ワタリウム美術館腰巻き一つを身にまとって立つ怪しい男。これは1910(明治43)年、和歌山県田辺市に近い林の中で撮影された43歳の南方熊楠の姿である。林中裸像と呼ばれる写真、なぜこんなものが遺されているのだろうか?
展覧会、第一章は「世界を放浪する」。19歳の熊楠は、東京大学予備門を退学して、突然アメリカへと旅立つ。以来33歳で貧窮のためロンドンから帰国するまでの14年、南米、ヨーロッパなど各地を放浪している。そこで熊楠の観たものを検証する。
第二章は「熊楠の内的宇宙」と題して、夢や身体、タブー論や民俗現象などを取り上げる。本展ではじめて公開される多くの興味深い資料によって熊楠の知られざる一面が登場する。
第三章は、「森の命」。熊楠が那智で実施した生物研究の成果は圧倒的な数の標本によって遺されている。地を這い、空を飛ぶ粘菌、海藻、昆虫など。今回は国立科学博物館の協力により400点のきのこ図譜の展示が実現した。熊楠の手で丁寧に彩色された図譜は驚くほど生命力に溢れ、絵画を超えた美しさを持つ。また、「熊楠シアター」では那智の自然や熊楠の4チャンネル映像を映す。
熊楠の博物学者、民俗学者、植物学者としての功績は既に広く知られている。しかし自由で奔放な生き方をたどるとき、熊楠の研究が権威にしばられた既存の学問とは一線を画したものであったことが分かってくる。この写真、林中裸像の中の姿のように、ついには熊楠が自然の一部となることを目指したのではなかったか。
関連イベント
※参加費などの詳細や下記のほかのイベントについてはイベントHPをご覧下さい。
オープニング・トーク『クマグスの内的宇宙』
10月6日(土)17:00-18:00
シリーズ講演会 『熊楠の森を知る』Part2 (全7回 各19:00-21:00)
-第1回 10月13日(土)『熊楠が歩いた熊野』九鬼家隆(熊野本宮大社宮司)
-第2回 10月28日(日)『熊楠の頭の中』茂木健一郎(脳科学者)X 池上高志(東京大学大学院総合文化研究科准教授)
-第3回 11月3日(土)『もうひとつの熊野・熊楠と木の記憶』中上 紀(作家)、『熊野で感じたことを音にする』雲 龍(笛奏者)
-第4回 11月17日(土)『粘菌と熊楠』萩原博光(国立科学博物館植物研究部研究主幹)
-第5回 11月24日(土)『キノコ図譜を読む』岩崎仁(国立科学博物館植物研究部研究主幹)+ 『キノコ切手に魅せられて』飯沢耕太郎(写真評論家)
-第6回 11月30日(金)『熊楠と粘菌の宇宙論』池澤夏樹(作家)
-第7回 12月7日(金)『森の奥なる柔らかきもの』松岡正剛(編集工学研究所所長、ISIS編集学校校長)
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