アート・ラボ・トーキョー例えばハンガーに掛かった服の背後に人の気配を感じたり、風に揺れる公園のブランコを見て人が乗っている感じを思い浮かべたり― あるべき姿の不在、存在の中の不在に思いをはせることは、私たちの物事を見る感覚の本質を再認識する手段になり得るのかもしれない。
アートマーケットを席巻したバブルの喧騒が過ぎ去った現在、内省的な表現に向かう作家たちの行為がクローズアップされてきている。
本展では、3人の女性アーティストが、存在と不在のあわいの宙づりのような領域から発せられる微細な振動を静かに感じ取って作品化している。
ロンドンを拠点に広くヨーロッパで活動しているアン・リディアットの本展出品作「月と月の蛾」は、2008年秋、京都の高台寺塔頭でおこなわれたアートプロジェクトに際してつくられたもので、ガラスのジャーにメスの蛾の標本を入れて月下の庭に展示し、オスの蛾を呼び寄せるというもので、静寂の中で生と死が交錯するような幻想的な光景を現出させた。
関西をベースに活動している金朝美は、日常的な素材―たとえば輪ゴムとか粘着テープとか髪の毛など―を用いてインスタレーションを展開する作家だが、何気なく空間に配された作品はその場の空気を変質させる力を持ち、鑑賞者の内面に静かな地滑りを誘発する。
菅間圭子は本展を企画すると同時にアーティストとしても参加。「時空の中には、そこで展開されたすべての出来事の記憶が漂っているのではないか」との幻想/妄想をサウンドインスタレーションの手法で表現し、ギャラリー空間に配する。
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