銀座ニコンサロン(ニコンプラザ内)長江は、揚子江の名で親しまれている中国の大河である。近年、稲作文化の起源地として世界中の歴史学者たちの注目を集めているが、作者は1997年から5 年間、学術調査隊の記録カメラマンとして長江流域の古代遺跡を巡った。そのとき、はるか6000年もの昔に「稲作文化」を育んだ長江の今も変わらぬ豊かさを知り、やがて長江という大河そのものに魅かれるようになった。そして、調査終了と同時にアジア最大の大河「長江」の流域を辿る3年間に及ぶ単独取材に挑んだ。
チベット高原の雪山に発する源から、東シナ海に注ぐ河口部まで6300キロの旅……今もその流域には悠久の時のなかでゆっくりと育まれた民族たちの多彩な文化が息づいている。標高5000メートルを超える高地で遊牧生活を営むチベット族、母系社会の伝統を残すナシ族、棚田を開墾しながら太古と変わらぬ稲作文化を伝承してきた苗族……さらに注意深く観察すれば、それらの文化の底流には大自然との共生を願う民族たちの祈りが共通して流れていることに気付かされる。時として雪山を崇め、森の木々を祀り、清らかな水の流れに神秘を見出す民族たちの信仰……それらはまた我々日本人の祈りの心にも通じている。
作者は長江の流れを辿りながら、「アジアの原形とはいったい何か」という問いをいつも心のなかに抱きつつ、日本人が急速に失ってしまった「心の原風景」を追い求めていたと言う。そして10年近い活動を通して、ようやく作者なりの答えが見え始めてきたように思い、今回作品として発表する。カラー55点。
まだコメントはありません