出光美術館浮世絵は、江戸前期に誕生し、幕末明治期までおよそ200年以上栄えた、世界の美術史上にも稀な日本独特の風俗画です。遊廓と芝居小屋に取材し、遊女と役者を描くことを使命としたこれら浮世絵では、一般には版画作品がよく知られていますが、他方そこには数多くの絵画作品=肉筆画が存在しています。浮世絵師たちは、版画や版本のための版下絵を描く一方で、そのほとんどが例外なく一点制作の肉筆画にも筆を染めており、当世美人の艶やかな絵姿などが、鮮烈な肉筆画として数多く描き残されています。
出光美術館の浮世絵コレクションは、そのすべてが肉筆画であり、本展覧会では初めて当館の肉筆浮世絵コレクションの全貌に光をあてます。前・後期の2部構成によって、約130件の作品を公開いたしますが、そのどちらをご覧いただいても、江戸前期の寛文美人、菱川派の作品から、幕末を席巻した歌川派に至るまでのおよそ二世紀にわたる浮世絵全史を通覧できるような構成となっています。会場には、歌麿・北斎・広重といった今日なおその名を知られる代表的な浮世絵師たちが彩管を揮った絵画の傑作も一堂に並び、特に北斎の出品作には出光コレクションとしては初公開となる作品2件(「亀と蟹図」、「樵夫図」全期間展示)が含まれます。まさに出光美術館の肉筆浮世絵コレクションを総覧していただく絶好の機会といえるでしょう。
肉筆浮世絵は、それを描いた絵師の直筆による線や色が、作品から確かめられるところに鑑賞の醍醐味があります。肉筆画のもつ生き生きとした描線の冴え、施彩の鮮やかさは、当時の高度な版刻技術の成果である木版画とはまったく別の感興を観るものに与えてくれるはずです。
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