原美術館(東京)本展は、2004年に開始した新作「寓話」シリーズを中心に構成し、やなぎみわの新しい展開を示すものになります。「寓話」は、グリム童話やガブリエル ガルシア=マルケスの短編小説「エレンディラ」など、「少女」と「老女」が登場する物語をベースにしており、エレベーターガールや「My Grandmothers」との共通項を持ちながら、一歩新しい地平へ踏み出した作品といえます。シリーズの中心は、これまでとは一転してCGを排除したオーソドックスな、しかもモノクロームの写真プリントです。閉ざされた空間の中で、少女のモデルが特殊メイクによって「少女」と「老女」の役割を往還しつつ、一種不可思議な室内劇を思わせる場面が描き出されます。それはアーティストの内面の原風景であるようにも見えます。同時にそれは、やなぎの個人的なヴィジョンにとどまらず、「寓話」と名づけられるにふさわしく、私たちに向けられた比喩と象徴に満たされた世界にも見えます。決してベースになった物語のイラストレーションではない、やなぎみわならではのイメージは、見るものの視線をとらえて離さないことでしょう。
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