シェアする場所としてのアーティスト・イン・レジデンス

「TOKYO STORY 2010」展 会場で田村友一郎氏、岩井優氏、TWSプログラムディレクター家村佳代子氏に訊く

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「TWS CiR OPEN STUDIO TOKYO STORY 2010 渋谷」展

渋谷エリアにある
トーキョーワンダーサイト渋谷にて
このイベントは終了しました。 - (2011-04-28 - 2011-06-26)

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「TWS CiR OPEN STUDIO TOKYO STORY 2010 本郷」

千代田エリアにある
トーキョーアーツアンドスペース本郷にて
このイベントは終了しました。 - (2011-04-28 - 2011-05-28)

In Main Article 2 インタビュー by TABインターン 2011-07-22

アーティスト・イン・レジデンス(以下レジデンス)という言葉を耳にしたことはありますか? 国内外のアーティストに一定期間、スペースを提供し、制作やそのリサーチを支援するプログラムのことです。日本国内でも、数十カ所の文化施設や自治体でそれぞれ特色あるプログラムが実施されています。

トーキョーワンダーサイト(以下TWS)は、2006年よりアーティスト育成、そして国際文化交流の観点からレジデンス事業を行っています。レジデンスは、アーティストの制作活動にどのような影響を与えるのでしょうか? またその活動の意義について、2010年度にTWS青山:クリエーター・イン・レジデンスに滞在された田村友一郎さん、二国間交流事業プログラムを通じて台北のレジデンス施設、トレジャーヒル・アーティスト・ヴィレッジに滞在された岩井優さん、そしてTWSのプログラムディレクターである家村佳代子さんにお話を伺いました。2010年度のレジデンス・プログラムに参加したアーティストによる成果展「TOKYO STORY 2010」が渋谷、本郷、青山の3会場で開催される中、それぞれの視点からレジデンスの魅力を語っていただきました。

──田村さんは1年間TWS青山に、岩井さんは3ヶ月間、台北でのプログラムに参加されていたということですが、レジデンス・プログラムならではの体験、価値を感じた出来事はありましたか?

田村:日本は僕にとって母国であるわけですが、そこに各国からアーティストが集まって寝食を共にして、制作する。TWS青山では日本人は4分の1、あとは海外からのアーティストを受け入れているので、まさに出島みたいな状況でした。彼らに東京を案内したり一緒に飲みに行ったりすることがよくありましたね。世代も近いので、お互いにこれからの可能性を探っている状況で、彼らとの出会いに一番価値を感じました。1年間は短く感じましたが、振り返るといろいろな出来事が詰まっていたと思います。


田村:滞在作家の出身国は、ヨーロッパ、中東、アジアなどさまざまですから、一言に「アート」と言っても捉え方は全然違う。そこがすごく面白い。日本はアジアの一国ですが、東京はアジアと西洋の中間域にあると感じることがあるんです。

岩井:僕はレジデンス以外で海外に滞在したこともあったのですが、そのときとは全く違い、アーティストとしてよりも友人や隣人として関わっている実感がありました。それから僕が参加したのは台北市の文化局が行っているプログラムなので、公共施設の使用の交渉なども手伝ってくれて、ゼロから1人で始めるよりストレスはだいぶ 少なかったです。ただ滞在していたらお酒を飲んで終わっていたんじゃないかと思います。(笑)

今まで当たり前だと思っていたことが通用しない場面もでてくるし、そこを自由がきかないと感じる人もいるかもしれない。でもそんな難しい状況にいるときに、そこで何ができるか考えることで、結果は違ってきます。

──オープンスタジオという、一般に公開する機会が定期的に設けられているのもTWSのレジデンスならではですね。

田村:そうですね。アトリエの制作の様子を見せることが条件だったのですが、部屋を片付けてホワイトキューブをつくって作品を置いて見せるのではなく、朝起きたときのままの部屋を見せようと。そういう風に自分でルールを決めて作業すると、制作していく上での瞬発力がつきますね。たいていの展覧会では結果として作品を見せて終わりというものなので、その「プロセスの空間」をほかの誰かと共有できることはなかなかない。本当に実験的な試みですよね。毎回いろいろと課題が見えてきて、得たものは大きかったです。

──しかし今年3月11日に発生した東日本大震災の影響で、3月のオープンスタジオは中止。この「TOKYO STORY 2010」展も延期になりましたね。

家村:オープンスタジオの中止は本当に残念でした。みんなものすごく準備していたんですよ。

岩井:今回の展示に関して言うと、最初はワンフロアを使ったインスタレーションを構想していたのですが、もちろん「無理です」と言われて(笑)、3月11日以降、僕も混乱していましたし、プランが二転三転してギリギリまで考えていました。でも最終的におもしろい展示になったと思います。


家村:部屋を隔てる壁に穴をあけることで、外から覗きこむのと、作品が置いてある内側から外の世界を見るのとでは見え方が全然違います。その壁も、自分で作品のためにつくったものではなく、もともとは誰かが綺麗につくったもの。それを壊すという行為も、意味をもちますよね。

岩井:ただ場所を与えられて物を持って来るだけじゃなく、その場所の条件をうまく活かせる方法をさらに探していく。どこにいても実験的になれるかどうかはアーティスト次第です。

家村:2人にはレジデンス期間中につくったビデオ作品を会場でただ流してもらう事もできたと思う。でもそれで終わらずに、更にその先を目指してくれた。展示会場も「アートが生まれる場所」であってほしいですね。


TWSの事業の中にレジデンス・プログラムが加えられた経緯についても伺いました。10年ほど前のアートシーンは今よりずっと閉ざされた世界だったと家村さんは語ります。

家村:学校を出たての若いアーティストが、いきなり世界を舞台に活躍するというのはすごく難しいです。ホワイトキューブに置けばなんでもアートになっちゃうみたいな時代だったのですが、箱の中に留まらず、もっと社会と絡んで海外とも勝負してやるぞという体力派のアーティストを育てたいと思っていました。そのためには結果だけを見せるのではなく、そこまでのプロセスに人が関われる場を作ることが大事だと思うのです。

TWSでレジデンスを始めた当初、滞在アーティストはたった2人。1ヶ月半ほどの期間、アトリエに泊まり込んで、寝ても覚めても制作していましたね。TWSは公共の場なので使用する上での問題もありながらでしたが、そのくらい思いっきりやらないと人は育たないなと実感しました。

──かなり実験的に展開していったのですね。

家村:トーキョーワンダーサイトとは「驚き(wonder)」をつくりだす「場(site)」という意味。当時「making site」をキーワードにしていました。人がいればエネルギーが生まれて「場」がつくられる。見る人の態度によっても変わりますよね。ものを作っていくプロセスにアーティスト同士だけじゃなくて、いろんな人が関われる隙間があることが最終的につくられるものを豊かにすると思うんです。

──情報や人の流れが自由化し、社会の変化が加速している現代、日本では特に、震災以降の社会にさまざまな変化が訪れています。急激に変化する社会の中で、アーティスト、そしてレジデンスプログラムの関わり方はどう変わっていくのでしょうか。

岩井:「情報、人の流れが自由化」というけれど、実際には「自由」にできない人々の方が多いです。震災以降の話で言えば、テレビで見た震災直後の映像とか「頑張ろう日本」というフレーズは僕らの脳みそにインプットされてしまって、もう忘れる事は不可能ですよね。9.11の時にも同じようなことが言われたように、僕らの感覚は外部の情報(映像など)から簡単に影響を受けやすい。
一方で、情報発信が容易になって、一人ひとりがメディアになりうるじゃないですか。また情報が流動的になりすぎて拒絶する人も出てきたと思う。そのように拒絶することも一つの選択で、それぞれが決めていくことだと思います。

そんな有り様のなかで関わり方を考えると、アーティストとしてだけではなく生活者として感受性をさらけ出していくこと、そのようなレジデンス・プログラムかどうか。そうやって滞在する場所や地域の力学的なポテンシャルに接続していくことだと考えています。しかもプログラムが終了しても関係は続きますから。

家村:レジデンスと社会との関わりというのは、単に「アーティストが海外に行けてよかった」ということで終わりじゃないんです。社会的には、均一化された情報が溢れているのが現状ですが、多様な価値観を感じて、もっと個人的だったり、触覚的に表現することがアーティストの役割。

震災という出来事が作品に影響するのは当然のことでしょう。津波や原発の問題は、自然と文明の大きな衝突。日本だけでなく世界的に関心を集めている問題なので、それをシェアしていくことが、これからすごく重要になってきます。作品はアーティストが個々につくっているけど、他の人の生活や気配を感じながら、同じ時間や空間でシェアする。レジデンスはそういう触覚的なコミュニケーションの場なんです。

[編集後記]
今回のインタビューは当初、オープンスタジオの紹介を予定していましたが、その前日に東日本大震災が起き、社会ももちろんアートシーンも状況が一変しました。アーティスト・イン・レジデンスという開かれた場によって、アーティストだけでなく、観衆であるわたしたちも制作のプロセスに関わることができます。そして、今後さらに変わり続けていく社会の中で何をシェアしていくのか、考える機会になるのではないでしょうか。

インタビューにあたりご協力くださった、田村友一郎さん、岩井優さん、家村佳代子さん、そしてTWSスタッフの皆様、ありがとうございました。

[TABインターン]
三木茜:1989年生まれ。東京都出身。武蔵野美術大学で版画を専攻中。アート鑑賞が好きで展覧会に足を運ぶうちに、作品と鑑賞者を結びつける様々なきっかけのおもしろさに関心をもつようになる。自身も制作を続けるかたわら、アートマネジメントや語学も勉強中。

富田さよ:東京出身。一般企業勤務後、大自然と大都会という環境の異なる二つのアートセンターのアシスタントを経てTABインターンに参加。

TABインターン

TABインターン. 学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。 ≫ 他の記事

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