無人島プロダクション風間は巧みな描写と技術に裏付けされた「木版」によって、「日本の現在」を表現しています。「逆算の風景」(1999)は、新聞に折り込まれた広告チラシに載っていた、当時の郊外の住宅展示場やマイホーム団地などの写真をトレースした図柄を木版におこした作品です。また、住宅図に対となって制作された棒グラフは、それぞれの住宅のシルエットです。このグラフは、戦後ずっと「右肩上がり」で成長し、安定したかに見えた日本の高度経済成長、安定経済成長を示しているように見えます。しかし、偶然にもほとんどどれも最後が下がっているのです。まるで、経済成長が行き詰まり、格差が広がった現在の状況を示しているようです。つまり、都市近郊に一戸建てをもつことが人生の目標や夢であった時代、「人は人、うちはうち」ではなく、「人と同じがいい」という風潮、「一億総中流」へ覚えた違和感と危惧を覚えた当時の風間の眼差しは、今や現実のものとなっているのです。
もう一つのシリーズ作品「日本列島改造論」は、風間が生まれた1972年を起点として、バブル時代を画した、呪われた英雄達の光と蔭の神話を木版におこしたものです。「創造」という名のもとに「破壊」され続け、「開発」という名のもとで「改造」されてきた日本の姿を、「アラジル男」「センキョテロル」「弾丸レッシャー」「ニシキゴイン」「ドボッケン」などという、’70年代のテレビに出てくるような実写ヒーロー物の架空の悪役ヒーローたちを木版に起こしたものです。風間の面白いところは、作品によって現代社会や政治を直接批判をしているのではなく、版というフィルターをかけ、そしてユーモアを加えることで、厳しい現実を笑いに転化する手法をもっていることです。
風間は日々、ワイドショーや新聞などで、この国の、都市の田舎の、動静を見ています。バブル経済崩壊、様々な形で頓挫した都市開発、そして残された残骸や更地や年金問題、政府による公的資金の無駄遣いや汚職などなどなど社会の奥底に巣くう闇、そして日々報道される社会問題に対する憤懣を原動力に、現在の日本のありかたをメスではなく彫刻刀でもって、文字通り切り裂き、掘り下げ、白と黒のコントラストによって鮮やかに浮かびあがらせるのです。
メディアを通じて踊らされ操られ、様々な問題を前にしても、この国の、世の中の、一観客・傍観者となってしまった、今という時代を生きている人々へ向けて、風間は彫刻刀で、現代の諷刺画を作り続けるのです。
オープニング・レセプション: 5月11日(金)18:00-20:00
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