鈴鹿哲生展 レビュー

データに形を与え、残していきたい。

poster for Tetsuo Suzuka Exhibition

鈴鹿哲生 展

白金、広尾エリアにある
ロンドンギャラリーにて
このイベントは終了しました。 - (2014-08-22 - 2014-09-20)

In レビュー by Rei Kagami 2014-10-20

白金高輪のロンドンギャラリーで、8/22~9/20まで開催された「鈴鹿哲生展」。
3年ぶり2回目となる展覧会を開催するにあたり、鈴鹿哲生は、デジタル画像処理によって生み出される自身の世界観を、古美術を専門とするロンドンギャラリーでぜひ見せてみたいと思ったという。

「歴史的な価値のあるものを専門に扱うロンドンギャラリーに、コンピューター・グラフィックスで作ったものを持っていっても、ばちばちっと火花が散って断られるのではないかと思った。でも、それでもやる必要があると思った。」

しかし、事前の懸念をよそに、ロンドンギャラリーのオーナー・田島氏は鈴鹿哲生のプロポーザルを快諾した。菩薩立像(北斎時代)や「松梅に小禽図」狩野元信筆(室町時代)らとともに、鈴鹿の新作3点を配置した。

ギャラリーの入り口を入ってすぐ右側に展示されたのは、鈴鹿がこれまで取り組んできた”JAPANOLOGY(ジャパノロジー)”*シリーズの流れを組む作品「Whose Sleeves? No.3」。これは、コンピューター・グラフィックスで構成した現代的な要素が描きこまれた誰が袖屏風の作品で、この作品を入り口に近い場所に展示することよって、鈴鹿は、古美術が並ぶロンドンギャラリーのカラーから、自身の世界観への導入を意図した。

写真家 渡邉 修

そして、その反対側に配置した六曲二双の屏風作品「ryugu」によって観客を鈴鹿の世界観へとぐっと引き込む。

撮影者 Andrey Bold

最後に、ギャラリー奥・正面の壁に展示したのが、これまでのJAPANOLOGY(ジャパノロジー)シリーズとは異なる試みとして制作した「Cell by Cell」(セル・バイ・セル)。
「セル・バイ・セル」とはレンダリング用語の一つで、データから画素にかわる瞬間を、アクリルとグラファイトとインクで細かく描き込んだ作品。196.8×138.8cmもある大型の作品だ。細かい線が入り組み、膨大な情報を閉じ込めたモノリスのようでもあり、いわば、データの曼荼羅だ。

「僕がやりたいことをシンプルにいうと、データに存在感を与えたいということ。そして、データは劣化するので、未来に残せる形にしたい。」

これが鈴鹿哲生の制作のコンセプトだ。

「仮想現実の世界では、現実の世界とは時間軸が違う。たとえば、スーパーマリオブラザーズで、マリオがピーチ姫を救いに行くというストーリーがありますよね?あれ実際だったら何日間もかかる大冒険だけど、ゲームの世界ではたかだか1時間ほどで終わってしまう。つまり、実際は何日もかかるプロセスが、バーチャルリアリティのゲームの世界ではずっと短い時間で終わってしまう。でも、人間がMMORPG**の仮想の景色を見て感動する度合いというのは、富士山をみて感動する度合いと同じなんです。」

制作にあたっては、CGが主な手法であるが、それにこだわっている訳ではなく、ましてや日本の伝統的なものを最新の技術で表現することがやりたいことでもない。

「僕はコンピュータも使うし、手で絵も描くし、映像も、いろんな手法を使います。僕にとってはコンピュータは鉛筆と同じで道具にすぎない。だから、CGが使えるからCGクリエイターと片付けられるのは抵抗があるんです。だって、鉛筆を使うからといって、”エンピツァー”とは言わないですよね?コンピュータも道具の一つであって、それを使って何をやるかが問題だと思っています」

しかしやはりコンピューターによって生成されるデータは、レンダリングや加工を繰り返すことによって劣化する宿命にあり、時空を超えることができない。そのデータという仮想現実の世界の存在に、現実世界での形を与えて残していけるようにしたいというのが鈴鹿哲生のクリエイションの根幹なのだ。

そしてそのことは、鈴鹿が手がける活動全般に通じている。たとえば、その一つに、鈴鹿が長年取り組んできたビンテージ楽器の改造がある。ディズニーランドでおなじみ、ディキシーランド・ジャズで使われるあの楽器である。これは少々余談になるが、鈴鹿はビンテージバンジョーの熱心なコレクターでもあり、古いバンジョーを手に入れては自身の美意識に基づく独自の改造を施している(演奏もする)。最近では、大変希少価値があるとされているBACON&DAYのMontana Special No.4(Plectrum)を7年越しで手に入れ、鈴鹿テイストに作り換えた。時代を超えて普遍的に美しいものを追求し、それを同時代の人に向けて発信し、さらに未来に残せるものにしていくという一連の作業に、いわば鈴鹿のクリエイション魂ともいうべきものを感じる。

鈴鹿はこれまで、弟の晃示と組んで音楽活動やファッションブランドの立ち上げ、イベントの主催など、様々な分野で自らのクリエイティビティを発揮した仕事をしてきた。今後は、一番自由に表現活動ができる分野として、アートと映画の分野での創作活動に集中していきたいという。活動の舞台は日本に限定せず、世界を見ている。あらゆるルールに捕われずに、溢れ出るイメージを作品に転換してアウトプットする。今後、どんな形でそれが実現されていくか、楽しみである。

*JAPANOLOGY(ジャパノロジー)は、江戸時代からの流れを汲んだいわゆる日本文化と、戦後の急成長を経て一気に近代化した日本が奏でる不協和音であり独特の調和を表現したシリーズ。

**MMORPG:Massively Multiplayer Online Role-Playing Game、大規模多人数同時参加型オンラインRPG

Rei Kagami

Rei Kagami. Full time art lover. Regular gallery goer and art geek. On-demand guided art tour & art market report. アートラバー/アートオタク。オンデマンド・アートガイド&アートマーケットレポートもやっています。 ≫ 他の記事

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