Chim↑Pomエリイが見る、スティーヴ・マックィーン展

「誰でもできるようで、誰もができることではない」映像について

poster for Steve McQueen Exhibition

スティーヴ・マックィーン 展

表参道、青山エリアにある
エスパス ルイ・ヴィトン東京にて
このイベントは終了しました。 - (2014-04-26 - 2014-08-17)

In インタビュー by Xin Tahara 2014-08-13

広島の原爆ドームの上空にセスナ機で「ピカッ」と文字を描き物議を醸した《ヒロシマの空をピカッとさせる》(2008年)や、渋谷駅の岡本太郎の壁画《明日の神話》に福島第一原発事故を示唆するパネルを立てかけた《Level 7 feat. 「明日の神話」》(2011年)など、センセーショナルな作品でも注目を集めてきたアーティスト集団Chim↑Pom。7月には高円寺・キタコレビルにKANE-ZANMAIというオフィススタジオ兼ショップをオープンするなど、展覧会やパフォーマンスに限らない活動を展開している。
その紅一点のメンバーでもあるエリイと、イギリス人映像アーティスト兼映画監督、スティーヴ・マックィーンの個展が開催中のエスパス ルイ・ヴィトン東京へ赴き、作品の感想やそこから派生するエピソードを語ってもらった。

「オランダの展覧会にChim↑Pomが出展していて、アムステルダムで(Chim↑Pomリーダーの)卯城くんと『地球の歩き方』を裏路地で見ている時に日本語で『どうしたんですか』と話しかけてきた現地の方がいたんですよ。そのときに、私たちが自己紹介すらしないうちに『僕は芸術家で清水敏男(TOSHIO SHIMIZU ART OFFICE)や南條史生(森美術館館長)も知ってるよ』と開口一番言ったのでビックリして。清水敏男さんのご子息とは高校と予備校が一緒で大学の同級生で、グランドールコスモというゲットーアパートに住んでいた11人の友人の一人でもあったんです。」

ーたまたま通りかかった男性ですよね?

「そうなんですよ。アムステルダムの大通りからはずれた細い裏路地に迷いこんで。自転車に乗ってるおじさんがわざわざ立ち止まって、ね! 日本でも活動していたランドスケープ彫刻のアーティストさんだったのだけど。その日泊まるところもどうしようかという状況だったので『僕んち泊まりなよ』という言葉に意気投合してついて行ったら、公園の前のすごく立派なマンションで、スティーヴ・マックィーンの家も入っているよ、と教えてくれたんです。エスパス ルイ・ヴィトン東京でのオープニング・レセプションでマックィーンにそのことを話したらそこがうちだよ、と答えてくれました。」

今回のスティーヴ・マックィーンの個展はスーパー8mmフィルムによって撮られた映像作品だ。3月には映画『それでも夜は明ける』がアカデミー賞作品賞を受賞している。

ーエリイさんご自身も映像を撮ることはありますか?

「Chim↑Pomの作品で撮影します。私はムサビ(武蔵野美術大学)の視覚伝達デザイン学科出身で、映像の授業もとっていました。例えば《明日の神話》に原発の絵を立て掛けたときには最接近で撮っています。あのときは背の高いメンバーの二人が設置していたので。」

「すっごく暑い場所の壮大な景色を眺めていると、ひとつのもの、例えば風になびいている旗や、波に一点集中してしまうことがある。暑くてボーっとしているのもあるし、景色が広いという点においてなのだけど。この映像を見ていると、そんな暑さに頭がホワイトアウトしている状態がすごくわかる。まさに南国の映像なんですよ。”Ashes”(アッシズ:作中に登場する青年)をすごく集中して撮っているけれども、それは人間が持っている共通の感覚なのかな。私もカンボジアの大仏に巻かれている布だけをずーっと撮っていたことがある。」

ーマックィーンの作品は、アメリカの奴隷制度を描いた《それでも夜は明ける》のように、マイノリティを扱うなど、自身のアフリカ系イギリス人という出自にもつながる作品が多い気がします。
エリイさん自身の育った街や、アイデンティティなどを作品の中に昇華させることはありましたか?

「Chim↑Pom自体が、身近なことを観察して作品を作ることにしています。私は横浜生まれで東京・渋谷育ちだから、横浜と東京が私のすべて。日常生活を街とともに過ごしてきたし、東京という街へ全力で介入してきた。生まれたときからずっとね。」

「センター街でやった《スーパーラット》(ネズミを捕まえピカチュウの色に塗った剥製にするなどした作品)も、Chim↑Pomが東京にいたから生まれました。育った環境が好きだし、信じられる。だからこそ表現できる。」

ー東京以外へはよく行きますか?

「カンボジアへは作品の撮影でもけっこう行っています。私がハリウッド映画と実弾で射撃応戦をする《Ellie vs Hollywood》を撮りにも行ったり。南国での生活は長かったので、(Ashesを指して)まさにこういう雰囲気の友人が男女問わずいて、行くたびに変わっていく。バナナの葉っぱでできた家で暮らしていて、メールアドレスも持ってないから連絡できないけれど、そこに行ったら会える。でも次に会うときには子どもができている人もいれば、死んでいる人もいる。このAshesもそうでしょう。」

ー今回の《Ashes》は撮影されて作品になるまで、実は13年もかかっているそうです。その間、マックィーンの知らないところでAshesは命を落とし、映像が取り残されるように残ってしまった。

「この話って、さっきも言ったように南の島ではごくありふれた話だと思うのね。彼のようにドラッグに出会ってしまったがために命を落とすことも、よくある話。それがどうして<アート>まで昇華できたかというと、まず寝かせていることと、映像が残っていること。ただこうして作品として落とし込んだ時に、誰でもできることではないのがわかる。日常とアートの境目は誰しもが制作できることではないから感情が動くんです。」

ーこれまでChim↑Pomの作品では社会状況などに応じて即時性の高いものがわりと多かったように思いますが、作品を寝かすことはありましたか?

「……今度、実は寝かす作品がまさにできるんだよ。でもまだ秘密! なぜなら寝かすから!」

エスパス ルイ・ヴィトン東京のスティーヴ・マックィーン展はいよいよ8月17日まで。
エスパス ルイ・ヴィトン東京 ウェブサイト

Chim↑Pomは現在無人島プロダクションでの8周年記念展「無人島∞」にも出展しており、10月には無人島プロダクションで個展を開催予定。秋はNY、オーストラリア、ヨーロッパなど海外での展覧会を多数抱えている。

Xin Tahara

Xin Tahara. 北海道函館市生まれ。Tokyo Art Beat PR・セールス、ソーシャルメディア、ニュースの編集も。都内を中心に自転車でアートスペース巡りが趣味。写真と料理と多肉植物も。 ≫ 他の記事

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