TARO NASU20世紀美術における最大の「発見」ともいわれる抽象絵画。佐藤勲の仕事は、抽象絵画に対する 21世紀的再解釈である。ミニマリスムとオプティカル・アート、そして日本美術の根底に常に存在してきた絵画と工芸の親近性。これらの三つの要素の交差点が、彼の作品の豊かな土壌である。
画面全体を均質に覆うグリッドの反復。常に三色に限定されている色彩は、人間工学に基づいた精密な計算によって画面に塗布されていく。地と図の関係、あるいは平面における三次元空間の仮想とは何か、といった古典的かつ本質的な問いかけや、絵画と空間をめぐる疑問が、まばゆいばかりに輝く幾何学的な造形のなかに封じ込められている。それを、「『絵画』という特権的な平面に対する批判なのでは、とうがってみることはできる」(林卓行 BT美術手帖1998年4月号 186頁)だろうし、身体感覚そのものに訴えかける恍惚への誘惑と捉えることもまた可能なのだ。
今回の新作ではネオン管を用いた新たな試みを発表するという佐藤。絵画におけるすべての色彩は光を表現するために存在するという印象派の「教義」もまた、佐藤によって21世紀的最解釈の対象となっていくのかもしれない。色彩という光を体感する、クールで熱い佐藤勲の世界の扉が今、満を持して開かれる。
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