ミューぽんイベントレポート「対話型鑑賞 in 原美術館」

朝の原美術館「Be Alive!」展を舞台に対話型鑑賞イベントを実施しました!

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「Be Alive!―原美術館コレクション」展

東京:その他エリアにある
原美術館(東京)にて
このイベントは終了しました。 - (2011-01-14 - 2011-06-12)

In Main Article 3 特集記事 by Chikako Yamamoto 2011-06-22

ミューぽんは、TokyoArtBeatによる都内の美術館の割引券を集めたiPhoneアプリ。美術館の新しい楽しみ方を発見していただくイベントの第2弾として、ミューぽんユーザーの方を対象に「対話型鑑賞 in 原美術館」を企画しました。

会場となったのは、既存の価値観にとらわれることなく、現在を生きる作家と真摯に向き合い続けてきた原美術館。6月12日まで開催されていた『Be Alive!−原美術館コレクション』展では、「現在(いま)、この瞬間、生きろ、元気に行こう」をキーワードに、生き生きと第一線で活躍中の作家たちによる作品の数々が紹介されました。
原美術館はモダニズム建築の洋館を改装した建物で、とても素敵なお庭のある美術館です。今回のイベントは開館前の時間を貸切させていただいて開催。朝の爽やかな緑のにおいの中で、イベントは始まりました。

「対話型鑑賞」とは、「みる」「かんがえる」「はなす」「きく」という4つを基本にしながら、美術の知識だけに頼らず、みる人同士の対話を通して、作品の理解を深めていくための鑑賞方法です。

「みる」直感を大切にしながら、まず作品をじっくりみる
「かんがえる」なぜ自分がそう思ったのかについて内省する
「はなす」自らの中に湧き上がった思いや疑問を言葉にして他の鑑賞者に伝える
「きく」他の鑑賞者の声にきちんと耳を傾ける

前回に引き続きナビゲイターにお迎えしたのは、対話型鑑賞の研究・実践をされている平野智紀さん(@tomokihirano)。

参加者の皆さんには応募申し込みの時に、原美術館の常設展示作品である奈良美智《My Drawing Room》の犬を見て感じたことを、Twitterで自由にツイートをしてもらいました。イベントのイントロとして、参加者同士の自己紹介も兼ね、自分がどんなツイートをしたか紹介し合うアクティビティを実施。初対面の相手ばかりの中でしたが、緊張した場が少しずつほぐれていきます。

1作品目は、気持ちのよい風がそよぐお庭に出ての鑑賞です。三島喜美代の《Newspaper-84-E》。まずはじっくり作品を「みる」。そして「かんがえる」。屋外ということもあり、みなさん作品の裏側にまわったり、のぞきこんだり、熱心にご覧になりました。


「アリが這っていたり、くしゃっと丸めていたり。それは本物の新聞と同じ」
「作成当時の新聞を作品としてのこしている。日記みたい。なにか思い入れがある日付なのかもしれない」
(参加者の皆さんからのコメント)


この作品は、平らな状態の陶土にシルクスクリーンの手法で新聞をプリントし、そのあとこの形状に作ったそう。原美術館の学芸員、坪内雅美さんから解説が加わります。
印刷された新聞の日付は、1984年8月31日でした。(あとで調べてみると、この日はスペースシャトル「ディスカバリー」が初めて宇宙に飛び立った翌日であることがわかりました。)

時間が経つということ、記録を残すということ、普遍的なものと変わりゆくもの……そんなことに思いを馳せながら、対話が重ねられていきます。

鮮やかな緑のお庭を後にして、2作品目はミカリーン・トーマスによる《ママ ブッシュ》です。展示作品の中でもひときわ目を引くこの作品は、原美術館館長が一目惚れしてコレクションに加えたという注目の作品。たくさんのラインストーンがあしらわれ、キラキラと華やかで、ダイナミックな作品です。また、部屋の中央にはソファが置かれ、作家のスタジオが再現されたようなしつらえのインスタレーションとなっています。

「黒人の女性が描かれているが、ポーズが西洋的に見える。」
「まわりの白いところが額のようだが、上の部分がはみ出ていてテープのように見える。」
「キラキラだけど静かな表情。仕方ないなあ、というような許している感じが母親っぽい。」
(参加者の皆さんからのコメント)

西洋的なポーズと思わせたのは、彼女は19世紀前半のフランス人画家ドミニク・アングルの《オダリスク》から着想を得てこの作品を描いたというところにありました。ほかにもお化粧やアクセサリーに注目する人、ラインストーンの色味に注目する人、また人物ではなく絵画としての形や装飾が気になる人……。同じ絵でもさまざまな着眼点があることに驚かされます。

この人数で、声を出しながら鑑賞する機会はなかなかありません。それが対話型鑑賞の面白さです。
実は描かれているのは作家自身の母親であることが明かされると、見え方がさらに広がります。自分の母親へも思いを馳せてみた方がいらっしゃったかもしれませんね。

最後となる3作品目は、奈良美智《Eve of Destruction》。今回の展覧会のメインイメージとしても使われている作品です。

「まず背景の煙が目に入った。」
「女の子がすけているように見える。触れていいものかどうか迷う。」
「持ってる本かCDのようなものは、平和を祈っているのではないか。」
(参加者の皆さんからのコメント)

作品が描かれた背景から、震災を連想したという意見が聞かれました。作品は2006年に作成されたもの。作品は変わらないけれど、観ている私たちの見方が変わった、と平野さん。原美術館に来るお客さんからも、震災以降この作品の見え方が変わったという声が寄せられているそうです。
手に持っているのはアメリカのロックバンド、The Turtlesのレコード。作品のタイトル「Eve of Destruction(破壊の前日)」は、彼らの楽曲のタイトルからつけられたものです。日本語訳は「明日なき世界」、ベトナム戦争の頃の楽曲だそうです。(作家の奈良さんがロック好きで、制作中も音楽をかけているのは有名ですね。)

「子どもは未来の象徴。この世の中を明日なき世界にした大人に対するメッセージでは。」
「小さい子なのにロックを聞いているなんて、エネルギッシュな女の子かも。」
(参加者の皆さんからのコメント)

人によってさまざまな感じ方があり、それぞれの世界があります。ひとりで鑑賞しているときには出会えない、ほかの人の世界に触れる貴重な機会。ナビゲイターの平野さんに導かれ、一枚の絵を前に、各人から様々な思いやストーリーが紡ぎ出されていく様子に、私自身も少しドキドキしながら耳を傾けていました。

日々変わり続ける世の中にあって、現代アートはまさに現在(いま)この瞬間を、鮮やかに感じさせてくれます。モノとしての作品は変わらないけれど、私たちが同じ時代を生きている以上、作品自体も刻々と変化しているのかもしれません。事前のツイートのお題となった奈良美智《My Drawing Room》も、まさに現在進行形で変わり続ける作品です。また、対話型鑑賞のあと「どんどん自分の中で作品が変化していく過程も面白い。」とつぶやいてくださった方もいらっしゃいました。時間の流れや他者との関わりによって、私たちは日々変わっていきます。

「Be Alive! 現在(いま)、この瞬間、生きろ、元気に行こう」

展覧会のテーマでもあるこの言葉を、今回のイベントを通して持ち帰っていただけたならうれしく思います。

対話型鑑賞ワークショップの終了後は、お茶とお菓子をご用意し、ホールでミニ懇親タイムを設けました。やはりアート好き同士、皆さん盛り上がっていただき、とても良い雰囲気の中お昼前には解散となりました。お庭で風や光を感じながら、五感で思い出せる素敵な体験になったのではないでしょうか。朝早起きすると一日が長いのも良いところ。皆さんも、この週末は少し早起きしてお出かけしてみてはいかがでしょう?

<友達とやってみよう>
当日平野さんからご紹介いただいた、友達と気軽にできるアクティビティです。
展覧会を見終わったあと、美術館併設のカフェなどでコーヒーを飲みながら試してみましょう。
平野さんによる紹介はこちら

(1)展覧会を見る
各自、自由にひととおり展覧会を見て、お気に入りの作品を探します。

(2)一番好きだった作品について、5分間で紹介する
トークだけで友達に作品の魅力を説明します。
作品そのものについて深く解説しても、展覧会のキャプションに書いてある作品の歴史を暗記しても、自分の人生に引きつけて語ってもOK。

(3)もう一度作品を見に戻りたい、と思わせた人が勝ち!
他人の感想を聞いたあとに作品をみると、最初とは違った見え方をするでしょう。

Chikako Yamamoto

Chikako Yamamoto. ブラジル生まれのスペイン育ち。バルセロナでは現地の現代美術家コミュニティとのかかわりの中で育ち、帰国後、アートや美術館が身近な存在でないことにカルチャーショックを受ける。大学卒業後は一般企業に就職。紆余曲折を経て、2011年2月よりTokyo Art Beatに加わる。 ≫ 他の記事

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