ギャラリー本城櫻井美幸は、日常生活あるいは、映画や雑誌で目にした人物たちや情景の中の、「瞬時に消滅してしまいそうな感情」を捉えて画布にとどめます。しかしそれは再現的に写実されたものではなく、想像力によって私的なイメージに変換して表されます。モチーフとして選ばれるのは、殆どが人物の、顔のクローズ・アップです。絵の中の男女や子供たちは、何を見つめているのでしょうか。それとも何も見ていないのでしょうか。櫻井が描くのは‘普通の人々’です。その彼らが、孤独や喪失、不安や驚きといった感情に陥ったときの、心の均衡が崩れた、あるいは崩れ落ちそうな瞬間を、櫻井はとらえようとしています。
櫻井は絵を仕上げてからタイトルを考えます。彼女は以前、絵の中に言葉や文字を入れた作品を創っていましたが、その頃から言葉による表現を、絵と同等に重視してきました。画中人物が心の中でつぶやいているような言葉がタイトルとして見られるのは、そういった櫻井の過去の制作方法の名残といえましょう。自分と、自分をとりまく世界や時間との間にあるもの、内向と外向、それらが不思議なバランスをとっているさまや、はざまの曖昧な空気や感情を、櫻井の作品は暗示しているのではないでしょうか。
今展覧会では2004〜2005年に制作された作品約30点を展示いたします。どうぞこの機会にご高覧下さいませ。
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