金は、「多様であることは普遍である」という考えを根幹に置きながら制作を続けてきました。自身のルーツである在日コリアンの 「学校」や「家族」というコミュニティにいる人々を追った《sweet hours》、《SAIESO: between Tow Koreas and Japan》をはじめ、 ドイツで制作した《Between Breads and Noodles》では、在独韓国人やドイツの移民にも焦点を当て、複数の文化、国籍の狭間に生きる人々を追った写真とビデオ作品、パフォーマンスを行いました。
また、写真と映像で構成される《The Real Wedding Ceremony》では、自身の結婚式のパフォーマンスを通して、フィクションの要素を盛り込むことで伝統や儀式とは何なのか、示唆的に疑問を投げかけ、家族の拡張を模索した作品となっています。こうした複数の文化、国籍の狭間に生きる人々を追いながら、多様な「個」の日常や記憶、歴史、伝統、共同体、民族、家族などをテーマにしながら、それぞれの「平穏な日常」を描き、その多様性を表現してきました。
本展と共に10月16日から11月22日までTOKAS 本郷OPEN SITE 6にて開催される『House to Home』でも、ソウル市北区城北洞の町を舞台に制作されたビデオ作品を展示する予定です。世代を超え語り合われる「家族」や「伝統」というテーマは、金が長年追求してきたもので、ギャラリーで展示する作品に比べより現実的な問題がダイレクトに提起されています。