ヤング・パースペクティヴ2008

イメージフォーラム映像研究所公開講座 次代を担う若手映像作家特集

In Main Article 2 レビュー by Rie Yoshioka 2008-05-31

イメージフォーラム にて、イメージフォーラム・シネマテークNo.911 ヤング・パーステクティヴ2008 が、5月10日よりスタート。6月22日まで毎週土日に開催中。
ドラマ、ドキュメンタリー、アニメーション、デジタル・イメージを始め、それらのジャンルをまたぐアプローチを見せる若手映像作家による短編映像プログラムを送る。

NEW WORLD WATER
有川滋男 は、《NEW WORLD WATER》《ONE GRAM MEMORY》を上映。
《NEW WORLD WATER》はある若い男の日常を描いた作品だ。男の家族、友人を介した生活空間で撮影されたものでドキュメンタリーの印象を与えるシーンもあるのだが、男が冒頭で口ずさむポエティックな歌から彼独自の世界の存在を感じる。それでもそちら側にすっと入り込んでしまうのは、ごく普通の家庭の食卓シーンや登場する父親、母親の自然体の姿や表情は、ふいに自分自身の両親と重なり、思い出させるからだ。有川の独特な空気感で描きながらも、我々の中に潜在的にある日常に気がつかせてくれる。

ONE GRAM MEMORY

“このはじめての光景をわたしはどこかでみたことがある。”

《ONE GRAM MEMORY》は彼がアーティストインレジデンスで滞在したプーケット(タイ)と東京で撮影された作品だ。遠く離れる現地の景色と日本の日常が重なりあう瞬間があらわれる。
この作品もまた見慣れた日常の風景に新たな視点を与えてくれる作品である。

ONE GRAM MEMORY

塚田朋来の《レンズに瞳を》は、若い男女の初々しいデートの一日を描いた作品だ。こそばゆいデートの様子を、夏のある日を舞台に描く。
うつむいたまま彼に話しかける彼女、何故かカメラ目線でデートをリードする挙動不審な彼氏。なるほど、タイトルの理由がわかったというところだ。映像の中に、彼氏と彼女、そして “カメラ” の第三者の存在。目の前の彼女の目によりも、第三者の目にどのように映る自分の姿ばかり気にする男の心情が見えてくる。本来ならば演技をする俳優の前にある “カメラ” の存在は消すところを、塚田は男が始終カメラ目線でレンズを追いかけまわすというシンプルな関係性を用いて、他者の意識の中での、自己の存在の見え方に執着する姿をコミカルに描いた。
この塚田の作品は2007年の 東京ネットムービーフェスティバルにおいて細田守賞、唯野未歩子賞を受賞。

上映後の塚田のアーティストトークでは、有川から映像をウェブで公開することとスクリーンで見せることの違いについてどのように考えているかという質問が出た。事前に塚田の作品をウェブで見てきた有川は、当日スクリーンで見てそれとは違う印象を受けたということだった。塚田はどちらが彼の意図するイメージであるか明言しなかったが、ウェブで見る、大画面のスクリーンで見る、またDVDなどにパッケージ化されたものを自宅のテレビやパソコンで見るなど、映像作品の視聴にはさまざまな形態があり、作品と見る人の間の関係性や体験の質もそれぞれにおいて大きく異なっている。
ウェブ上で映像を配信する場としては、YouTube や、VimeoClipLife また、ライブカメラによるテレビ放送局のような Ustream.tv を始めとした無料で動画を共有するサービスが挙げられる。それぞれのサービスには様々なユーザーコミュニティが存在している。多様なユーザーが集うところで、どのような反応を彼らはユーザーから得て、どう彼らがそれに応えるか、このような双方向のアクションが可能である点、また動画や映像の引用に優れたインターフェイスを備えた Tumblr などのミニブログで紹介、引用することでより早いスピードで共有の場が広げられる点が特徴だろう。また、自ら撮影したビデオを編集し、ブログに掲載するビデオブロガーらは自らの視点で切り取った話題を速報で提供し、ビデオを用いることによってよりリアルに読者にメッセージを投げかける。そのフットワークの軽さと、それを目当てとする読者のアクセス数や影響力はすごい。[ 参考イベント 動画人JAPAN2008 ]
このようなメディアの動向に対して、映像作家の彼らがこれからどのような展開を見せるかというのは私としては気になるところだ。

いつでもどこからでもアクセスすることができるウェブは場として大変利便性は高い。しかし、それを有効に作品発表の場として活用している作家は少ない。そして高精細、高解像度の映像制作が可能になり新たな表現の追求が可能になり、ウェブで公開することは制約を与え、しばしば画質の劣化を伴うこともある。
それでも許す限りは、同時代に生きる彼らの存在を私は感じたいし、より多く出会いたいのだ。

有川滋男と塚田朋来の作品上映があるBプロプラム ドラマ2の最終回は、2008年6月1日16時スタート。
その他のプログラムも6月22日まで毎週土日に開催されるので是非足を運んでみてはいかがだろうか。
お問い合わせ先はイメージフォーラムホームページ、詳細はヤング・パースペクティヴ2008をご確認下さい。

Rie Yoshioka

Rie Yoshioka. 富山生まれ。IAMAS(情報科学芸術大学院大学)修士課程メディア表現研究科修了。アートプロデューサーのアシスタントを経て、フリーランサー。エディター、ライターとして活動するほか、展覧会企画、アートプロジェクトのウェブ・ディレクションを務める。yoshiokarie+tab[at]gmail.com ≫ 他の記事

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