原美術館(東京)本展は、現在ホノルルにて活躍する、ジェイソン テラオカの新作シリーズ「隣人」(88点組絵画)を中心に構成いたします。ハワイに生まれ、同地で制作を続けるテラオカは、ホノルルのアーティストやコレクター、キュレーターの間で注目されており、1990年代半ばから、ハワイ各地で展覧会を開催してきました。また、日系4世である彼は日本のアーティストに親近感を感じており、2005年には、ホノルル現代美術館で開催された奈良美智とのコラボレーション企画「Shaka Nara」に招待され、日本と関係を結ぶようになりました。本展は、テラオカの日本での初個展となります。
新作シリーズ「隣人」は、作家自身が日常の生活で目にした光景やテレビ、雑誌、昔のホラーやサスペンス映画(お気に入りはアルフレッド ヒッチコック)などからインスピレーションを得たひとこまひとこまの集積です。彼は制作の際に、自分自身が目にするイメージを偶然に並列させる「チャンネル サーフィン」と名づけられたプロセスをとっていますが、しばしば、画面の印象は暗く、その構図からは不安感や揺れ動く感情へのまなざしを見てとることもできるでしょう。しかし、絶望の淵に立たされている者、人生の敗者と思しき者、自らを哀れむ者、こうした人々を生みだしている社会を風刺する一方で、テラオカは、わけあり顔の登場人物たちを人間味豊かに描いています。笑っているとも怒っているとも嘆いているともみてとれる人物の表情は、われわれに謎解きを仕掛けているかのようです。登場人物が今どのような局面に立たされているのか、これからどのように展開していくのか、予想しがたい意味ありげな舞台設定ゆえに、私たちは好奇心を掻き立てられ、不思議なざわめきを感じずにはいられません。
なお、本展は新収蔵作品を中心に構成される「原美術館コレクション」展と同時開催いたします。
•日・祝日には当館学芸員による日本語のギャラリーガイドを行います(14:30より 30分程度)。