのアートフェアでも同様だと思います。コネクションがある人もいれば、そうでない人もいる。この状況は近年中には改善されていくとは思います。中国のコレクターも、欧米のコレクターと同様に、様子をみながらそれぞれのギャラリーと少しずつ関係を作っていかなければいけません。今まで、日本のギャラリーが中国のコレクターとそれほどコネクションがとれていないという状況ももちろんあります。相手側も同様です。でも、どこでフェアーに参加するかは、あまり関係ありません。どこで参加するにしても、一つに参加したからといって、世界を制したなどと思っていてはだめです。積み重ねが大事です。私が思うに、中国のコレクターたちはもっと心が広く、中国人アーティストだけに注目しているわけではないと思います。日本のギャラリーも将来的には中国のコレクターと深い関係をもつことになるでしょう。

あなたは尊敬すべきディレクターです。ピエール・フーバーやArteFieraで知られているシルビア・エバンゲリスティと共にとても強いキュレーション力をもって行われていますし、ファン・ジュン代表率いるコミッティーや多くの上海の文化協会などとも協力されています。どうやったらこの密なネットワークが成立するのでしょうか?これら多くの団体を誰がどうやって先導したのですか?

話すと長くなるのですが、手短に説明します。まず、ピエールと私は古くからの知り合いです。私がバーゼルでディレクターをしていたとき、コンセプトを新しくしたかったので、1991年に戦略的なボードメンバーを集めました。バーゼルの構造をその90年代の2、3年で大きく変える事ができました。それが今日のバーゼルのコンセプトであり、世界中でコピーされているものです。そのときからピエールはとても良く知ってます。バーゼルを去ってから他に移ったあとも、私はいつもマーケットのことを考え、多くの変化をもたらしてきました。3年前にピエールに再会し、話しているうちに2人とも全く同じようにマーケットを分析し、その展望に関する知見が同じであることに気づきました。それがきっかけで、「じゃあ、一緒に何かやろう」と、スタートしました。マーケット全体を1年かけて研究し、コンセプトを作っていきました。そして、このようなイベントの運営ができるボローニャをチームに入れました。なぜボローニャかというと、アートフェアー、様々なフェアーをどう行うかを知っているからです。中国でも経験があります。彼らはここにインフラをすでに持っていますし、必要なネットワークもここにあります。この基盤なしには、ここで何かをやる事は不可能です。つまり、お互いを補完しあう、3つのパートナーが集まった組織なのです。アートフェアーディレクターの私自身、コレクターやディーラーからの視点をピエールが、そして運営の部分をボローニャグループ。そして、もちろん中国のパートナーと一緒に動いています。中国のパートナーの選択肢はいくつかありましたが、すばらしい現地のパートナーにめぐり合うことができました。中国で何かやるのであれば、まず第一に、信頼のできる強いパートナーを見つける事です。 なぜなら、何をするにも権利が必要です。中国の会社にしか与えられない権利です。中国にいる多くの友人やサポーターのアドバイスもありましたが、最終的にはボローニャが、「彼らが最善のパートナーだ」と推してくれました。ボローニャがすでに中国で経験があったおかげで、こうやって彼らとパートナーを組めることになったのです。

和訳:Mayuko Kohno

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Aneta Glinkowska

Aneta Glinkowska. ポーランド生まれ。1996年にニューヨークに移住、大学と大学院を卒業。大学の科学の実験などは定期的に逃避し、代わりに毎日映画館に通い、ヴィレッジトライアングルのアンジェリカ・フィルム・センター、クウォッド・シネマ、シネマヴィレッジに入り浸っていた。映画館で過ごさなかった時間には写真を「創り」、ニューヨーク在住のポーランド人の写真家のグループと展示していた。大学末期、交換留学でパリに住み、そこでも$18月間映画パスを使いまくった。ニューヨークに戻って真剣に映画と向かい合おうと決心、MAプログラムでシネマスタディーズを専攻。卒業後またもや新しい都市、東京でアートと映画に関するライター・ブロガーとして働き、日々アートギャラリーを訪れている。 ≫ 他の記事

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