ひとり人力インターネット頭脳、南方熊楠を現代から見直す

南方熊楠生誕150周年記念企画展「南方熊楠 -100年早かった智の人-」 国立科学博物館で3月4日まで

poster for Kumagusu Minakata: An Informant-savant 100 Years Ahead of his Time

「南方熊楠 -100年早かった智の人-」展

上野、谷中エリアにある
国立科学博物館にて
このイベントは終了しました。 - (2017-12-19 - 2018-03-04)

In レビュー by Xin Tahara 2018-02-27

南方熊楠というと、これまでは森羅万象を探求した「研究者」という紹介、捉え方が多かったと思う。2017年の南方熊楠生誕150周年記念企画展である国立科学博物館『南方熊楠 -100年早かった智の人-』では、サブタイトルに示すように熊楠の「智のあり方の超先進性」に焦点を当てている。熊楠の方法論はインターネット時代を先取りした=100年早かった、と提起するユニークなものだ。研究者というよりも「情報提供者」として常軌を逸して優れた存在であったその業績と、現代の視点から「熊楠」を再定義する。

展覧会前半では、熊楠の超人じみた記憶力(8歳で「和漢三才図会」105巻を記憶に頼って書き写し=抜書したなど)の紹介がされている。また蒐集家としても、生涯をかけた「隠花植物」や民俗研究のフィールドワークに関する一級の史料もあり、改めてその特異な人物像を浮かび上がらせる。

後半「智の集積」セクションでは近年新たに発見された菌類の図譜を本邦初公開、最後の「智の構造を探る」セクションでは代表作『十二支考・虎』に関するその制作資料、メモ書き(腹稿)のあり方を分析した展示がなされている。熊楠の方法は「抜書(コピー&ペースト)」→「腹稿での蓄積した情報の分類(グループ化とハイパーリンク)」→「完成原稿として発表(アウトプット)」という、インターネット時代を生きる現代人の方法を、100年前に自ら収集した膨大すぎる資料と自身の頭脳でやってのけていたと言える。当時はもちろん、現代でも人類の特異点といえる熊楠の脳内を覗く試みをしている。

ようやく時代が追いついて来ようとしている段階のこの鬼才を改めて見つめ直し、畏敬の念を抱くにとどまらず、現代や自らの智のありようを再考するにも「いま見ておくべき」企画展だ。

展覧会に行く前に、行ってから読みたいKUMAGUSU本5選

熊楠研究の一人者9名が、その多様性に分け入る論考集

『南方熊楠の図譜』(荒俣宏、環栄賢 青弓社)
粘菌研究と昭和天皇との縁、民俗学を巡っての柳田國男との論争、熊楠マンダラなど哲学と宗教、「男の浄道」と男色とは別の精神的な恋慕の繋がり、更に曼荼羅的に性愛の人類史を覗き込むような論考、現代の環境問題やエコ思想に繋がる神社合祀政策への反論などなど……熊楠の宇宙を各分野の一流の知性が読み解く試み。

智の怪人・熊楠を、妖怪漫画の天才・水木しげるが描いた傑作


『猫楠 NEKO-GUSU 南方熊楠の生涯』(水木しげる KADOKAWA/角川書店)

18ヶ国語を話したとも言われる熊楠が、猫語も話せたとしたら? その超人性とともに強烈な人間臭さ溢れるエピソードを、人語を解する飼い猫を案内役に描く。熊楠はロンドン留学以降、猫を飼っており猫好きとして有名。

熊楠世界への入門書であり、森羅万象の知識が圧縮された民俗学エッセイ

『十二支考』1~3巻 (南方熊楠、飯倉照平(校訂) 平凡社)

雑誌『太陽』に連載されていた十二支(子は他誌、丑は未刊)についての、東洋から欧米まで古今の典籍を駆使したエッセイ。鋭い観察眼に究極の博覧強記の知識を凝縮しつつ綴った博物誌でありつつ、エッセイとして思うまま筆を走らせた読み物として、熊楠のユーモアや本音が垣間見える、全3巻。

■概要
南方熊楠生誕150周年記念企画展 『南方熊楠 -100年早かった智の人-』
会場:国立科学博物館
会期:2017年12月19日~2018年3月04日
入場料:一般・大学生 620円、高校生以下・65歳以上・障害者手帳提示とその介護者1名 無料
ウェブサイト:http://www.kahaku.go.jp/event/2017/12kumagusu/

Xin Tahara

Xin Tahara. 北海道函館市生まれ。Tokyo Art Beat PR・セールス、ソーシャルメディア、ニュースの編集も。都内を中心に自転車でアートスペース巡りが日課。料理と植物も。 ≫ 他の記事

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