セイコーハウスホールシュールレアリスムの巨匠・ミロをはじめ、シャガール、ダリなど20世紀を代表する名だたる芸術家たちが心を許し、アトリエに招きいれ肖像を撮らせた写真家がいる。長年、パリを拠点に活動を続けてきた南川三治郎氏である。氏はその後、世界で初めてヴェルサイユ宮殿の全てを撮影する試みにも成功。一貫して“ヨーロッパの人と文化”にフォーカスをあて続けてきた。
そんな南川氏がフランスとスペインにおよぶ巡礼の道カミーノ・デ・サンティアゴの撮影を終えようとしていた2004年、「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されたという一報を耳にする。どちらも同時代に興った巡礼の道だ。「今度は日本を撮りなさいという天啓だと感じました」。それは西洋文化の真っ只中に身を置く日本人写真家が、日本の文化と自然を改めて捉えなおすという稀有の試みに他ならなかった。
日本独特の多湿の自然美、闇の中に沈む平安・鎌倉時代の神仏像の崇高さ、祭事に込められた人々の敬虔な祈りと営み、郷愁誘う山里の原風景─。通常の120倍の大きさのフィルムを用いる大判カメラを背に、氏が3年の歳月をかけて撮り続けてきた瞬間の中にあなたは何を見、何を感じるだろうか。そして、地球の反対側に位置しながら、奇しくも同時期に相似性をもった文化─巡礼の道が日本と欧州それぞれに生まれたことの不思議をどう捉えるだろうか。和光ホールでは6年ぶり、4回目となる南川三治郎氏の個展に期待したい。
ギャラリートーク: 12月16日(日)、22日(土)ともに15:00〜
[画像:「大雲取越 円座石」]
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