【中村政人ロングインタビュー・前編】アートの構造そのものに挑む!

美術の文脈からではなく社会側から、ダイナミックな新陳代謝をしてる都市空間の、一瞬を使うインスタレーションをつくりたい。

poster for Masato Nakamura “Luminous Despair”

中村政人 「明るい絶望」

千代田エリアにある
3331 Arts Chiyodaにて
このイベントは終了しました。 - (2015-10-10 - 2015-11-23)

poster for Trans Arts Tokyo 2015

「TRANS ARTS TOKYO 2015」

千代田エリアにある
東京電機大学 旧校舎跡地にて
このイベントは終了しました。 - (2015-10-09 - 2015-11-03)

In インタビュー by TABインターン 2015-09-30

10月10日より、中村政人の10年ぶりとなる個展「明るい絶望」が開催される。混迷する社会の中で変化しつづけるアートの可能性はどこへ向かうのか?―社会派アーティスト中村政人のさらなる挑戦に迫る。

――最近、企業や行政等との協力によって企画されているアートプロジェクトが増えてきている中で、「市場的に話題性のあるもの、わかりやすい市民性のあるものを」というニーズが、アート表現の自由度を欠いていくこともあると思います。アートが社会の中に介在していく上での課題、また付加価値とはなんですか?

アートが何を指しているのかということをはっきりさせる必要があります。地域でのプロジェクトや街づくりなど、アートの目的とは一見違うものの中の表現における質の低下を言ってる人は、現代美術の市場を中心としたアートのことを指していると思うんです。それはいわゆる欧米主導のアートシーンの価値観ですが、いま日本やアジアで起きているアートの様々な実験というのは、そういう現代美術の市場主義とは関係ないところで起きている。

行政の税金を使って行う公益性の高いプログラムは、ある種の社会課題を解決するための、具体的な方法になりつつあります。アーティストとプロジェクトチームが課題に対して具体的策を持つことは非常に有効です。作品の質という話ではなく、課題が解決するかしないか、ということなんです。享受する人はアート界にいる人ではなく、限界集落にいるおじいちゃんおばあちゃん達だったりするわけですから。

ポコラート全国公募展アーティストトークの様子

そういった意味で、美術の前提が僕の中では随分前に拡大しているんです。アートと産業とコミュニティの3つがクロスする部分で、アートの概念を拡張し、実際に機能させることを目指しています。美術館はボードメンバーやコレクター、財閥からの寄付金によって成り立つので、現代美術の市場の中で作品を発表するだけでは、産業とコミュニティーに接する必要がないわけです。作品の価値や、作家の生活を支える経済性、かつ作品そのものを受け止める鑑賞者の幅が今すごく揺れている。アートの定義や、アートをどの立場で考えるのかが、拡大してきていると感じます。

地域アートプロジェクト系は、今まさしく発芽期です。これからどんどん増えていって、利用されていると思ってる人、または利用しようとしている人も淘汰されてくる。作品を売買する市場ではなくて、産業界と接続することで商品化されたり、新しいデバイスとしてアプリになったり、いろんな使い方によって出てくるはずの市場が、今はまだ成熟していません。今後はそれが従来のパブリックアートという概念よりもさらに進歩したある種のエンゲージメントとなり、全く新しいコミュニティーアートが生まれてくるでしょう。

――その中で、なぜいま美術館の中でのアート、という形での展覧会を開こうと思ったのですか?作品を通しての表現、またプロジェクトを通しての表現、その両者の関係性についてお聞かせください。

僕は、アーツ千代田 3331自体を自分の作品だと思っているんですね。つまり、地域でプロジェクトをつくる中で、どうすれば自分だけはなく街の人たちと共に創造的になれるか、どういう風に創造的な場が生まれるのか、ということを思考してきたわけです。ヴェネツィア・ビエンナーレ*以降に「自分達の場は自分達で作ろう」とシフトチェンジしてからの集大成として、アーツ千代田 3331は経済的自立をちゃんと持ちながら、毎日創造的に活動している。自分達だけではなく、訪れる人たち皆がわくわくする中で、クリエイティビティーの高まる場をつくっている。

*第49回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2001)にて、日本代表として出展

第49回ヴェネツィア・ビエンナーレ

そのアーツ千代田 3331の中のホワイトキューブで展示を行う、つまり美術館というかオルタナティブなスペースを一個作ってから、その中のホワイトキューブでやるという二重構造が、この個展の見どころです。

個展では、90年代前半の頃の写真を沢山見せます。その頃は僕が韓国に留学して、帰ってきてデビューするあたり。バブルが終わってみんな目が覚めたような覚め切れぬような、そんな時代の変わり目の頃でした。一緒にやっている作家達、またギャラリストや批評家達が、日夜毎日議論して未来を語り合って活動しているのを、僕は瞬きするようにフィルムでバンバン撮っていました。もちろん表現する意識の中で撮っていたのですが、かといって写真家ではないから、いずれ来るときに見せようと思っていたんです。

当時、<ミュージアム>というグループ名で活動していた「中村と村上」ソウル展でパフォーマンスする池宮中夫にジゾイングする小沢剛を描いたイラストTシャツを着る中ザワヒデキ氏

新作のインスタレーションも展示します。90年代に考えていたプランのうちの二つを実現させました。いわゆる美術の文脈を考えつつ、その中に新しい考えかたを見せるようなプランで、ホワイトキューブの中での展示用に設計していたものです。

自分の考え方を作品として見せるんだけれど、しかしそれが行われてるのはアーツ千代田 3331っていう箱だから、最初に言ったように、アートと産業とコミュニティが接続する形での、自立する作品として僕はとらえている。しかし、欧米のマーケットを中心とした概念で見ると、当然ここアーツ千代田3331は作品として理解しにくい。

銀座全域を舞台にした路上展覧会「ザ・ギンブラート」に出展した中村政人の作品《NO PARKING》

美術の文脈の中で考えると、例えばヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」は、植樹など、街そのものに対してある種の構築をします。でもそれはあくまで「彫刻」の概念で、美術的なコンテクストを外れにくかった。地域コミュニティに対する接続は一部あったけれども、経済的な裏づけがそこにはない。行政がお金を出してモニュメントをつくる、パブリックアートの延長線上ですよね。

そこから、インスタレーションや仮設的なものが、特に80年代にいっぱい出てきた。例えば川俣正さんがやっている、建築に寄生するような仮設性を持つパブリックアート。ある瞬間的な空間の変化、質を問うような作品などは、都市の中でのテンポラリーな空間構成としてチャレンジしていて、非常に面白いと思う。しかしそれも、絵画的な発想から生まれてきていて、あくまで美術の文脈の中。

クロスジャンルな出展者が参加し、アート作品からコレクションまで様々なものが並んだ千代田芸術祭[2011マーケット部門]の様子

美術の文脈の中からではなく、社会側からこうではないかと言う、創造的な提案が必要とされています。社会側から見たときには、当然その地域の中でちゃんと自立してお金が動かない限り続けられない。行政の人がずっとお金をくれるとか、作品を時々買ってくれる人がいて家賃払えるっていうくらいのものだと、続けられないでしょ。そう考えていくと3331は、社会彫刻的な概念だとか、仮設性を持った都市構造の中のインスタレーションという文脈を持ち、かつ外の産業的な地域コミュニティの文脈も引き連れて合体させたような形で成立させているんです。

――トランスアーツトーキョー 2015では、縁日やビールプロジェクト、スポーツ祭りなど、一見アートとは関わりのないイベントもありますね。どこまでを、何をもって、アートプロジェクトと言うのでしょうか?

ビールフェスやってる人達は、アートだとは思ってないです、当然。商店街の人たちがつくるお祭りも、彼らはアートだとは思っていない。しかし、トランスアーツトーキョー(TAT)のフレーム、つまり「人がつくる創造的な何か」っていう大きなフレームの中に入ることによって、コミュニティーの関わりの中に、今まで気づいていなかった新しい人間関係が生まれる。ビールならビールを作ったり飲むこと、それだけでもう十分創造的な活動。神田のど真ん中、この都市の中でダイナミックな新陳代謝をしてる空間の、一瞬を使うインスタレーションっていう風にとらえています。

TAT2014で大人気を博したアーバンキャンプ。都会のど真ん中でテントを貼って寝泊まりするという、都市空間の新しい活用方法を提案した

これからのアートの考え方の大きな基盤を作っていく実験でもあるんです。街の中でそれぞれのイベントをやっている人たちは、単に街づくりのためのイベントだと思ってることが多い。しかしその中に潜んでいる可能性を見出し、そこを他の部分と接続させ、拡張させていくこと。それは、東京のダイナミックな都市で2020年に向けて走っていく中での様々な考え方のひとつなんです。

日本は縦割り社会で、ジャンルで分けて考えすぎなんですよ。縦の構造を、横に繋いでいく人がなかなか育たない。企画も同じで、横を繋ぐような企画っていうのが本当に少ない。そういう意味では、チャレンジですね。

後編はこちら

Photo by Masanori Ikeda
中村政人(なかむら・まさと)
「美術と社会」「美術と教育」との関わりをテーマに様々なアート・プロジェクトを進める社会派アーティスト。東京藝術大学絵画科准教授。「第49回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2001年)日本代表。1998年からアーティストイニシアティブコマンドNを主宰。「ヒミング」(富山県氷見市)、「ゼロダテ」(秋田県大館市)など、地域再生型のサスティナブルアートプロジェクトを多数展開。プロジェクトスペース「KANDADA」(2005~2009)を経て2010年6月よりアーティスト主導、民設民営のオルタナティブ・アートセンター「アーツ千代田3331」(東京都千代田区/秋葉原)を立ち上げる。著書「美術と教育・1997」「美術に教育・2004」。平成22年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を芸術振興部門にて受賞。2011年より震災復興支援プロジェクト「わわプロジェクト」を始動。さらに2012年からは東京・神田のコミュニティとの関わりの中でまちの創造力を高めていくプロジェクト、神田コミュニティアートセンタープロジェクト「TRANS ARTS TOKYO」を開始。

[TABインターン] 山際真奈: 1994年千葉県出身。カリフォルニアの大学でリベラルアーツを専攻する大学生。アジア文学・哲学・芸術が集中研究分野。人間と自然の関わりの中から生まれる芸術表現の探求をライフワークとしたい。かぼちゃの煮つけとお散歩を常に欲している。夢は自給自足。

TABインターン

TABインターン. 学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。 ≫ 他の記事

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